第4話

 僕は街に帰って荷物をそれぞれに分配した。

 明日ギルドに集合して、ダンジョン入口の討伐クエスト受けてみようと約束をした。


 ダンジョン入口周辺は、中から溢れ出てきた弱いモンスターがよく徘徊していて、初心者が経験を積むにはピッタリの場所だった。もちろんそれぐらいのモンスターなら、僕でも一人で身を守れるので問題ない。


 集合時間を決めたら、ミネルさんはその大きな獲物を軽々と担ぎ、さっそうと人混みの中に消えていった。



「ミネルさんて、なんかちょっと変わってるよね!」

「『空間収納』いらなさそうだよね?」



 二人は楽しそうに会話をしていた。初めてパーティーを組むのが嬉しそうだった。



「じゃあまた明日!」



 僕はこうして二人と別れた。僕も新しいパーティが決まってちょっとうれしかった。

 一ヶ月もすればあの子達もレベルがあっという間に上がって、多分僕はついていけなくなる。

 それでも良かった。


 僕は今日のクエストの報告にギルドに訪れた。受付コーナーを見渡すがミーナさんがいない。

 別の人に頼もうか、誰がいいかなと迷っていると、奥のドアからミーナさんが現れた。

 僕はまっさきにその窓口に向かった。僕の後ろに並ぶ人はまばらだった。



「また新しくパーティーが組めるんですよ、明日デビューです!」

「……そうですか! 良かったですね!」



 そんな他愛もない会話をして、僕は宿屋に向かった。

 なぜだか今日は、ミーナさんの柔らかい空気にずっと触れていたような、そんな気がした。





 ――次の日


 僕たちはダンジョン入口の少し北側で、レッサーワーム退治のクエストをこなしていた。



「テオ、そっちに一匹いったわよ!」

「まかせてフィオ! 後ろに二匹地面から湧いてきたよ!」



 二人は幼馴染だからか、初心者なのにちゃんと連携が取れていた。ミネルさんは安定した剣さばきで、時折派手に押されているときもあったけど、全く問題なさそうだった。



「そろそろ強いのが出てくるから気を付けて!」

「「はーい」」



 二人からは元気な返事が返ってきた。ミネルさんは少しキョロキョロ見回して、僕の方をじっと見ていた。仮面があるので表情はわからないけど、「何をいっている?」とでも言いたそうだった。


 やがて湧いて出るレッサーワームに、少し金色を帯びた個体が混ざりだした。僕は収納から薬を取り出し、二人に投げて渡して回復を促した。ミネルさんにも渡そうとしたが、いらないとジェスチャーしていた。


 倒すたびに湧いて出るレッサーワームは、そのたびに金色味を増し、段々と強くなっていく。

 とは言っても弱小モンスター。

 二人は戦い方を工夫し、効率よくモンスターを狩っていった。


 いつの間にか、完全に金色となったレッサーワームに取り囲まれた。

 僕が回復薬を渡すたび、二人の戦闘力は目に見えて上昇していった。

 強くならない自分にとって、これほど嬉しい光景はなかった。


 一方、ミネルさんは動きが鈍っているようだった。

 それは敵が強いからではなく、何かに気を取られて、集中できてない感じだった。

 僕は回復薬をミネルさんに投げるふりをするが、彼女はいらないとジェスチャーをした。


 バッサバッサと狩りまくる二人に、回復薬をタイミングよく渡す僕、そしてギクシャクしながらも問題なく敵をやっつけるミネルさん。


 しばらくしてレッサーワームの湧きはパタリとやんだ。



「お疲れ様ー、もうこれで終わりだよ!」

「面白かったねーフィオ!」

「最後の強かったねー!」



 三人で和気あいあいとする横で、呆然と立ち尽くすミネルさん。



「……なあ、カノン……あの金色の個体は……」

「ああ、あれ。パーティで狩りをすると、いつも最後の方に色がかわるんですよ」

「いつも!? ……そんな馬鹿な……」



 それを最後に、ミネルさんは解散まで一言も話さなかった。


 そしていつものようにギルドに報告を行くと、ミーナさんはいつまで経っても奥のドアから出てこなかった。

 僕は諦めて別の受付係の列に並んだ。




 *****


 ――ギルド室にて


「ギルド長、報告があります……」

「おおミーナ、早速あのカノンとやらの秘密がわかったか?」



 私はギルド長に簡単な経緯を報告した。

 どうやってカノンのパーティに加わり、今日初めてパーティー活動が行われたかについて。



「それで、どうだったのだ」

「最初は初心者パーティーらしく、入口付近でレッサーワームを狩っていました……」

「まあ普通だな……それでカノンはなにか怪しい行動でもしたのか?」

「いいえ、全く……むしろ戦闘ができないので、補助に徹していました。その補助自体は的確でした」



 私はあそこで起こったことを、まだ信じられなかった。



「じゃあなぜ、そんな青白い顔をしているのだ」

「き、金色のレッサーワームに取り囲まれていました……」

「それは……どういう意味なのだ?」



「パラゴン化したレッサーワームにです!」



 私は堰を切ったように言葉が次から次へと溢れ出していた。

 パラゴン化など一生に一度見れるかどうか。

 ましてや最弱のレッサーワームがパラゴン化するなどありえない。

 なのに湧いて出る度金色に変化していった。

 初心者二人はそれに適合するように見る見る成長していった。

 カノンは回復薬を与えていただけだった。

 カノンはこれはいつものことだと言った……。


 私は半ば金切り声でそう叫んでいた。



「黄金がうなる大地の上で、あの少年の指揮に応えるように、あどけない天使たちが残酷に舞い踊る――そんな、眩暈のするような光景でした……」



 ギルド長は、グラスに注いだワインが溢れているのにも関わらず、しばらく硬直してしまっていた。



 *****



 僕は宿屋に帰って、今日のパーティでの出来事を思い出していた。

 それにしてもテオとフィオは連携がとても素晴らしかった。

 あの様子ならすぐに強くなるだろうな……

 ミネルさんもすでに覇者の雰囲気をまとっている気がする。

 今度のパーティーもいいパーティーだと頬が緩んでいた。


 ふと胸元を見ると、ステータスカードが月夜の光に照らされていた。


 第二階層転送権限……これ、みんなも一緒に連れていけるのかな……


 僕は馬鹿な考えをやめて、布団を深くかぶって眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕は強くなれない。皆が強くなってくれるだけで幸せなんだ! まさたす @masatus

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画