第4話 She follows Him ~ついて行く~

 男の足取りは迷いなく一定。

 荷物は最小限で、背中に余分な動きはない。

 行き先はすでに決まっているようだった。


 赤毛の少女は、その場でもがいていた。

 指先に力を入れようとしても、地面を掴めない。

 腰が浮かず、身体だけが前にずれた。


 身体を起こそうとして、すぐに膝が折れる。

 砂に足を取られ、前に崩れた。

 息が詰まり、口の中に砂が入る。


 背中が、遠ざかっていく。

 足音が一定の間隔で続き、距離だけが広がる。


 赤毛の少女は、立ち上がろうとして、止めた。

 代わりに、両手を前に出す。

 肘と膝を使い、地面を掴む。

 砂と小石が掌に食い込み、動くたびに擦れる音がした。


 進む速度は遅い。

 それでも、向きだけは変えない。

 視線は男の背中から外れず、這うようにして距離を詰める。


 足音は、さらに遠くなった。

 数歩分の差が、埋まらない。


 這っても追いつけない。

 地面の起伏が身体を引っかけ、呼吸が乱れる。

 それでも、止まらない。


 砂利の音が、一瞬だけ止んだ。

 風の音だけが残る。


「チッ! しょうがねぇな」


 小さく、舌打ちが聞こえた。


 次の瞬間、足音が戻ってくる。

 赤毛の少女の視界に、影が落ちた。

 男は何も言わず、屈み込む。

 腕を差し入れ、身体を持ち上げた。


 抱えない。

 肩に担ぎ上げる。

 重さを確かめるような動作のあと、すぐに立ち上がった。

 負担になるほどではない。


 赤毛の少女は、抵抗しなかった。

 揺れに合わせて視界が上下し、地面が遠ざかる。

 男の歩調は変わらず、進行方向も同じままだった。


 木立が近づく。

 乾いた土地から、わずかに色の違う影へと入る。

 風の音が変わり、足元の感触が土に変わった。


 その先に、建物があった。


 丸太を積んだ壁。

 小さな窓。

 錆びた金属の扉。


 ログハウス。


 男は、赤毛の少女を肩に担いだまま、そこへ向かう。

 速度を落とすことも、振り返ることもない。


 ログハウスの影が、二人を包んだ。



(つづく)

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