星の落ちる先は

ヌーバ

流行りの歌を聴きながら

 あの超高層ビルとかいう天に届きそうなくらい高い建物の群れは、きっと流れ星のなれの果てに違いない。故郷の町ではあれほど多くの星が俺たちを見守ってくれていたのに、ここでは星の一つも見えやしないのだから。ただ月だけが淀んだ空気の中で妖しい光を放っている。街で流行りの歌にやたらと月が出てきたのはそういうわけだったのだな。星が皆落ちてしまったこの街では、孤独な夜に付き合ってくれるのは月くらいなのだから。


 汽車から降りてこの街に戻ってくるたびに、少しずつ自分が変わっていることに気付いた。もう駅のホームで迷って人の波に吞まれることもないし、この街の乾いた空気にも慣れた。噂に聞いていたあの通りも、もう何度も歩いた。汽車の乗り継ぎもお手の物だ。この街には新しい風がいつも吹き込んでいる。


 この街には、2種類の人間がいる。この街の人と、この街に来た人。昔は、慣れればこの街の人に成れるのだろうと思っていたけど、どうやら我々はポーンではなくて歩であるようだ。見栄を張ってなんとかこの街の人になろうとしても、その行為自体が、自分が偽物でしかないことを証明してしまっている。まあ街の半分は同類なのだから、そう気にすることもないか。あんまり不幸ぶっていると、故郷の両親に悪いし。

 

 これがあの日の朝、仲間からの手紙を抱えて汽車に揺られながらみた夢のオチだとは、信じたくはないけれど。久しぶりに空を見上げてみれば、一番星だけはまだ落ちずに残っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

星の落ちる先は ヌーバ @ufssz

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画