ギルドの託児所
キャンパス委員会
第1話 今日も預かります
ツルタ王国の朝は早い。
港に船が着けば街が動き、商人が店を開き、冒険者がギルドへ向かう。
それはもう、特別なことではない。
ギルドの裏手にある小さな建物。
メイは鍵を取り出し、扉を開けた。
中には、すでに人がいた。
エルナは名簿を手に、入口に背を向けて立っている。
メイ
「おはようございます」
エルナ
「おはよう」
それだけ言って、視線は名簿から動かない。
もう仕事は始まっている。
椅子を引く音がした。
ガルド
「この机、邪魔だな」
メイ
「そのままで大丈夫です」
ガルド
「そうか」
素直に手を止め、腕を組んで立つ。
元女戦士の体格は、この託児所には少し大きすぎた。
扉が開く。
リン
「おはよー。今日、多そうだね」
メイ
「月曜ですから」
リン
「あー、納得」
ほどなくして、登園が始まった。
軽装の冒険者たちが、子どもの手を引いて入ってくる。
泣く子もいれば、親の手を離れた瞬間に走り出す子もいる。
子ども
「せんせー、ころんだ」
膝を押さえた小さな子が、涙をこらえて立っていた。
メイ
「見せて」
しゃがみ込み、指先に小さな魔法を灯す。
赤くなっていた膝から痛みが消え、子どもは目を瞬かせた。
この治癒魔法は、ダンジョンでは役に立たなかった。
けれど、ここでは十分すぎる。
ガルド
「誰だ、ぶつかったのは」
声が大きい。
メイ
「声、抑えてください」
エルナ
「威圧しないで」
ガルド
「……すまん」
ガルドはその場に膝をつき、子どもと同じ目線になる。
それ以上、何もしない。
午前中は、穏やかに過ぎていった。
種族も年齢もばらばらな子どもたちが、それぞれ好きな遊びをしている。
リン
「今日も平和だね」
メイ
「今のところは」
平和なのは、
誰かがちゃんと働いているからだ。
夕方になると、迎えが来る。
冒険者たちは無事に戻り、子どもたちは一瞬で親の元へ駆けていく。
冒険者
「ありがとうございました」
メイ
「お疲れさまでした」
最後の子が帰り、扉が閉まる。
託児所は静かになる。
明日もまた、
誰かの仕事のために、
子どもを預かる。
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