天藤裕 過去と未来
五月後半の終わり頃。青色のデルフィニウムが咲く時。
僕が女性だけでなく男性をも好きになれるっていうのに気づいたのは、社会人になって、数年経ったときだった。会社の先輩を好きになったのだ。常に笑顔で優しくて。話すのが苦手な僕と話すときも、嫌な顔せず、常に笑顔で話を聞いてくれた。嬉しかった。だから、先輩への恋心を自覚したときには遅かった。諦められなかった。だから、諦めるために僕は先輩に告白しようと決めた。先輩には彼女がいるそうだ。断られないはずがない。
「先輩!!好きです。尊敬とかの好きではなく、一人の人間としてです」
言えた。ちゃんと言えた。先輩のことが好きだって。でも結局断られるんだろうなって思って泣きそうになった時、後ろから声がした。
「ハハハ!!お前が会社を珍しく定時退社したって聞いてきてみれば、告られてるじゃん!!しかも、男に。まあ良かったじゃん。告られて」
後ろに立っていたのは、会社内でも口軽女好きクズ男としてもしられている先輩の同期だ。僕はこの先輩のことが苦手だ。大切なことはすぐに言いふらすし、セクハラなんて日常茶飯事。そのくせ、顔がいいから女に常に言い寄られている。常に女を切っては捨て、切っては捨てをしている。少し嫌な予感がした。
◇◇◇ ◇◇◇
やっぱりって思った。会社に入ったときに、俺に向けられる視線がいつもと違い、軽蔑が混じってたから。
それからは、常に苦しかった。言葉には出されないけれど、なんでお前はここにいるんだ。異端者が。っていう視線が常にまとわりつく生活だった。辛かった。だけど、その苦しみは一人の助成によって取り除かれた。味方してくれたんだ。異端者の僕に。
「ねぇ、皆して、言葉に出さずに視線だけで訴えて、何が楽しいわけ?その後、天藤さんがやめたときは僕たち、私たちは何もしてませんって、素知らぬふりをするんでしょ?何が楽しいの?」
助けてくれたのは、鷹峰皐さん。僕の同期だ。彼女は同期の中でもキラキラしていて、社交性も十分。正直言って僕をかばう理由が見つからなかった。でも、
「何がそんなに行けないの?人と少し違ったからって、差別する対象にはならないでしょ?だから嫌なんだよ。自分よりも少数の人間たちを敵にして、他の大多数を味方にして、いじめさせて、自分に矛先が向かないようにする奴らのそういうノリ。みてるだけで、胸クソが悪くなる。なら、その矛先私へ向けろよ。あ?お前たちの嫌いな女が好きな女。目の前にいますよ?ほら、天藤さんにかけようとしてた言葉。私に向けろよ」
「そんなこと、できるわけ無いじゃん。だって、鷹峰さんだよ?異端者だとしても今までの鷹峰さんが消えたわけじゃないもん」
「だから?人によっていじめるかいじめないか決めてるの?ダサいよ。それに、君たちに対して優しくしてたのは、ホントの自分を出さずに、自分の弱い心を守るために、してただけ。本心じゃない。これを知ったうえでも、私をいじめない?」
「うん」
「そう。君たちは変わらないんだね。いこ、天藤さん」
嬉しかった。周りに、自分と同じ異端者がいたってことも、自分を、関わりのない僕を守ってくれて、庇ってくれて。そんな人がいるとは思ってもいなかったから。それに、自分に向けられたはずだった悪意を、正義感だけで自らに向けることのできる勇気が、カッコいいって思った。人によって態度を帰る人達に、面と向かって言い切っていて、スカッとした。
◇◇◇ ◇◇◇
それから、僕は会社をやめて自営業をしている。鷹峰さんは他の会社に就職したそうだ。自分は、またあんなことになるのが怖くて、就職活動できなかった。
[ピーンポーン]
誰だろう?自分には交友関係がないから、尋ねてくる人なんかいるわけ無いし、郵便も頼んでないし。
…鷹峰さんだ。自分に何か用かな?
[ガチャ]
「……どうぞ。」
「ありがと!おじゃましまーす……じゃなくて、今日は外出しよ。って誘いに来たんだよ」
外出……確か、一週間前だった気がする。こないだ、買い物に行ったとき以来だから。
「なんで外出?」
「いや、なんとなく。天藤くんのことだから、外出なんかしてなさそうだなって」
「確かにしてないけど、どこに行くの?」
場所による。大型ショッピングモールとか、一が多いところは嫌だし。
「私たちみたいな異端者って言われた人達が集まるカフェ!!」
…僕たちみたいな異端者って言われてきた人達が集まるカフェ。ちょっと興味あるかもしれない。
「あ!今、興味ある顔したね?じゃあ、行こ!!あ、あと、私のことは呼び捨てで皐って読んでね!!」
「え、ちょっと待ってって!!」
他の人のことを呼び捨てなんてしたこと無い。急には無理だって。
◇◇◇ ◇◇◇
ここか。なんか、趣がある。
「んじゃ、入ろ!!」
「え、ちょっとまって。って!!」
急に入るなんて聞いてない!!心の準備くらい欲しい。
[カラン コロン]
本当に入るの!?
「皐。絶対俺達と同年代の人なんていないよ。帰ろうよ」
絶対いない。絶対。絶対いないから帰ろうよ。
「大丈夫だって裕は心配性だな。いなかったらいなかったで、他の年代の人と仲良くなったらいいじゃん」
いいわけ無いじゃん!!人と話すのさえ苦手なのに、他の年代の人と仲良くなるなんて!!
「仲良くなんかなれっこないって。はじめましての人と明るく話せるのなんか、皐だけなんだって。あ。いた!同年代の人いたよ!」
あれ?呼び捨てで呼べてる?
「話しかけてよ。皐。お願い。」
「いらっしゃいませ。新客さんですかな?カウンターでも?」
「あ!はい!カウンターで!」
「あ、はい。カウンターでお願いします」
◇◇◇ ◇◇◇
「わかる。それ好き」
「だよね!?俺も好き。やっぱり個々の部分は、こうでないとね」
やっぱり零さんとは気が合う。
◇◇◇ ◇◇◇
ここに来てから僕は認められるようになった。だからこれからは、自らが自らを認められる。そんな場所を作れたら。そう思う。
五月後半の終わり頃。青色のデルフィニウムが咲く時。天藤裕は、過去を思い出し、久々に多くの人と関わろうと思えた。
Vielfaltに集う人達 灰簾石 @matomato0630
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