悪魔と天使の囁(ささや)き

 教会で神父として名声の高かった祖父が亡くなって遺品の整理をしていると、一組のイヤリングが見つかった。祖父が唯一身につけていた装飾品だと言って父は娘に譲った。時代の古さを感じさせないデザインであり、なかなか洒落しゃれている。娘はその日からイヤリングをしてみたが、彼女が考え事をする際に両耳からおかしな呟きが聞こえてくる。聞き耳を立てていると右から悪評が、左から好評が聞こえているような気がした。彼女が買い物で洋服を選ぶ際に右から罵声ばせい、左から賛辞さんじが聞こえる。食事の際も、左は美食家のように語るが、右は食欲を削がれる言葉を吐く。彼女は右のイヤリングを悪魔、左を天使と決めつけ、右耳のイヤリングだけ外してしまった。しかし、それ以降悪魔と天使のささやきは途絶えてしまった。娘はイヤリングの件について父に相談すると、父は思い出したように祖父は相手の本音を聞き分ける力があると自負していたと語り、そのイヤリングから聞こえてきたのは悪魔でも天使でもなく、お前自身の本音であると悟らせた。 


                    完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

善良な悪魔たち シバカズ @shibakazu63

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画