柴田勝家・織田家は儂が守る!
砂町銀座
第1章・覇王と呼ばれる迄
第1話 5歳の権六と『声』の目覚め
【柴田勝家物語・織田家の天下は儂が守る!!】
織田信長シリーズ三部作を書き終えた作者ですが、ふと権六の天下取りを描きたくなりました。
柴田勝家公の物語の第一歩として、お楽しみいただければ幸いです。
────
1530年(享禄3年)尾張国愛知郡
織田家の支流である柴田家の屋敷は、まだ幼い子供たちの元気な声が響いていた。
この家の嫡男、柴田勝家・幼名(権六)は、この年で5歳を迎えたばかりである。
権六は、同年代の子供たちよりも一回り大きく、既に人並み外れた体躯をしている。
遊びといえば木刀を振り回すか、相撲を取るか。その猛々しさから、将来は織田家を支える武辺者になるだろうと、周囲の大人たちは目を細めていた。
ある日の昼下がり。権六は何故か珍しく、庭の片隅で一人静かに土いじりをしていた。
他の子供たちは鬼ごっこに夢中だったが、何となく今日の権六は彼らの輪に入る気がしなかったのだ。
権六『何だろう?……朝から今日は大人しく、何かを待たなければいかん…そんな気がする…思考すら変わったような?分からん…』
その時だった。
『権六や、いい加減にせぬか。また泥だらけにして、母上が嘆かれるぞ。』
不意に頭の中に直接響くような『声』が聞こえた。権六はハッとして顔を上げ周囲を見渡したが、誰もいない。
近くで遊んでいた子供たちも、鬼を追いかけるのに夢中で、権六の方を見ている者など一人もいない。
「誰だ?」
権六は幼いながらも、はっきりとそう口に出した。しかし『声』は止まない。
『全く、この子ときたら…もう少し落ち着いてくれれば良いものを。』
今度は少し離れた場所から聞こえてくるような、しかしやはり頭の中に直接響くような『声』だ。
権六は、恐る恐るその方向へ目を向ける。そこには縁側で針仕事をしていた母の姿があった。
母は手を動かしながら時折、ため息混じりに庭を見つめている。
母の顔をじっと見る権六。すると母の口は動いていないのに、先ほどの『声』が、頭の中で鮮明に聞こえてくるではないか。
『いつもいつも泥まみれ。権六は、元気なのは良いけれど、もう少し静かに遊んでほしいものだわ。』
権六の小さな体中に衝撃が走った。
聞こえてくる『声』は、母が心の中で考えていることだった。
その日以来、権六の頭の中には、常に周囲の人々の『声』が響くようになった。
父が日課の鍛錬について考えていること、母が夕餉の献立に悩んでいること、家臣たちが日々の雑務について愚痴をこぼしていること……
『これって?まるで世界中のあらゆる思考が、自分の脳裏に直接流れ込んでくるようだ……それに4歳までの自分と違い、思考能力?が大人みたいになっている……どうしよう気が触れたのかオレ……』
最初は混乱し熱を出して寝込むこともあった。しかし幼い権六は、この『声』が、自分だけの秘密の能力であることに、徐々に気づき始める。
ある時、権六は、父が近隣の小領主との境界争いについて頭を悩ませている『声』を聞いた。
そして、その小領主の家臣の一人が、密かに裏切りの機会を窺っている『声』も。
権六は好奇心と、かすかな危機感を覚えながらも、その『声』に耳を傾け続けた。
織田弾正忠家は当時、まだ尾張一国(現・愛知県北西部)を完全に統治しているわけではなかった。
それどころか
尾張守護代である織田大和守家(清洲織田家)の家臣にしか過ぎない家柄。
周囲には、今川家、斎藤家といった強大な戦国大名が睨みを利かせ、尾張内部は織田家の本家・分家による複雑な権力闘争が繰り広げられていた。
だが
『ひょっとしたら…この声、すなわち思考が聞こえる事で、俺は皆より遥かに優位な立場に立てるやも知れぬぞ!』
幼い権六は周囲の大人たちの『声』を聞き取るうちに、この世界の残酷さと、情報というものに計り知れない価値が有る事を、漠然と理解し始めていく。
この頭の中に響く『声=思考』は、剛勇無比な勝家に、繊細な情報戦のプロという側面が加わる。
やがて来るであろう柴田勝家の激動の生涯を、根底から変えていくことになります。
─────
今日は初日なので夕方18時過ぎに第2話も公開します。
明日以降は1日1話、ストックある限り毎日投稿します。
柴田勝家の生年
1522年~1530年と色々な説が有りますが、ここでは1525年説を採用しています。
年齢も戦国時代の数え歳では無く、現代風の満年齢となります。
「」会話
『 』脳内思考と柴田勝家だけに聞こえる、他人の思考です。
言葉遣いは現代風、年号記載無しの西暦表記、また登場人物の呼び名は諱(いみな・本名)表記となります。
【フィクション】物語としてリアリティーより読みやすさを優先、多少年齢のズレ等々ございますが、クレームは御遠慮ください。
なるべく2000文字以内、テンポを最優先しています。
評価の★★★と作品フォローは執筆の励みになりますので、何卒宜しくお願いします。
m(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます