俺と才女の幻影戦線

@tatuya110011

第1話 始まりの出会い

4月、その月は入学式というものがあり、別れや出会い、終わりや始まり、期待と不安が入り混じり、とても忙しい日々だった。大学生になったばかりである私、宮野清明(みやのきよあき)も、慌ただしい日々を過ごしていた。


「はぁ、また一人か。」


中学、高校では、ろくに友達が作れず、教室の隅で読書に勤しんでいたためか、友達作りにまた失敗した。


「まぁ気を落とすな。友人の一人や二人、すぐにできるさ。」


そう明るく振る舞うのは、中学の時からの親友である浅田翔琉(あさだかける)だ。


「お前みたいなコミュ力お化けに言われても嬉しくない。なんでそんなに翔琉は友達多いんだ?」


「なんでって言われてもなー。普通に話してたら仲良くなるでしょ。そしたら、どこかに遊びに行くでしょ。それから、」


「もういい。お前に聞いた俺が悪かった。」


翔琉のコミュニケーション能力は凄まじく、中学、高校ともに生徒会長を努めて、周囲からの信頼が熱かった。


「んー。それなら、近くにある神社にでもお参りでも行ってきたら?」


「神社って、もしかして十六夜神社のこと?」


「そうそう。あそこ、基本的には学業成就や合格祈願で行くことが多いけど、その隅に小さな稲荷社があるんだよ。そこに夜中に行って縁結びをすると願いが叶うっていう噂があってだな。」


「へぇ。そりゃすごいすごい。」


「お前、信じてないだろ?」


「だってそうだろ。神社にお参りしたところで何も変わんないよ」


実際、縁結びの神社には飽きるほどお参りにいった。だが、それで友人ができることも、ましてや恋人ができることはなかった。だから神社はもう行かないと心に決めていたのだ。


「そうか。まぁ気が向いたら行くといいさ。いい肝試しにもなるし」


「行くかよ。俺ホラーとか苦手なんだから。」


「そうだな。お前は昔からビビりだったな。」


「うるせー。」


そんなたわいない会話がこれからも続いていくと、思っていた。


ある日、親から連絡が入った。翔琉が死んだのた。


「死んだって。う、嘘だよな。何かの冗談だよな。」


「冗談じゃない。昨晩、交通事故で亡くなったって。」


「.....」


頭が真っ白になった。昨日まで元気に話をして、遊んで帰った。あいつが、もう、いない?

これは夢だ、そう言い聞かせながら、この悪夢が覚めることを期待して、眠りについた。


「アイツ、死んだのか。」


ふと目覚め、時間を見たら深夜0時であった。

その時にやっと、彼が亡くなったことを実感した。


「ああぁぁぁぁぁぁ。」


俺は、一生分泣き喚いた。1時になる頃には落ち着いて、俺は外を歩くことにした。夜風に当たりたい気分だった。


「...」


何も思うこともなく、ただひたすら、夜道を歩いていた。ふと妙に静かになったと思ったら、目の前には朱色の鳥居があり、気づいたら、例の神社に来ていた。


今は深夜、人は誰もいないどころか、明かりもない。そんな中、俺は歩み始めた。


「アイツとの約束だしな。」


先日話してた内容を思い出し、俺は境内のはずれにある稲荷社へと移動した。アイツとの最後の思い出だから、せめて友人の一人や二人を作って、恩返ししようと思ったのだ。


「ここか、」


隅にあると聞いていた割にかなり時間がかかった。何せ、稲荷社へは、細い獣道を歩く必要があったからだ。不慣れな道に苦戦しつつ無事噂の稲荷社へ着いたのだ。


稲荷社の前に立ち、お参りしようとした時、ふと違和感に気づいた。


「なんで、お札が貼られてるんだ?」


稲荷社にはお札が貼られていた。それは祀られている神様かと思ったが、その数が異常だ。暗闇だからよく見えないが、少なくても、20枚以上貼られている。そんな疑問を抱きつつ、お参りを済ませて帰ろうとした。


「あれ、道がない。」


先ほど通った道がなくなっていたのだ。違和感が不安に転じる。その瞬間耳元で声が聞こえた。正確にはそんな気がした。


「あ..が..」


声は霞んでよく聞こえなかったが、だんだん鮮明になっていく


「あ..が..ぅ」


「あ..かどぅ」


「来てくれてありがとう。」


ゾゾゾ、と今までに感じたことのない感覚がした。それはまるで、全身を電気が走ったかのような、もしくは、体がバラバラに分裂したかのような、そんな危険信号が発せられていた。


「ぇ、誰。」


恐怖が混ざりながらも、ソレに声をかけた。


「驚いた。もう数千年、参拝客が来なかったから、私のことは忘れ去られたのだと思っていたよ。」


その声は、澄んだ高めな声色で、聞いた人を夢の中に誘うような、魅惑的な声だった。


「あぁごめんね。私が誰だってことだったね。」


先ほどの質問への返事をするタイミングでようやく我を取り戻し、不安な気持ちが高まった。


「私は、ここに封印されているただの狐だよ。昔、悪さをしててね。そしたら通りすがりの巫にボコられてこの地に封じこめられて。社会から隔離されちゃったんだ。」


「狐、それに封印って。」


「ん。君、もしかして一般人?」


「え。まぁそうだけど。」


「あーそうなんだ。てっきり巫が来たのかと。」


先ほどから、知らない単語が出てきて、不安よりも疑問が増えていった。


「あの、さっきから巫とか、封印とかなんの話してるの?」


「あぁごめんね。私は君たちの言うところの妖怪さ。それで昔、巫っていう、靈氣を扱える人たちに封印されちゃったんだよ。」


「巫って何」


「そこからかー。まぁいいよ。」


彼女?は面倒そうにしつつも説明してくれた。


「人間はね、誰しも気を放ってるの。それが集合して、一つの生命体になったのが霊獣って呼ばれるものなの。それは良いものもいれば、悪いことをするものもあるの。だから、悪いのは討伐して、被害が出ないようにしてるの。その役目があるのが巫なの。」


「でも、そんなこと周りで聞いたことないよ。」


「そりゃそうだよ。彼らは見えない形で悪意を蔓延させているんだ。災害とか事故とか。」


「....」


「おや、気に触ることでもいったかな。」


「俺の親友が、事故で死んだんだ。これは、その、霊獣ってやつの仕業なのか?」


「んー。君の友人は多分、霊獣に取り憑かれた人が周りを道連れにしようとして出た結果、じゃないかな。車運転してる人、もう手遅れだったからね。」


「アイツの事知ってるのか?」


「んー、知らないよ。でも見えたの。そんな光景が。」


「そうか。」


そんな会話をしていたら、ふと本題を切り出された。


「君ー。私の所でお参り、したよね。なんだっけ、縁結びとか」


「ぁ、はい。もしかして叶えてくれるんですか?」


「叶えないよ。私、縁結びの能力ないから」


「...」


その言葉を聞き、背中を向き帰ろうとしたが、狐が止めてきた。


「もー。最後まで話は聞いてよ。私は、縁結びの能力はないけど、人を助ける能力はあるよ。」


「だからなんですか、それで友達とかできるんですか。」


「んー。友達は、難しいけど、君の友人だった人みたいに、立派な人になれるよ。」


「...」


僕は友達が欲しいとばかり言っていたが、翔琉は、分け隔てなく交流関係を持ち、人を支えてきた。そんな人に、僕がなれるのか。


「本当に、なれるんですか?」


「もちろん。私と契約すれば、周りの人を助けることもできるし、自分も幸せになるよ。」


もし、僕が翔琉みたいになれたら、人助けをして、周りの人から信頼されるような立派な人になれるのなら。


「...いいよ。契約、するよ。」


「うん。ありがとう。これで契約成立だ。これで君は立派な巫になって、たくさんの霊獣を祓う、立派な人になれるよ。」


「....ん」


こうして、封印されてた狐と契約し、この世の悪意に満ちた世界へと足を踏みいれた。

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