メメントモリの砂時計

荈茶. / sencha.

プロローグ 夢幻

Phantasm of a Dream


「きみが悪いんだよ」

 まだ五つの頃、ふと一緒に遊んでいた近所の女の子にそう言われた。私は泣いた。どんなに私が泣こうとも手の中の蝶は、二度と飛ぶことはなかった。


「あの子がおかしいからよ」

 九つの時、両親が亡くなった。自殺と言われた。周りは私が悪いと言った。私は泣いた。私はただ、階段から落ちて両親が死ぬのをみていただけだった。


「なんでも頼っていいからね。辛かったね」

 孤児院のネイさんは孤独になった私を迎え入れた。優しい言葉を沢山かけられた。孤児院に住むブレンダンは泣きながら抱きしめてきた。三つ歳上のミスティは私を否定しなかった。ステイシーは私を非難する人達から私を守ってくれた。


 ――涙は、出なかった。



 苦しい。

 最初は些細なことだった。

 何も知らない子供が、蟻を踏み潰して歩くような、特に理由もないこと。それはただの暇つぶしにすぎず、罪悪感さえなかった。

 だがいつしか、制御ができなくなった。気がつけば目の前の生き物は、息絶えている。愛したはずの命が、気がつけば冷たくなっている。


 ――きみが悪いんだよ。

 ……そんな悪夢に、私は囚われている。



 思えば、簡単なことだった。あの笑顔、優しさ、愛情。全てを素直に受け入れていれば良かっただけの話。それができなかったのは、やはり自身の心のナニカが、欠損していたからなのだろう。

 だから、私は――“こんな事”をしたって、やはりなにも、感じないのだろう。

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