第5話 カバンの中身はなんだろな?

 それから数日後。僕と会長にとって初めての心霊スポット探検の日が訪れた。あまりにも深夜過ぎると警察に補導されてしまうという理由から集合時間は九時となった。

 この時間に外出するのは生まれてこのかた体験したことがなかったため、珍しくこの時間に帰ってきていた母に訝しまれたけど危険なことはしないと宣言して外出を許された。

 心霊スポットといえど、幽霊さえ出なければただの薄暗い場所だろう。だから危険ではない。ただ、それは幽霊が出なかったらの話。だから、僕が嘘をついたことになるかどうかは、幽霊にかかっている。

 今回参加するのは僕と文月さんと先輩の中村さん、そして会長だ。あと運転手として文月さんの兄である大夢さんが来るらしい。

 集合場所の風見坂高校に九時ちょうどに到着したところ、一台の車とその近くに文月さんが立って手を振っていた。

 当然だけど、彼女は私服だった。ふだん制服姿しか見ていないから、ちょっとドキッとした。

 後部座席には先輩組の会長と中村さんが既に乗り込んでいた。

僕もその横に座る。そして、続いて助手席に文月さんが乗る。

 運転手の大夢さんに挨拶を済ませると、車は目的地に向かって出発した。この狭い空間で半分以上が女子であるせいか、少し息苦しく感じた。

 そんな僕のことなど気にした様子もなく、会長と中村さんが楽しく談笑をしていた。いや、談笑というか教師の悪口で盛り上がっていた。

「会長と中村さんって面識あるんですね」

 二人の会話が一段落した後に、そう話しかけた。

「そうだよー!ウチと結菜は三年間同じクラスだからね!」

「へぇー、結構凄いですね」

 風見坂高校では一年時は入学前に希望した美術または音楽でクラスが分けられ、二年次以降は文理で分けられる。そのため、三年連続で同じクラスであるのは七クラスであることもあいまって、かなりの確率である。

「船山さんとはどうなんですか?」

 そう尋ねた瞬間に、それが失敗であることを感じ取った。僕の中で先輩たちと同じ学年で名前を知っているのは、副会長の深森澪さんか中村さんの元恋人である船山奏志さんしかいない。だから、そこから船山さんを選んだのだけど、船山さんと中村さんはとても仲が悪いことを失念していた。

 案の定、先程まで楽しそうにしていた中村さんの顔が一気に曇った。

「ごめんなさい!そんなつもりは……」

「ううん。いいの。どちらかと言うと、いつまでこんな仲を続けているウチたちが悪いから」

 後部座席だけ空気が重くなった。こういうのが原因で僕には友達がいないんだろうなぁー……。

 僕たちとは違い、運転席と助手席の文月家の二人は楽しそうだ。まるで前と後ろで世界が隔てられているみたい。

「船山とは一年の時に同じだっただけだな。アタシも結構仲が良かったんだ」

 会長がこの雰囲気を打破するかのように僕の質問に答えてくれた。これを機に持ち直すしかない。

「会長って一年生の時から出馬しようと思ってたんですか?」

「ああ、そうだぞ。一年の時は庶務として所属していた」

「結菜はねぇ、事あるごとに『アタシは会長になる』って言ってアピールしてくるのよー。もう鬱陶しいのなんのって!」

「べ、別にいいであろう!有言実行したのだから!」

 そんなやりとりが続いて、僕の失態が薄まりつつあるなかそれに拍車をかけるかのように大夢さんから到着したという言葉がかけられた。

 辺りを見ると、街灯はあるがその光は限りなく弱く、街灯同士の間隔も長いため暗く感じる。それに人通りも全くと言っていいほどなく、人工物すらない。

「ここをもう少し進んだ後に今はもう使われなくなったトンネルがある。そこに行くと、急に女の人の声が聞こえたり、その人が失くしたとされる鍵が何度も落ちる音が聞こえたりするらしい」

 大夢さんの詳細により、一気に雰囲気が増した。最近は暖かくなってきているというのに、それに逆らうようにグングンと気温が下がっているように感じる。

 生唾を飲み込んで、鞄から懐中電灯を取り出して前方を照らす。

「おっと、そうか。懐中電灯が必要か。すっかり忘れていた」

 そんな初心者みたいな発言をしたのは初心者の会長であった。

「それじゃあ、結菜のその鞄には何が入っているの?」

「ああ、この中にはなぁ………」

 背中から鞄を下ろして、その中に手を突っ込んだ。そこから出てきたものとは─────

「エアガンだ」

「いや、何で!?」

 中村さんの全力のツッコミにも会長はキョトンとしていた。

「ゲームだと拳銃で倒せたりするであろう?だから必要かと思ったんだが……違ったか?」

「結菜は幽霊とゾンビは同じ存在だと思っているの?」

「いや、幽霊も撃てるはずだぞ」

「んぅー、駄目だこれ」

 呆れすぎて中村さんはツッコミを放棄してしまった。他の人も注意するどころか笑いを堪えている。

 ここ数日で二回もエアガンを見ることになるとは……。

「私二本持っているので、一本どうぞ!」

 こういうところにはもう来慣れているのであろう。文月さんは両手に持っていた懐中電灯のうち、一つを会長へと差し出した。

 これで全員が最低一本は所持している状態となり、いざ例のトンネルへと歩みを進めた。

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僕に平穏な日々はもうない! @-haihun-

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