魔力量測定で「無才能」と判断され捨てられた少女、魔王の養女になったので王国は詰みました
夜光めん
第1話
泣いていた。
理由は分からない。
息が苦しくて、視界がにじんで、体が思うように動かない。
――ああ、これって。
ぼんやりと、でも確かに理解する。
私は今、生まれたのだ。
前世の記憶は曖昧だった。
名前も、顔も、細かいことは思い出せない。
けれど――
「人生の最初」という感覚だけは、はっきりしていた。
視界の端で、光が揺れる。
高い天井。
金色の装飾。
甘い香り。
ここは、きっと特別な場所だ。
王族か、それに近い身分の人間が使う部屋。
「……女、か」
低く、冷えた声が落ちてきた。
泣いているはずなのに、
リリア・オルテンシアの意識は妙に落ち着いていた。
声の主――
この国で英雄と称えられる剣豪であり、
私の父親である男は、私を見ていなかった。
その視線は、どこか遠くを見ている。
「確認は終わったな」
感情のない声。
「では、私は戻る」
それだけ言って、父は踵を返した。
鎧の音が、部屋の外へと遠ざかっていく。
――あ、行った。
そう思ったのに、
胸は何もざわつかなかった。
もともと、期待していなかったみたいに。
残されたのは、私と――
もう一人。
「……女の子、ね」
今度は、少し高い声。
母だった。
この国で最強の魔法使いと謳われ、
美貌でも知られる女性。
彼女は、私を一瞥すると、
ほんの一瞬だけ顔をしかめた。
「男の子じゃなかったのね」
それは、独り言のようで。
でも、はっきりとした失望だった。
抱き上げられることはない。
名前を呼ばれることもない。
ただ、確認するような視線を向けられて、
すぐに興味を失ったようにそっぽを向かれる。
「……まあ、五歳までは育てるしかないわね」
淡々とした声。
「魔力量測定があるもの」
五歳。
その言葉が、妙に重く響いた。
「それまでに、価値が分かればいいけど」
価値。
赤ん坊の私には、まだ分からない言葉。
けれど、なぜか直感的に理解してしまう。
――私は、試されている。
生まれた瞬間から。
こうして、
誰にも望まれないまま――
リリア・オルテンシアの人生は始まった。
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