双子の俺らの後継ぎ争いで国が傾いたので思い切って女になってみた件

ちょな

第1話 俺の女宣言

『もういいよお!!そんな言うなら俺、女になるから!!王の座なんてあいつにくれてやるよ!!』



拳を握りしめながら熱く宣言してから2秒で後悔した。

家族もメイドも大臣もとりあえず俺の声が聞こえた奴全員の目が丸くなったのだけは視界に入れて足早に部屋を出る。


「何言ってんだ、俺!!!!」




□□□□□□□□

ことの経緯を説明しよう。


俺はリオ・ダリウス。

アルデア王国の王家に生まれた。


…双子として。


アルデア王国はかなりの大国で自然豊かな、まあいいとこだ!

その説明はまた今度にするとする。



控えめに言っても俺は文武両道、才色兼備、完全無欠、天真爛漫で王になる素質を限りなく備えていた。

見た目だって文句の付け所はないし、貴族からの人気も高かった。

が!



いつも目の前には俺と同じ養子で同じような出来栄えの男がいた。

違いといえば俺より仏頂面で目の下に泣きぼくろがあるぐらいだ。



…正直泣きぼくろは憧れたりもした。


そんな奴の名前はセオ・ダリウス。

俺と同じく正当な王家の血を引く王子だ。

小っちゃいころはまだ可愛げがあったが今ではさっぱりクール野郎になってしまった。

顔は俺に似て文句の付け所はない!!



俺たち双子の年が二桁になるころには後継ぎ争いで王族や貴族の雰囲気は禍々しいものになっていた。

アルデア王国には五家、有名な貴族がいる。

主にそいつらのにらみ合いが表立っていたのだ。


俺に王になってほしい家、セオに王になってほしい家。

見事に5対5ぐらいに分かれてるらしい。


10歳の可愛い俺はそんなことつゆ知らずセオと剣術をやっていた。



が、13にもなれば聡明な俺らはどちらが王になるかを頭に置き始めた。

1度だけ禁句ともいえる質問をセオにしたことがある。


「なあ、セオ。お前王になりたいか?」



「うん、そうかも。」



この時俺がどんな顔をしていたかはわからないが、俺と同じ顔をしたあいつは眉一つ動かさずに答えはもともと用意されてたように答えていた。



□□□□□□□□□


時は経ち、17歳。


「どちらが後を継ぐのかしらね」


「セオ様がいいんじゃないかしら?」


「でもリオ様も明るくて素敵よね~」



なんていう質の悪いメイドたちのこしょこしょ話も、


「リオ様、是非お話を」

「今夜食事でもどうですか?」


なんていう下心見え見えの太った貴族のおっさんからの誘いも、


「お前が王ね~~~」


なんて1番真面目に考えるべきなのに、俺らの昔の写真を眺めてしみじみしてる王である親父にも慣れ始めてきたころ。




俺の『女になるから宣言』の日が訪れた。


父も母も幼い妹のアリスも、五家も大臣らも大広間に集められて。

だいたい何の話をするかなんて予想はついたがくだらない、と思いながら足を組んで座った。

横の席ではセオが粛々と座っていて長いまつげを見ながら、4年たった今でも王になりてえのかな~、とか考える。



13のあの日を境に、「前世も双子だった」と周りから称される俺らの関係に1枚壁ができた。


俺はてっきりセオも王への固執はないものと思ってたから、生まれて初めて感情のすれ違いが起きて少し戸惑ったというか気まずくなった。


セオも口がうまいタイプではないので会話の数がぽっきり減った。

話しかけてくれないことへも軽くムカついて俺もあまり口を利かなくなった。



父が口を開く。

「で、皆の中で話題の後継者についてだがそれについて話したい」


父が名のある人物らを集めたのもうなずける。

王から収集がかかるほどに結構貴族らが後継者のことで暴れていたのだ。


暗殺をたくらむものも、裏で手を回すものも、噂を流すものも少なくはなかった。

この集まりは「それらをやめるように。」という無言の圧も目的にあるのだろう。


だが名目上この集まりの目的は「後継者について」。


貴族らが口を開きだす。




「私はセオ様がいいと思います。やはりセオ様は…」

「いやリオ様でしょう。この…」

「待ってください、この子たちの意思は…」


面白いぐらいに話は進まなかった。

各々が各々のメリットのために話す時間に何の価値があるのだろう。


「笑える」

誰にも聞こえないぐらい小さな声でつぶやくと


「笑えないだろ」

と同じく小さな声が隣から帰ってくる。


仏頂面のセオにしては珍しく眉をしかめて『僕、面白くないです』って顔をしている。

それが少し面白いような、共感するような気持ちになった。



そんな話題の中心でありながらも会話の中心からは一番遠い俺らをよそに話はどんどん展開を進めている。

やはり会話の流れは一歩も進んではないが。



「そもそもセオ様は能力的に…」


うるさい会話の中でその一言が耳をかすめる。


確かにセオは少し病弱なうえ、天才型というよりは努力型の人間だった。

だがしかし!!


たかが五家の長男ごときがセオを侮辱するのはどうにも許せなかった。


「お前今なんて言った??」


「え」


「なんて言ったかと聞いている。時間が惜しい。」


俺の敵意丸出しの一言に会話のがやが止まる。

4年もまともに口を聞かないような弟をかばう俺もよくわかんねえ兄だが、努力家のセオが向けらえていい言葉じゃない。


「リオ、いいよ。落ち着いて。」


セオは取り乱した俺を見て、落ち着きの払った声で俺を止めた。

そうやっていつも「僕は大丈夫です」「慣れてます」みたいな顔しちゃって。


俺だって慣れたとはいえ毎日毎日くだらない話を耳にするのは疲れた。

そもそも俺は王への執着はないわけでセオが王になればいいのに。

そうすればまた仲良くなれるか?


双子とはいえ俺が兄という立ち位置のせいで後継者についてはこじれにこじれている。

うんざりした状況に頭をかく。


ーーならばもう!!ーー



『もういいよお!!そんな言うなら俺、女になるから!!王の座なんてあいつにくれてやるよ!!』


自分が何を言ったのかよくわからない。


…とりあえず拳は力強く握られていた。



皆が目を丸くしてるのを確認して。

それから自分の言った言葉を脳みそに落とし込む。



…やばくね????


とりあえず振り向くことはあきらめ足早に部屋を出た。



そしてため息。


「何言ってんだ、俺!!」



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