第2話
目を開けると、そこは──雲の上だった。
いや、雲じゃねぇ。
ただ白いだけの、何もない空間。
「ここは……」
「初めまして、鬼塚剛さん」
振り向けば、さっきの女。
白い衣に、銀の髪。
明らかに人間じゃねぇ雰囲気を纏っていた。
「私は女神です」
「……は?」
「あなたは先ほど命を落としました。そして、私があなたを選びました」
女神とやらが、ニコニコ笑っている。
「異世界への転生です」
頭が追いつかねぇ。
「待て待て、マジで言ってんのか?」
「ええ、本当ですよ」
「なんで俺なんだよ。勇者だの英雄だの、そういうタマじゃねぇぞ」
女神がクスリと笑った。
「それでいいのです。さて、質問です」
優雅に手を広げる。
「どんな能力が欲しいですか? 炎を操る力? 時を止める力? それとも──」
俺は、ため息をついた。
「……くっだらねぇ」
「え?」
女神が、初めて驚いた表情を見せた。
「能力やらなんやら、そんなクソみてぇなもん、いらねぇんだよ」
俺は、女神を睨みつける。
「俺はな、拳で戦ってきた。努力して、血ぃ流して、勝ち取ってきたんだ」
「んなこざかしいルール、俺には必要ねぇ」
拳を握りしめる。
「チートなんか、タイマンでぶっ潰してやるよ!」
長い沈黙。
そして女神は──笑った。
「素晴らしい」
なんか、嬉しそうに笑ってやがる。
「……承りました」
「は?」
「あなたの望み、確かに受け取りました」
女神が俺に手をかざす。
体に光が広がる。
「それでは、ご武運をお祈りしております」
「おい、ちょっと待っ──」
次の瞬間、足元の雲が消えた。
落下する感覚。
「異世界へ、ようこそ」
女神の声が遠ざかる──
⸻
目を開けると――青い空。
空…だよな?
地面に寝転がってる。草の匂い。
「…マジかよ」
体を起こす。
周りを見渡すと見たことない景色。
石造りの街並み。
遠くに城らしき建物。
そして、行き交う人々。
「…異世界、マジであんのかよ」
立ち上がり、自分の体を確認する。
服が変わってる。
白いシャツに、茶色いズボン。革のベルト。
「…なんだよこの格好」
リーゼントは…あ、残ってる。
髪を触ると、しっかりリーゼントだ。
「せめてこれは残しといてくれたか」
ふと、手に違和感。
何か、体の奥に力がある…ような?
「…気のせいか?」
首を振る。
「とりあえず、どうすっかな」
周りを見渡すと、大きな建物に看板。
『冒険者ギルド』
「…冒険者?」
ああ、そういや異世界転生ものって、大体こういうのあるよな。
「ハッ、お約束ってやつか」
「とりあえず行ってみっか」
扉を押し開けた。
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