第6話 すき焼きは正義
ダンジョンに潜らない日も俺は生きている
当たり前だけど
今日は休みだ
体に傷はない
装備のメンテも済んでいる
魔石の換金も終わっている
つまり余裕がある
近所のスーパーに向かう
ダンジョン特区の外れにある古い建物
照明は少し暗く床は微妙にきしむ
でも安い
入口でカゴを取る
まずは野菜コーナー
白菜
白ネギ
春菊
……今日は、やるか
精肉コーナーの前で少し立ち止まる
牛肉
薄切り
値札を見る
――高い
普段ならここで引き返す
鶏肉か豚肉で妥協する
でも今日は昨日あのダンジョン異常を生き延びたご褒美だ
死んでない
巻き込まれたけど無事だ
理由としては十分だろ
俺は少し高めの牛肉をカゴに入れた
奮発
他にも
豆腐
しらたき
卵
割り下は市販の安いやつ
会計を済ませると
合計金額を見て少しだけ眉が動く
……まあ、たまにはいい
帰宅
仮面もローブもない
部屋着のまま台所に立つ
狭いキッチン
一口コンロ
鍋を出す
まずは火を入れて牛脂代わりに油を少し
牛肉を入れる
ジュッ、という音
――いい
この音だけで今日は勝ちだ
砂糖を少々
割り下を回しかける
肉の色が変わる
香りが立つ
白菜、ネギ、しらたき、豆腐
順番は適当
どうせ全部うまい
煮えてきたところで火を弱める
卵を溶く
準備完了
一口目
……うまい
正直それ以上の感想は必要ない
牛肉は柔らかく
割り下の甘辛さが、ちゃんと染みている
卵にくぐらせると
角が取れる
味が丸くなる
噛むたびに
「ああ、金払ったな」という実感がある
白菜はくたくた
甘い
ネギは少し辛みが残っている
それがいい
しらたきはしらたきだ
でも、こういう場では仕事をする
豆腐は割り下を吸っている
口に入れるとじゅわっと来る
……危険だ
二口目、三口目
黙々と食べる
テレビはつけていない
ニュースを見る気分でもない
鍋と、俺だけ
思う
世界は相変わらず騒がしい
ダンジョンだの英雄だの
誰かが活躍したとか
また異変が起きたとか
でも今、この瞬間
俺はすき焼きを食っている
それだけで十分だ
最後はうどんを入れたいところだが
今日は買っていない
代わりに残った肉と野菜を卵で流し込む
満足
鍋を洗いながら少しだけ思う
……また稼がないとな
次に奮発するために
生きる理由としては
これくらいがちょうどいい
俺は世界を救わない
でも
すき焼きは守る
それでいい
明日は
またダンジョンだ
本作を読んでいただきありがとうございます!
勢いで描き始めた作品なので話の矛盾点や誤字脱字などがあったら教えていただけると嬉しいです。
そして少しでも面白いと思って頂けたら、作者の励みになりますので♡や⭐︎、感想などよろしくお願いいたします!!
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