30話 九州本土決戦 報告書
九州本土決戦報告書 機密区分:省内限り
一部抜粋
──中略
(一)今回のタケイワタツノミコトの行動原理は、北海道戦域における交戦記録と同様に、害物が本能的に持つ「陸地への寄生衝動」によるものと見られる。大型の害物は、大地そのものに根を張るかのように陸地中央で土地と同化しようとする。
北海道に上陸した“カムイ”と今回の“タケイワタツノミコト”の災害指標はほぼ同程度であるが、当時未整備であった“異能の学徒”制度の拡充および交代制運用の定着により、防衛力は向上し、害物による本土侵略を最終的に退けることに成功した。
──中略
(五)しかしながら、異能研究は依然として途上にあり、通常の前線基地に配属された異能の学徒のみでは、タケイワタツノミコトを足止めするのが精一杯であった。北海道の時より防衛力は上がったものの、最終局面では“特務班”の存在を公にせざるを得なかった。
“特務班”──異能の学徒制度の延長線上に生まれた、最終実験部隊。
特別に強い害物の力を宿した人員で構成されているが、その力を定着させる実験は極めて非人道的であり、かつ定着率も一割を切るため、これまで公表を控えてきた。
だが、他国の異能研究の進捗を踏まえ、国内外への示威および志願者誘導のため限定公開へ移行する。
公開される情報は厳選され、第一次侵攻の立役者であり、害物対策省が意図的に英雄たらしめた“イナリ”に加え、直近で特務班に編入された“クニエダ”の二名を前面に立たせ、政治的宣伝に用いる方針とした。これは、日ノ国軍部への牽制も兼ねた措置である。
なお国民向けの広報では、二名の異能を象徴的に強調し、「国家が守るべき希望」として報じる準備が進められている。
特にクニエダについては、神格害物“タケミカヅチ”をその身に宿すことに成功しており、当該事案において戦果として確認された。性向は規律順守傾向。親族(妹)を国営病院管理下に置けるため、統制上の問題は低い。
──中略
(八)今後の“異能の学徒”制度は、今回の決戦を契機に大きく変化するだろう。特に重複異能については、実験結果において他国に遅れを取っている事実がある。さらなる研究推進のため、今回の九州本土決戦で生き残った異能の学徒を対象に、適性評価に基づき重複異能の実験を継続するものとする。
また、決戦に参加した学徒の中から特務班候補として選抜を行い、次期作戦に備えた人材確保を進める予定である。
附記:本報告書における学徒死亡数および行方不明者数は別紙(閲覧制限)にて処理済み。
──以上、報告終わり。
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