青は藍より青き

しおん

第1話




雪国の春は、まだ桜が咲かない。



新品の制服に袖を通して、鏡の前に立つ。



今日から高校生になるんだ…と、新生活に昂まる気持ちを、リボンを結びながら胸にしまった。



『あと3分 』



ピコン、と軽やかなスマホの音が鳴り、画面に表示された短いメッセージ。



「嘘。大変っ…」と、私は慌ててカバンを持ち玄関に向かう。



「行ってきます!」


「あら、もう出るの?

 気をつけて行ってらっしゃい。」



朝食を片付ける母親に見送られ、足早に近所の小さな公園に向かう。




--…もう、来てる。




視界の先にあるベンチに座っているのは、短いメッセージの送り主。

第一ボタンまで閉じられたシャツにしっかりとネクタイを巻いて、小説を読む彼の姿。



「おはよう、あおい。」




声をかけると、彼は小説から顔をあげて「おはよう。」と呟く。

彼の名前は、平野 蒼ひらの あおい

小学校からの幼馴染で、ずっと、私にとって特別な存在である。



「リボン、曲がってる。」



彼はそっと立ち上がって、私のリボンを直しはじめた。



「あっ、ありがとう。」



顔が近付き、リボンを触れる手にドキドキして思わず声が上擦る。

眼鏡から覗く切長の目。羨ましいくらい、長い睫毛。





「よし、行こうか。」




綺麗に整えられた、制服のリボン。

高鳴る鼓動と、赤くなる顔が恥ずかしくて

歩き出す彼の少し後ろに続いた。

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