ワタシたちでクリスマスと決めた日
ちあきっこ
1話完結
【一足早いクリスマスディナー】
(2025/12/13)
約束の時間を待ちきれず、少し早めに家を出た。
特別な予定がある日は、決まってこうなる。
先に着いて、umieでウインドウショッピングでもしながら、気持ちを落ち着かせようと思った。
今夜の食事場所は、モザイクにある「Fisherman’s Market」。
一足早いクリスマスディナーだ。
先週から、この日のために“ありったけのおしゃれ”を考えていた。
香水は、料理の邪魔になる気がして、あえてつけない。
その代わり、ひとりだった頃に「自分へのご褒美」として買った、ブルーサファイアのアクセサリーを選んだ。
誰かのためというより、あの頃の自分を、そっと連れて行くためのような気がした。
先週買ったばかりのショルダーポーチも、今日が初出番だ。
最後まで迷ったのは、ストッキングにするか、タイツにするか。
色やデニールをあれこれ考えた末、四十デニールの黒に落ち着いた。
かつてはカラータイツに夢中になった時期もあったけれど、
「男性から見ると不思議らしい」と聞いてから、いつの間にか控えるようになった。
もっとも、それもずいぶん昔の話だ。
先に着いた私は、店の前で待つことにした。
そこへ、大きな荷物を抱え、スーツ姿で駆けつけてくるクマさん。
クマさんとは、俗に言う『彼氏』なのかもしれないけれど、ワタシたちはそんなひとくくりにない。お互いにお互いを大切にしている関係だ。
少し息を切らしながらも、いつも通りの、安定のクマさんだった。
ハイネケンビールとウーロン茶で乾杯し、
一年の労をねぎらい、少し早いクリスマスを祝う。
私からのプレゼントは、四色ボールペンとシャープペンが一体になったもの。
私にとっての商売道具であるし、人に物を教える立場である彼にも、
日々の仕事の中で使ってもらえたらと思って選んだ。
思っていた以上に喜んでくれて、こちらまで嬉しくなる。
店はビュッフェ形式だった。
彼のパソコンや大事な書類があるため、交代で料理を取りに行く。
ゆっくり腰を据えて話す時間は多くなかったけれど、
料理を取り、食べ、時々相手の皿から少し分け合う。
そのやりとり自体が楽しく、料理もどれも美味しかった。
予約していたおかげか、窓からはポートタワーと海洋博物館が見える席だった。
夜景を楽しめる代わりに、同じように夜景を眺める若いカップルたちの姿も目に入る。
女の子たちのスカートやショートパンツの短さに、
「気合の入り方がすごいよね」なんて話をする。
私はもう、あんなに短いのは履けない。
別にいいのだけれど、と心の中で付け足す。
食事を終え、店を出たあと、
「神戸のランドマークを入れて自撮りがしたい」と、私のわがままを言った。
クマさんは快く付き合ってくれて、
「Facebookに載せてもいいよ」と言ってくれた写真を、結局そのまま載せた。
ツーショットは初めてで、少し照れくさくて、でも確かに嬉しかった。
少し早いクリスマスは、派手ではなかったけれど、
静かで、ちょうどよく、あたたかかった。
そんな夜を過ごせたことを、私はきっと、長く覚えている。
ワタシたちでクリスマスと決めた日 ちあきっこ @Chiakikko
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