僕のパーティメンバーは強すぎるし愛が重い。

薄明常世

第1話

朝は、いつも通りに来た。


だから僕は、その日が特別だなんて思いもしなかった。宿屋の天井を眺めながら、昨日のことを思い返す。

成り行きで組んだパーティだけど、雰囲気は悪くはなかったと思う。むしろ、僕としては上出来だって思った。


「……起きてる?」


控えめにノックされて、声がかかる。

活発で、元気いっぱいって感じの武闘家で、短く整えられた金髪の髪が特徴の少女だ。


「はいよ。起きたから出るよ」


そう返した瞬間、扉の向こうで小さく息を呑む気配がした。

……僕の気のせいかな?


女の子を待たせてはいけないと思って、素早く身支度を整えて部屋を出ると、廊下には三人の少女が揃っていた。

全員、昨日一緒にパーティを組んだ仲間だ。


「おぅ……みんな待ってたんだ。待たせてごめん」


精一杯の申し訳ないという表情をした僕に対して、


「…………」


みんな僕を見て固まっている。


「おはよう……えっと……どうしたの?」


金髪の少女が一歩近づき、俺の腕を掴んだ。


「え?」


強い。驚いて視線を向けると、彼女は僕の顔をじっと見つめている。


目の動きが……まるで生きているかを確認するみたいに。


「……っ」


はっとしたように手を離し、彼女は俯いた。


「ごめんなさい……その……」


「いや、いいけど」


首を傾げる僕の横で、黒髪の魔法使いの少女が静かに言う。


「朝食、もうすぐだから。早く行きましょ」


声音は落ち着いている。でも、その手は微かに震えているように見えた。


食堂に向かう途中、銀髪の僧侶の少女が不意に言った。


「……今日は、無理しないで」


「?」


「昨日の戦い、思ったより消耗してたでしょ」


「そうでもないけど」


昨日と言えば、パーティを組んだから、試しで戦ったんだ。

初めてだったから最初は噛み合わなかったけど、最後の方は声をかけながら動くことができていた。


自分としてはあまり疲れてなかったから、正直に答えたけど、彼女の表情が一瞬、歪んだ。


「……そう」


それ以上、何も言わない。

でも、その距離はやけに近い。


食堂で席につくと、三人は自然に僕を囲む位置に座った。

逃げ道を塞ぐような、そんな配置。


「……昨日はありがとう」


黒髪の少女が、唐突に頭を下げる。


「え?」


「パーティを組んでくれて」


「ああ。別に大したことじゃ」


「違う」


彼女は、かぶりを振った。


「……本当に、ありがとう」


その声には、重すぎるほどの感情が滲んでいた。


何だ、この空気。


「なあ」


僕は少し冗談めかして言う。


「まだ一日目だから、そんなに改まらなくても……」


その瞬間、三人の表情が、同時に強張った。


金髪の少女が、唇を噛む。

銀髪の少女は、視線を逸らす。

黒髪の少女は、卓の下で拳を握り締める。


……地雷、踏んだ??


「なんか……ごめん」


そう言うと、金髪の少女が慌てて首を振った。


「ち、違うの! そうじゃなくて……」


「……いい」


黒髪の少女が遮る。


「朝食、冷める」


ぎこちない空気のまま、食事が始まった。

食べながら、僕は考える。


昨日まで赤の他人だったはずなのに、朝の彼女たちの態度はまるで……長い間、僕を知っているみたいだった。


ぎこちない食事の後、外に出ると、金髪の少女が僕の前に立った。


「今日の予定だけど……前に出るのは、私たちがやるから」


「えっ、僕も……」


「ダメ」


即答だった。


銀髪の少女が続ける。


「あなたは後方待機」


「いやでも、それじゃ」


「いいから」


黒髪の少女の声は、静かだが有無を言わせなかった。


「なんだそれ……まるで僕が……」


言いかけて、やめた。

なぜか、その先を口に出してはいけない気がした。


三人の視線が、一斉に僕に集まる。

その視線がとても怖い。


「……僕って信用ないのかな?」


冗談のつもりだった。

なのに。


「違う!」


金髪の少女が、声を荒げる。


「逆! 逆だから!」


「……あなたは」


黒髪の少女が、絞り出すように言う。


「自分が思っているより、ずっと……」


そこで言葉を切り、彼女は深く息を吸った。


「……何でもない」


沈黙。

僕は肩をすくめ、


「分かった。今日は後方で待機するね」


そう言うと、三人は同時にほっとした顔をした。


それを見て、胸の奥がざわつく。


(……なんなんだ)


まるで僕がいなくなる前提で扱われているみたいじゃないか。


そんなはず、ないのに。パーティを組んだのは、昨日だ。

今日が始まりのはずだ。


なのに……それなのに彼女たちの目には終わりを知っている人間の色が宿っていた。

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