第7話 仕事の電話
知らない番号からの着信は基本出ない
でも今回は
発信元がダンジョン管理機構だった
無視する理由もなかったので出た。
「――こちら対ダンジョン統合管理庁です」
硬い声
役所の人間特有の感情を削った話し方
面倒くさそうと思ったのが最初の感想だ
用件は単純だった
俺が普段周回しているダンジョン
最近、内部構造の揺らぎと局所的な魔力濃度の変動が観測されているらしい
要するに
「また変なことが起きる前に調べたい」
で、その調査要員として俺に声がかかった
「正式な国家依頼です
報酬は――」
金額を聞いた瞬間
俺は一度、思考を止めた
……高い
いや、普通に潜って稼ぐ十倍はある
乗る気はなかった
国家案件
組織
責任
報告義務
全部俺の嫌いな単語だ
でも
金額がそれを殴り倒してきた
「……条件は?」
「身元の秘匿は維持します
顔出しなし
報告書も匿名処理」
悪くない
「ただし――
今回は、指定パーティとの合同調査になります」
嫌な予感
「若手冒険者の中でも実績のあるパーティです」
ああ
確定
「白崎恒一率いる民間冒険者パーティです」
知ってる
嫌というほど
テレビで
少しだけ間が空く
断る理由はいくらでも浮かんだ
でも
報酬額が頭の中でずっと点滅している
すき焼き何回分だ、とか考えてしまった時点で負けだ
「……分かりました」
声は自分でも驚くほど平坦だった
「条件通りならやります」
数日後
ダンジョン入口
俺はいつもの黒装備
仮面もローブもフードを深く被っている
白崎たちはすでに揃っていた
向こうは俺の顔も素性も知らない
統管庁からは「補助調査員」とだけ聞かされているはずだ
それでいい
必要以上に関わる気はない
――仕事だ
対ダンジョン統合管理庁――統管庁
その地方支部の一室で数人の職員が資料を囲んでいた
机の上に並ぶのは攻略ログ、換金履歴、救助要請記録
どれも地味な数字ばかりだ
「このソロ冒険者、山田太郎……例の黒仮面です」
若い職員が端末を操作する
「周回回数が多い割に
救助要請ゼロ
違反報告ゼロ
トラブル履歴なし」
「しかも潜っているダンジョンが偏っている」
別の職員が続ける
「最近、異変兆候が出ているダンジョンと一致します」
「でも
彼が頻繁に入っている期間は
大規模事故が起きていない」
偶然と言うには数字が揃いすぎていた
異常発生率
救助出動回数
どれも彼の活動期間中だけ僅かに下がっている
「何かを“解決した”記録はありません」
受付担当の女性が言う
「報告はいつも簡潔
“問題なし”“特記事項なし”ばかり」
「でも後追いで内部ログを見ると事故が減っている」
誰かが、小さく息を吐いた
「……処理してるんだな」
騒がず、申告せず
ただ危険を減らしている
「白崎パーティは優秀です」
調整責任者が言った
「判断力も連携も若手の中では突出している」
「ただ、彼らは“中心に行く”」
「異変を見つければ踏み込む
結果を出すが
リスクも背負う」
「今回は調査です」
「英雄はいらない
事故を起こさない人間が必要だ」
資料の一枚に1人の少年が映る
顔は平凡
年齢は17
名前も平凡
だが現場では知られていた
「彼はダンジョン内で“余計な判断”をしない」
「逃げるべき時は逃げる
戦う時も必要最低限」
「それでいて結果的に周囲の生存率が上がる」
「だから、組み合わせる」
調整責任者は淡々と告げる
「前に進むパーティと後ろで事故を消す個人」
「どちらか一方では足りない」
それがダンジョン管理者としての判断だった。
本作を読んでいただきありがとうございます!
勢いで描き始めた作品なので話の矛盾点や誤字脱字などがあったら教えていただけると嬉しいです。
そして少しでも面白いと思って頂けたら、作者の励みになりますので♡や⭐︎、感想などよろしくお願いいたします!!
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