第11話 管理者は、誰だったのか


その夢は、

色が

なかった。


 


音も、

匂いも、

温度も

ない。


 


ただ、

広い。


 


果ての

見えない

白の空間。


 


ラストは、

立っていた。


足の

感覚が

薄い。


 


「……夢?」


 


声は、

響かない。


 


代わりに。


背後から、

音が

した。


 


――書物を

めくる

音。


 


振り返る。


 


そこに

いたのは、

人の形を

していた。


 


だが、

顔が

ない。


 


「君は」


 


問いは、

最後まで

届かなかった。


 


《質問に

 答える前に》


 


声が、

直接

頭に

流れ込む。


 


《確認する》


《君は

 “強く

 なりたい”

 か》


 


ラストは、

即答できなかった。


 


強さ。


 


魔物を

倒せる力。


守れる

腕力。


評価される

数字。


 


それらを

思い浮かべて、

全部、

違うと

思った。


 


「……選べる

 ように

 なりたい」


 


白の

空間が、

わずかに

揺れた。


 


《その答えを

 選ぶ者は

 久しい》


 


《私は

 かつて

 “管理者”

 と

 呼ばれた》


 


管理者。


 


ラストの

胸が、

冷える。


 


「世界を

 作った

 存在?」


 


《違う》


 


即答だった。


 


《世界は

 自然に

 生まれた》


《私は

 “整えた”

 だけだ》


 


白の

空間に、

映像が

浮かぶ。


 


かつての

世界。


 


人と

魔物が、

混じり合い、

衝突し、

変わり続ける

時代。


 


《変化が

 多すぎた》


 


《英雄が

 生まれ》


《思想が

 連鎖し》


《世界は

 制御不能に

 近づいた》


 


映像が

切り替わる。


 


数字。


 


レベル。


 


経験値。


 


《だから

 定義した》


 


《“討伐”》


 


《最も

 分かりやすく》


《管理しやすい

 変化を

 経験値と

 決めた》


 


「……他の

 変化は?」


 


《切り捨てた》


 


淡々と、

告げる。


 


《価値観の

 転換》


《因果の

 修正》


《未来の

 回収》


 


《すべて

 不安定要素だ》


 


ラストは、

拳を

握った。


 


「それは……

 世界を

 殺す

 ことだ」


 


初めて、

感情が

声に

乗る。


 


白が、

ざわめいた。


 


《だから

 君は

 異常だ》


 


《君は

 切り捨てた

 “変化”を

 自覚している》


 


《しかも

 肯定も

 否定も

 できずに》


 


ラストの

視界に、

水晶板が

現れる。


 


レベル:1


 


《表示は

 正しい》


 


《君は

 まだ

 “肯定”

 していない》


 


「……もし

 肯定したら?」


 


空間が、

静止する。


 


《管理外》


 


《観測不能》


 


《世界を

 更新する

 存在になる》


 


ラストは、

息を

吸った。


 


怖い。


 


だが。


 


「それでも

 聞く」


 


「今の

 世界は

 正しい?」


 


しばらく、

沈黙。


 


《……正しく

 保たれては

 いる》


 


《だが

 生きては

 いない》


 


その瞬間。


白の

空間に、

亀裂が

走る。


 


現実の

音が、

流れ込む。


 


――誰かが

 叫んでいる。


 


――境界が

 崩れた。


 


――魔物が

 動かない。


 


《時間だ》


 


管理者は、

距離を

取る。


 


《次に

 問われた

 とき》


《君は

 逃げられない》


 


《選択は

 世界を

 巻き込む》


 


白が、

砕けた。


 


ラストは、

目を

覚ます。


 


夜明け。


 


水晶板が、

机の上で

静かに

光っていた。


 


【次の問いまで

 猶予:

 不明】


 


村の

外で、

風が

逆向きに

吹いている。


 


ラストは、

小さく

呟いた。


 


「……管理

 されてた

 のか」


 


それは

怒りでも、

憎しみでも

ない。


 


ただ。


 


世界を

“選び直せる”

可能性を

知ってしまった

重さだった。


 


――少年は

まだ

答えていない。


 


だが。


 


もう

知らなかった

頃には

戻れない。

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