幼馴染が風紀委員長なのに、俺の前だけ風紀を乱してくる

@pastry-puff

風紀は乱れないから…!?




風紀委員長の西宮真希は、誰もが認める模範的な女子だ。

姿勢は常に正しく校則違反は一切なし。教師からの信頼も厚く、生徒からも一目置かれる存在。

特に女子からは絶大な人気を誇り、ファンクラブもあるとか無いとか。


そんな完璧な幼馴染である彼女が今、俺の机の前で腕を組んでいた。


「またシャツ出してる…。田嶋くんは何度注意すれば学ぶの」

「えー、別にいいじゃん。放課後だし」

「放課後でも制服は制服。……だからだめ」


小言を言いながら、彼女は俺のシャツを引っ張って直そうとする。少し前屈みになったその拍子に、ふわっと香るシャンプーの匂い。


至近距離に顔が近づき、彼女の綺麗な瞳が揺れる。


「……そんなに近づかなくても自分で直せるけど」

「ち、違うのっ! これはその、風紀委員長としての責任で!」


少し照れ臭くなり自分で直そうとすると、耳まで真っ赤にしながら慌てて手を引っ込める。


いつも冷静な彼女が、俺の前だと途端にペースを崩す。


「まったく……あなたの前だと調子狂うんだから」

「へぇ、風紀委員長なのに?」

「うるさいっ……!」


俯きながらも、唇の端がほんの少し緩んでいた。

風紀委員長と平凡な学生。昔と関係性は変わってしまったが、どこか懐かしさを感じる。


「そもそも田嶋くんは昔からどこか抜けているのよっ」


形の良い眉をキリッと曲げ、改めてこちら見つめ直す。その頬は少しだけ朱みを帯びている。


「そうだっけ…?どっちかというとまき…風紀委員長の方が抜けてなかった?」

「私は昔からしっかりしてました!」

「そうだっけ?」

「…だって、あなたと違って蜂の巣に喧嘩売らないし、水溜りに飛び込んで怪我してないからっ」


プンスカと話す彼女は風紀委員長では無く、年相応の女の子に見えた。


「いや、懐かしいな……。確かあの時、おばさんに泣きついたなぁ……そういえばおばさん元気?」


いつからだろうか真希の家に行かなくなり、おばさんとも会わなくなった。


「元気だよ」

「そっか…良かった」


辺りを沈黙が包む。

しばらくの静寂が続いた後に真希が口を徐に開いた。


「田嶋くん…久しぶりにうちにこない?…いやその……お、お母さんもあいたがってるから…」


もじもじと体をくねらせて俯き、視界に映る彼女の指が忙しなく動いてる。


緊張している時の癖は変わっていなかった。


「年頃の男子を自宅に呼ぶって…風紀乱れない?」

「な、何言ってるの!?これは、私のお母さんが会いたいだけだから…あれよ、授業参観みたいなものだから…!風紀は乱れないから……変態…」


自分の体を抱き寄せジト目で睨む。

彼女の目の前で両手をあげて何もしないアピールをする。


「冗談だって。でもそうだな…久しぶりにお邪魔しても良い?」

「…風紀乱したら帰ってもらうからね」

「いや、家でも風紀気にすんのかよ…」


小恥ずかしそうに目線を逸らし、前髪をしきりに触る。校内放送がBGMとして静かに響く。


「じゃあ、後で都合の良い日連絡して」

「了解」

「…シャツまた出てるからしまってから帰ってね。えっと、お疲れ様」

「おう、また今度」


手を振って彼女を見送る。


足早にさっていく彼女との約束が、久しぶりでどこか胸が高鳴った。



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