生の祝辞
残間 みゐる
祝辞
自分は今日、自分のために祝った。
ようやく解放されたのだ。
死という、解放で。
死は、いろんなものを解放してくれた。
痛みも、呼ばれ続けた名前も、期待も、失望も。
生きているあいだ、必要だと言われていたすべてから、私は静かに離れることができた。
病室の窓から差し込む光は、いつもより優しかった。
誰も祝ってくれなかった。いや、祝ってくれなくてよかった。
私自身が、自分の人生を祝ったのだ。
振り返れば、拍手の届かなかった日々もあった。
誕生日のろうそくを一人で吹き消したこともあった。
誰かに褒められることも、期待されることも、いつも少し怖かった。
だから、あのとき私は、拍手も花もなく、心の中でだけ、自分を称えた。
小さな呼吸を一つ、ゆっくりと吸った。
そして吐いた。
吐きながら思った――よくやった。
生ききったとは言えなかったが、逃げもせずに、ここまで来た。
手を胸にあて、私の祝辞を心の中で繰り返した。
「ありがとう」とは言えなかった。
でも、「さようなら」よりは、ずっと意味のある言葉だった。
痛みも、後悔も、孤独も。
すべてを抱えたまま、私はあの日、自分の存在を肯定した。
死は終わりだったが、終わりでしか得られない、静かな自由もあった。
誰も見ていなかった。
誰も聞いていなかった。
それでもよかった。
私の人生は、あの日、私自身によって祝われたのだ。
夜が来て、光が消えた。
私は何も残さず、ただ、その時間の中で、最初で最後の祝辞を終えた。
拍手も涙も要らなかった。静かな部屋で、息を整え、私は満足していた。
死は、解放だった。
そして、その解放の中で、私は初めて、自分を祝った。
おつかれさま_____________________。
生の祝辞 残間 みゐる @shunnna0829
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