追放されたアラフォー&メイドさんの【死に場所を探す】ほんわか異世界旅行記。 ~補助スキル《記憶》で、死にたがりヒロインたちを助けたら、依存度がハンパない~

ひなのねね🌸カクヨムコン11執筆中

第1話 誰も見てない

「楽しいってなんだっけ?」


 俺こと百舌鳥もず想一郎そういちろうは、誰もいないオフィスのベランダで空を見上げた。

 満月が地上を照らすけど、都会の街明かりには無意味だ。


 もう終電も近いというのに小さな人間たちが、あちらこちらへと向かっている。

 この歩いている人間たちにも、一つ一つの人生があるのだろう。


 そう思うと吐きそうだった。

 不幸も幸せも個人差がある。

 

 せめて人間的な扱いをしてくれる会社で働きたかった。

 転職を三度繰り返して、今では四十三歳。


 すでに引き返せない。

 進むべき道もない。


 無色の世界では、聴覚も味覚も――視覚や思考すらも衰えていく。


 それが鬱に向かっていると知ったのは、メンタルケアに通ってからだ。

 けれど会社は『お前の精神が弱い』の一点張りで、仕事量も増え、残業も増加した。


 人生に話せる人もなく、社会から腫れ物扱いされる日々。

 

 生きてても楽しいことは無く、未来にも期待できない。

 笑い方なんて忘れてしまった。


「せめて来世では、笑って生きたいな」


 落下したら痛そうだ。

 窓枠に足をかけ、出来るだけ高く飛んだ。


 今の俺は笑ってるんだろうか。

 俺を照らす月だけが答えを知っている。


 ◇


「百舌鳥想一郎のオッサンは、召喚英雄パーティーから追放でーす!」


 自殺した俺を待っていたのは死後の世界ではなく、剣と魔法の異世界だった。

 同じように召喚された高校生三人と共に、英雄として祭り上げられたのが三日前。


「と、突然どうしたんだい火乃宮ひのみや君」


 火乃宮ひのみやみなと、十七歳。

 黒髪と鋭い瞳、勢いで行動しやすい高校二年生の男子だ。


 朝だがまだ暗い森の中。

 二人の女子が水浴びに行っている間、荷物前で彼は口を開いた。


「いや、分かるっしょ。

 も一週間我慢してきたけどさ……やっぱ若い中にオッサンがいるとイタいわけよ」


「だ、だが僕らの使命は協力して、七龍の首を落とすことじゃないのか……?

 仲違いしている場合じゃ……」


 反論が気に食わなかったのか、火乃宮は頭をかいて、苛立たし気に剣を地面に差した。


「いや、オッサン。

 あんたの授かったは知らんけど……後ろでなんか飛ばしてるだけだし。

 そんな中年と人間として一緒にいたくないんだわ」


 にやにやと笑いながら、火乃宮は俺を見つめる。

 瞳を見ればこれ以上、言い争っても無意味なことが分かる。


「二人には相談したのかい……?」


「あ―……そうだな、そんな感じだった。

 リーダー役の俺が伝えとくわって感じ。

 二人が来る前に消えてくれよ、だから今話したんだろう?」


 異世界でも人に拒絶されると、なんだか、どうでも良くなった。


 知らない世界なら自由気ままに旅をして、人助けをして――物語の主人公のように、誰かに必要とされながら生きていけると思ったのに、結局は何処に行っても不要なオッサンだった。


「そうか……じゃあ、火乃宮君たちも、道中、気を付けて」


 大きめのリュックを背負い直し、片手剣を持って去ろうとしたとき、火乃宮から『待った』と声がかかる。


ルイズ、荷物、装備は置いてけよ。俺が稼いだ金だぜ?」


「な……これは全員で集めてきたルイズと装備だろう……!」


「いいや、違うね。

 俺が命を張って前線で戦ったから手に入れたんだ。

 このを司る俺がね」


 召喚された俺たちには、王冠と呼ばれる固有スキルが存在する。

 彼は特に戦闘に特化した暴力的なスキルツリーを与えられていた。


「大人ってのはいつもそうだ。

 子どもに、あれやこれや言って、自分は楽しようってんだからな」


 出て行けと言ったくせに酷い言い分だが、話が通じないのでは会話する気も起きなかった。


「……分かった。

 相手は世界を喰らい尽くすと言われている七龍だ」

 

 俺は言われるがままに、金、装備、荷物を置いた。

 火乃宮の言い分には苛つく部分もあるが、大人の代わりに戦ってくれる餞別と考えることにした。


「おい、服も置いてけよ」


「何を言って――!」


「なんてな、冗談だよ」


 明らかに僕をバカにしている素振りで、火乃宮は掌をヒラヒラと振った。

 早く行けという意味らしい。


「おっと、これは忘れもんだ――好きに使えよな、オッサン! うははは!」


 放り投げられた瓶を両手でキャッチする。

 コルク栓で密閉されたガラス瓶の中で揺れる液体は紫色。


 モンスターに浴びせたり、無理やり飲ませて殺すための猛毒薬だ。


 俺は布の服のまま、左手に瓶を握って森を後にした。

 強く、ただ強く、握って。


 ――なんで、あんなことで笑えるのか、ずっと考えながら。





【あとがき】=============

 取り巻く環境に絶望した死にたがりの二人が、ほんわか旅する作品です。

 序盤は重ためですが、基本は心温まるハートフルストーリー……だと思います、多分!


 カクヨムコンテスト11の公募作品(~2026年2月2日(月)午前11:59迄)です。


 もし「好きな方向性!」「気になるかも!」という方は、【★で称える】【+フォロー】でサポートいただけると、とっても嬉しいです!


 何故なら公募締め切り、ギリギリ間に合う予定で執筆していますので……!

 今度こそは、面白くできるように頑張ります!


 ※次話は同日:18:17分

=====================

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る