あの子は誰

☒☒☒

第1話

 子供の頃、遊ぶといったら住んでいるアパートの敷地に広場があったのでそこで同じくらいの年ごろのこたちと鬼ごっこをしたり、アスファルトで固めた広場の一角に思い付きでつくられたような砂場で砂遊びをしてみたりということがほとんどだった。

 親は子供たちの様子が気になればベランダからちょっとのぞけば子供たちの様子が分かるのでついていなくてもいい。

 今の子育てと違ってずいぶんおおらかな時代だったと思う。

 みんな同じアパートに住んでいるのでそれなりに家も行き来するし、だいたいの家族のことは覚えている。

 大体の家で子供は二人。

 兄妹やら姉妹が多かったような気がする。

 なんだかんだ、みんな引っ越したりもするが、親同士は年賀状をやりとりしているらしく、ふと思い出したときに子供時代の話をすれば遊んでいたメンバーの名前は親が思い出してくれる。

 だけれど、一人だけはっきりしない子がいる。

 男の子だったと思うのだが……男の子なのに女の子みたいに髪が長くて小柄で……おその話をすると母は覚えていないという。

 大抵顔をしかめている。

 確かに変だ。

 こういっては何だが、あのアパートで付き合いのあった家の子たちは今思い返すと親は驚くほどちゃんとした会社につとめていた。子供の頃は会社の名前なんてしらないけれど、大人になってみればああ有名な会社だなあと感心するくらい。

 そして、みんな大学まで出してもらっている。

 母曰く当時はかなり入居条件が厳しかったらしいから当然といえば当然だ。


 なのに、はっきりしないあの子は誰なんだろう。


 普通に考えれば、近所の子供が楽しそうで勝手に混ざっていたのだろう。

 でも、勝手に混ざった子供の話をするとほかの子については母もちゃんと知っている。

 だけれど、あの髪の長い男の子のことだけは母は覚えていないというのだ。

 不思議でしかたない。

 同じような経験をした方がいたら教えていただきたい。

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あの子は誰 ☒☒☒ @kakuyomu7

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