可愛い彼女が三人いても、俺の毎日は命がけ~
Juyou
第一回:愛と死のトリプル・チェックメイト
夕暮れ時の私立青葉学園。オレンジ色の陽光が教室を不気味な赤に染める中、俺、佐藤翔太は人生最大の岐路に立たされていた。
「翔太くん、このクマさんの首、どうしてこんなに簡単に取れちゃうのかしらね?」
目の前で微笑むのは、我が校の誇る完璧な生徒会長、増田桜花だ。 しかし、今の彼女に「清廉潔白」という言葉は微塵も似合わない。制服を脱ぎ捨て、黒いレースとリボンが過剰なほどあしらわれた「地雷系」の私服に身を包んだ彼女は、手に持った裁ち鋏で黒いぬいぐるみの喉元をゆっくりと裂いていた。
「……会長、その、服、どうしたんですか?」 「翔太くんのためだよ。ねえ、私の愛を受け入れてくれる? それとも、君のスマホの中にある『恥ずかしい秘密』、校内放送で全生徒に公開されたい?」
彼女の瞳に光はない。あるのは、俺を完全に支配しようとする暗い独占欲だけだ。 拒否権などなかった。俺は震える手で、彼女から渡された監視アプリ入りの黒いスマホを受け取った。
「……よろしくお願いします、桜花さん」 「ええ、嬉しい。もし裏切ったら……このクマさんみたいにしてあげるね」
命からがら生徒会室を飛び出した俺を、校門の影で待っていたのは幼馴染の秋山美雪だった。 実家の神社を手伝うための巫女服姿。その凛とした佇まいに一瞬安心しかけたが、彼女が手にした掃除用ほうきの中から銀色の刃が見えた瞬間、俺の心臓は跳ね上がった。
「翔太、あなたから……どす黒い女の執念が聞こえるわ」 「美雪、これは、その……」 「神様は嘘つきを許さない。でも、私があなたの妻になれば、その穢れを一生かけて祓ってあげられる。……ねえ、いいでしょう?」
美雪の背後に、逃げ場を塞ぐような威圧感が立ち昇る。 彼女の「直感」からは逃げられない。俺は二台目の赤いスマホを渡され、無理やり恋人の契りを結ばされた。
そして、家路に就く暗い夜道。背後から「カチッ」という乾いた音が響く。
「先輩、見ーつけました」
振り返ると、そこには一年の後輩、斉藤白鳥が立っていた。 清楚な制服姿で天使のように微笑む彼女。だが、その指の間には、刃を半分出したカッターナイフが握られている。
「先輩が今日、二人の泥棒猫と会っていたこと、私、全部見てましたよ」 「白鳥、待ってくれ! あれは事故なんだ!」 「いいですよ、先輩。私が一番になれるなら。……でも、もし私を捨てたら、私、先輩の足の腱を切っちゃうかもしれません。どこにも行けないように」
三台目の白いスマホが、俺の手に押し付けられる。
深夜、自分の部屋。 デスクの上に並んだ三台のスマホが、同時にバイブレーションを開始した。
『今、何してるの?(桜花)』 『明日の朝、一緒に参拝しましょう(美雪)』 『先輩の家の前にいます。窓を開けて?(白鳥)』
「……可愛い彼女が三人。なのに、どうして死ぬほど怖いんだよ」
俺の毎日は、今日、終わった。 いや、終わりのない生存ゲームが始まったのだ。
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