禁呪魔法と六英雄の聖書譚

黒野白登

「全ての始まり」 前編

 ――そこは、何も無い空間だった。


 ――全てが、真っ白な空間だった。


 ――広大な海を彷徨うような小舟か藻屑もくずのような気持ちになる。


 ――今の自分は、そういったモノと何ら変わり無いのではないだろうか。


 ――一言で表すならば惨め、だろうか。

 目を閉じれば、まだ鮮明に思い出せた。

 自分が失敗したせいで、あの愛おしい世界の事を。


― ― ― ― ―

― ― ― ― ―

 あの世界が終わる前、自分が対峙していたのは《闇》だった。 他に表現するべき言葉が見つからない、ただの闇。世界全土を虚無で包み込もうとしている闇に似た何か と言う事も出来たが。しかしそれでも戦うには余りに途方も無くて、余りに大き過ぎて、余りに許容可能な範囲を越えていた《闇》。 正直、心がすくんでいた。しっかり心の準備をしたつもりでも、事前に対峙する事が分かっていても、《闇》は心に暗雲をもたらし、絶望感で埋め尽くされて。


 ――しかし、それと同じくらい。

 自分には、多くの味方が居た。


 「■■ちゃん……私、は……諦めませんっ……!」

 「うん。まだ、これから。まだまだ斬り込んで行こう」

 「よーしっ!ワクワクしてきたねっ!」

 「参りましょう、■■さん。我々で終わらせるのです」

 「後ろなら任せて。――全部、ぶっ壊す」


 「征け、■■■よ。貴様はあの程度の馬鹿に遅れをとるのか?」

 「そういう事よ!これで過去の因縁はチャラって事にしようぜ!」


 これまでの戦いで得た、数多くの仲間達。 後ろを振り返れば、今の声以外にも心強い援軍達が駆けつけてくれていて。


 胸が熱くなって、再び《闇》に向き合って――、


 「皆、宜しくね!これが最後の戦いよ!」

 そう叫んで、途端に歓声が上がって――、



そこからは、確か――、とにかく凄かった。

「――ォォォォォォォォォォッ!!」

龍の背に乗って《闇》へ突貫する自分へ続き、様々な力が吹き荒れた。

 ――《闇》によって荒廃した大地に花々が咲き乱れ、全てを切断する超絶技巧の斬撃が戦場を駆け巡り、洗練された武闘の舞が闇を切り裂き共に戦う生物達が彼女を後押しする形で《闇》へ進撃していく。 常識の埒外らちがいに存在するもう1つの闇が周囲の人間から膨大な魔力を取り込み始め、自身の何倍も大きな鉄球を振り回す少女が片端から《闇》を消し飛ばしていく。

 極太の雷撃が迫り来る《闇》を冷淡に消し去り、あらゆる命を終わらせる濃密な毒を叫ぶ男が無造作に振り回す。


(……皆)

次元を超越するような仲間達の奮戦に背中を押された。

 『――!姉さん、居ましたッ!!』

龍が叫んだ。 注意深く前方を凝視すると、無限にも思える《闇》の中、の姿を、確かに見て。





「――――――――――っっっ!!」

少年の名を叫んで。

全てを絆の炎を纏い、少年へ手を伸ばして





 ――失敗、した。


 ――結果、《闇》は世界を完全に侵食し、自分は仲間達も少年も国も、誰一つ何一つ救えず、世界は。


 ――ゼロへと返った。


― ― ― ―

― ― ― ―


 「……は」

 もう、笑うしか、無かった。


 「……はは」

 余りに無慈悲な結末だったから。

 

 「……あはは」

 自分自身に、腹が立つから。


 もう、どれだけ失敗すれば気が済むのだろう。

 どれだけ彼に手を差し伸ばせば、受け取ってくれるのだろう。


 「あはははははっ」

 真っ白い波間をたゆたう微睡みの中で、少女はわらった。

 顔に手を当てて、涙を滂沱の如く流して。


嗤って、嗤って、嗤って、嗤って、嗤って――ひたすらに、嗤い続けて。


 嗤っ



唐突に、意識は途切れた。


「全ての始まり」 後編へ





【お読み頂いた方へ】

拙い文章でしたが、お読み頂き有難うございます。

この作品は以前ほんの少しだけ投稿していたものを読みやすいものに変更して再スタートしたものになります。


不定期更新にはなりますが、応援頂ければ有難いです。

宜しくお願い致します。

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