第2話 事件を担当した刑事の証言

 あの現場はとても異様でした。これまで見てきたどんな凄惨な現場よりも恐ろしく、何より『気持ちが悪い』と心の底から思ってしまうような、そんな光景が広がっていたんです。


 加藤一家は、リビングのテーブルに4人揃って座っていました。あまりに綺麗に座っているので、初め見たときは「死んでないんじゃないか?」と思ってしまったほどです。

 でも、彼らの顔には生者とは思えない厭な笑みが浮かんでいました。皆目を見開きながら泡を吹いていたんです。互いの顔を見つめて、笑い合うように。

 遺体の状態からして異様でしたが、現場の状況から推測される心中前の一家の行動は更に異様でした。

 彼らは死ぬ間際、パーティーを開いていたんです。あの食卓で仲良くチキンや市販のオードブルを食べて、恐らく食卓の下にあったボードゲームも楽しんで。その末に最後、あの毒入りケーキを口いっぱいに頬張って。そして、死んだんです。

 上司は「死ぬ前に最後のクリスマスを祝ってたんじゃないか」と言っていました。確かに状況から見れば彼らは楽しげなパーティーを行っていた。記念すべき何かを祝っていたんでしょう。でも私は、クリスマスを祝っていたわけではないと思うんです。

 

 一家の父、加藤卓は市販のケーキを買って、そこに後から毒を混ぜたと考えられています。そのケーキを買った店の店員に話を聞いたんです。

 店員が言うには彼、加藤卓は購入時満面の笑みを浮かべていたそうなんです。店員がケーキを眺める卓に「クリスマス用のケーキをお探しですか?」と尋ねると、卓は「今日はこれまで頑張ったご褒美にパーティーをするんです」と、弾んだ声で答えたそうです。

 彼は、彼らは何を頑張って、何のご褒美でパーティーを開き、その末に何故死んだのか。何も分からないんです。分からないから、より一層怖いんです。

 死ぬとわかりながらケーキを食べて、毒にも苦しんだはずなのに、彼らは何故笑みを浮かべていたんでしょうか?

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