2 映像の説明

 俺は大学で民俗学を専攻していました。大学名と教授の名前は迷惑になるかもしれないから、ぼかします。これから話す内容では、T大学のS教授ということにしておきます。


 あれは、今年の夏休みの終わり頃でした。夏休みと言っても大学の夏休みなので、九月の後半です。もうすぐ十月だと言うのにまだまだとても暑くて、エアコンが欠かせなかったのを覚えています。S教授が新学期の前に資料室の大掃除をしようと言い出して、俺たち学部生が集められました。資料整理も仕事のうち、と言ってS教授は俺たちをこき使いました。集められた学生は俺の他に、確かゼミの三回生三人と四回生二人だったと思います。それとS教授とで、その場には七人がいたはずです。


 俺たちは午前中からいろんな資料を箱ごと運び出して、中に何が入っているのかを確かめて、それから棚を清掃するという作業を繰り返しました。中には卒論で使えそうな資料があるかもということで、S教授に資料の閲覧の許可をもらう学生もいました。俺もそれを狙っていたはずなのですが、残念なことに俺の調査に必要な資料は見当たりませんでした。


 昼休憩の時間になって、余田よだという学生がお菓子の缶のようなものを抱えてきました。資料室の隅にあって、ラベルも貼っていないからよくわからないのでS教授の指示を仰ぎたいというものでした。そこでS教授とゼミ生で集まって、その缶を開けました。クッキーが入っていたような入れ物の中には、古いフィルムが二本入っていました。それぞれ『創立百周年記念■■■興業(漢字が不鮮明なので伏せ字にします)の栄光』『人柱/閲覧スルベカラズ』というラベルが貼ってあるだけで、それが一体何なのかS教授もわかりませんでした。


『とりあえず再生してみよう』


 誰が言い出したのか、昼休憩の後に上映会が始まることになりました。古い資料を再生するために、うちの学科にはビデオデッキやカセットデッキに映写機など、あらゆる再生機器がありました。事務室から映写機を借りてきて、俺たちは映像を見ることにしました。その場にいた女の子のうち何人かはラベルに書いてある「閲覧スルベカラズ」という言葉に怯えていましたが、S教授に「フィールドワークにおいて閲覧注意というものはないんだ」と諭され、大人しく一緒に鑑賞することになりました。


 これから文章にすることは、俺が覚えている限りの映像の内容です。資料を見るくせでメモをとりながら見ていたのもありますが、なかなかものすごい映像だったので、忘れたくても忘れられません。目の中に映像が焼き付いているようです。思えば、この映像が俺の今の状態の始まりでした。


 もしこの映像の話を聞いて、何か思い当たる方も連絡をください。何故あれがS教授の管理している資料室に放置されていたのかも、今となってはわからないのですから。

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