第4話その防御、ルビ通りに叩けば崩壊する

「『鉄壁なる大地の盾(テラ・シールド)』!」

 カイゼルが杖を振ると、地面から巨大な岩板が三層に重なり、彼を完璧に包囲した。

 物理攻撃も魔法攻撃も跳ね返す、彼が誇る絶対防御だ。

「ハハハ! さあ、どうした! どこからでも攻めてくるがいい。指一本触れることもできずに絶望させてやろう!」

 カイゼルが叫ぶ。確かに、普通の魔術師なら手も足も出ないだろう。

 だが、俺の視界は違った。

『第一層:物理耐性強化(※左下、魔力の接続部。デコピン程度の衝撃で術式全体が反転し自壊する)』

『第二層:魔力反射(※ただの鏡面反射。魔力を持たない物理的な突きには無防備)』

『第三層:自動修復機能(※術者の呼吸に同調している。空気を吐き切った瞬間、1.2秒だけ修復機能が停止する)』

「……説明書が丁寧すぎて、あくびが出るな」

 俺は無造作に歩き出した。

「何っ、無策で近づいてくるだと!? バカめ、そのまま壁に弾き飛ばされろ!」

 俺は第一層の壁の「左下」に指先を添えた。

 コン、と軽く叩く。

 瞬間、轟音と共に第一層が粉々に砕け散った。

「なっ、なんだと!?」

 驚愕するカイゼル。二枚目の壁、魔力反射。俺には魔力がない。だから、素通りだ。壁をすり抜けるようにして、俺は最後の一枚に手をかけた。

 カイゼルが息を吐く。

「い、今だ!」

 ルビが『(※今、停止中)』と点滅した。

 俺の拳が、紙風船でも割るかのように第三の壁をぶち抜いた。

 そのまま、カイゼルの鼻先数ミリのところで拳を止める。

「……チェックメイトだ」

 練習場に、冷たい静寂が降りた。

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