選別された先に…

mono

入り口

外は、もう安全じゃなかった。


通りの向こうで、誰かが転ぶ音がした。

次の瞬間、叫び声に変わる。短く、消える。


立ち止まる暇はない。

走る。息が焼ける。足がもつれる。背後で、湿った足音が重なっていく。


「こっちだ!」


誰かの声に押されるように、建物の中へ雪崩れ込んだ。


扉が閉まる。

重い音がして、外の気配が遮断される。


静かだった。


古い旅館のような内装だった。

低い天井、細い廊下。壁に並ぶ灯りは点いているが、奥まで光は届かない。


人の流れができている。

誰も立ち止まらない。ただ前を向いて歩く。


途中で、頭に何かを被せられた。


布だ。

薄いが、視界が一気に狭くなる。


足元だけが、ぼんやり見える。

前の人の踵を見失わないように、必死についていく。


分岐に差しかかる。


真っ直ぐ進む者。

右へ曲がる者。

左へ促される者。


何かが、そこに立っている。


顔は見えない。

声もない。


私が選ばれたのは、左だった。

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