第9話 観測される異物
世界には、
記録されない場所がある。
地図にも、
歴史にも、
残らない層。
そこでは、
数値が
流れていた。
経験値。
人が
倒し、
壊し、
奪った
その総量。
管理装置は、
淡々と
それを
集計する。
【変化量:低下】
無機質な
表示が、
浮かぶ。
「……想定外だ」
声が
響いた。
姿は、
定まらない。
「討伐数は
基準を
満たしている」
「にも
かかわらず、
経験値が
減っている」
別の声が
答える。
「世界が
安定して
いない」
管理者たちは、
数値を
精査する。
異常は、
一箇所に
集中していた。
座標:
ノルド畑村周辺
「……局所的だ」
記録が
遡られる。
害獣の
非討伐。
奴隷取引の
阻止。
境界の
維持。
すべてに、
共通点が
あった。
「討伐を
回避している」
「変化が、
数値化
されていない」
管理者の一人が、
低く
呟く。
「……違う」
「数値化
されていない
のではない」
「数値の
外で
増えている」
空気が
凍る。
「そんな
仕様は
ない」
「――
あるとしたら」
沈黙。
「初期定義より
古い」
管理者は、
結論を
下した。
【分類:異物】
「排除
するか?」
別の声が、
否定する。
「まだだ」
「干渉は
最小限に」
「観測を
優先する」
視界が
切り替わる。
ラストの
姿が
映し出された。
村の
片隅で、
ミアと
話している。
数値は、
動かない。
レベル:1
だが。
周囲の
行動ログが、
異常な
密度を
示していた。
「……触れて
いないのに」
管理者は、
理解できない。
一方。
ラストは、
寒気を
覚えた。
誰かに
見られている。
理由は、
わからない。
夜。
水晶板を
確認する。
レベル:1
変わらない。
だが。
スキル欄の
下部に、
見慣れない
余白が
生まれていた。
「……?」
そこには、
まだ
名前が
ない。
管理者は、
記録を
閉じた。
「自覚した
瞬間が
危険だ」
「その前に、
世界の
準備を」
ラストは、
夜空を
見上げる。
胸の奥で、
何かが
軋む。
「……近い」
何が、
とは
わからない。
ただ。
世界が、
こちらを
見ている。
――少年は、
まだ
知らない。
自分が
「更新条件」に
なりつつ
あることを。
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