第27話
受け取られない会話
オーナーが、
ふと、独り言のように言った。
「最近、寝れなくてさー」
軽い調子だった。
相談でも、弱音でもない。
ただの話題。
私は、
考える前に口が動いた。
「月に一度、処方箋もらってます。
寝るというか、
勝手に意識が飛びます」
言ってから、
少しだけ後悔した。
重かったかもしれない。
でも、嘘ではなかった。
そのとき、
別の卓から声が飛んだ。
「コーラください」
私は、
すぐにそちらへ向かった。
冷蔵庫を開けて、
コップを用意して、
戻った。
オーナーは、
いなかった。
さっきまで、
確かにそこにいたのに。
声も、
気配も、
説明も残っていない。
誰も、
何も言わない。
私は、
コーラを置いて、
何事もなかったように戻る。
この店では、
会話は続かなくていい。
受け取られなくても、
問題にならない。
人は、
用が済めば消える。
それが、
この空間の正しさだった。
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