第22話 エリナンデス・ホワイトのパーティー2

「私からの話、長くなってしまいましたね。一旦ここまでにしましょう。今までのところで、何か気になることはありますか?」

「あ、そうだ…… ごめんなさい、今更なんだけど……」


 そう、大事なことを聞いてなかったんだ。


「遠慮なく聞いて下さいね」


 ニッコリと笑ってエリナさんが答えてくれる。

 今更感が満載だけど、僕は安心して聞くことにした。


「エリナさん達のパーティー名は、なんという名前ですか?」


 パーティー名は重要だ。

 どんなカッコいい名前なのか、僕は密かに期待してた。


「…………」


 あ、あれ? なぜ沈黙が…… もしかして、今更すぎて怒ってる……?

 微妙な間を置いて、エリナが答える。


「エリナンデス・ホワイトのパーティー、です」

「はい、そうです。エリナさんのパーティーの名前をお伺いしたくて」

「その…… エリナンデス・ホワイトのパーティー、です……」

「……??」


 あれ、上手く質問が伝わってないのかな?

 困っている僕に、セディアが横から囁いた。


「ヒロ君、私、エリナさんの言葉で思い出した…… 『エリナンデス・ホワイトのパーティー』っていうのがパーティー名なんだよ」


 僕は衝撃のあまり、大声で叫んでしまった。


「え、ええーーっ!? 自分の名前をパーティー名に!?」


 エリナは顔を赤くして下を向き、呻くように呟いてる。


「だから…… だから私、この名前、嫌だって言ったのに——」

「そうだよ! ヒロ、僕達のパーティー名は、この世界で一番美しいお師匠様の名前を冠した『エリナンデス・ホワイトのパーティー』さ!!」


 エリナがうつむいている横で、テディが誇らしげに語り出した。


「パーティー名は基本的に自由につけられるんだけど、もちろん勝手に人の名前なんてつけられない。このパーティー名が使えるのは、お師匠様がリーダーである僕達パーティーの特権なんだ!! 僕がこのパーティー名を考えたんだけど、ヒロ、セディアさん、最高だと思わないかい!?」


「う、うん…… そうだね」

「え、ええ…… そうね」


 僕もセディアも曖昧に頷いた。

 横でエリナがうなだれているのを見ると、気の毒であまり賛成できないけど、テディの圧がすごい……


「ヒロ、セディアさん、ありがとう! お師匠様、聞きましたよね? ヒロもセディアさんも、最高のパーティー名だと感激してますよ! やっぱりこの名前にして正解でしたね!!」

「…………」


 ガイが苦笑しながら話し出す。


「いや、まあ、なんだ…… パーティー名を決める時、それなりに候補はあったんだが、他の名前はことごとくテディが反対してな。まあ、分かりやすくていいんじゃねーか?」

「そうそう、お姉様の名前、素敵だし〜」


 これはもう、これ以上触れないほうがいい話題だな……

 よし、もう一つ気になっていた、別の質問をしよう。


「もう一つ、質問していいですか?」

「え、ええ、どうぞ!」


 話題が変わるのを喜んで、明るい声でエリナは返事をした。


「エリナさん、人のステータスが見えるって言ってたけど…… どういう感じで見えるんですか?」


 エリナは少し考えてから、話し出す。


「私は、この能力スキルを『鑑定眼チェック』と呼んでます。前例がない能力スキルのようで、精霊士固有のものかもしれません。能力スキルを発動すると、人の上ら辺に、略字と数字が並んで見えるのです。残念ながら魔物のステータスは見えません」


 略字と数字? それって……


「略字は上から、LV、HP、MP、STR、DEF、AGI、DEX、INT、RES、となります。昔は見えてなかった略字もあるので、『鑑定眼チェック』自体も成長するようです」


 やっぱり、ステータスっていうからそうじゃないかと思ってたけど……

 そのまんま、RPGのステータスだ。


「そして、色々な冒険者のステータスを見るにつれて、この略字の意味するところが大体わかってきました——」


 僕は、思わず口を挟んでしまう。


「レベル、体力、魔力、攻撃力、防御力、素早さ、器用さ、知力、抵抗力、ですよね?」

「「「「!!?」」」」


 エリナよりも早く、テディが反応した。


「え、ヒロ、どうしてわかったの!? 僕達、RESだけよくわからなかったんだけど、抵抗力って何!?」

「え、えっとね……」


 僕は、前世のゲーム、RPGというものの存在を話した。


「——それで、RESの意味する抵抗力は、魔法に対する防御力っていうのが、よくある設定なんだ」


 しばらく沈黙が続いた。そして——


「ヒロさん、本当に前世の記憶があるのですね。もちろん、冗談ではないと思ってましたが、こちらの世界と関わるような知識があるなんて……」

「いや、本当に面白いな。前世の話、聞きたいことが色々あるぜ。旅している間の楽しみになりそうだな」

「ゲームで、創造された世界を擬似体験できる!? いや、こっちのゲームと全然違うんだけど、どういうこと?? 『魔法』がない代わりに『科学』というものが発達してできるようになったって、もう、全然理解が追いつかない……!」

「それって、アタシ達がゲームの登場人物ってこと?? 意味わかんな〜い!」


 マリアさんの言うことは、実はちょっと気になったけど、違うと思うんだ。

 前世の異世界転生ものの王道パターンの一つに、自分がやり込んでいたり、多少なりとも関わったゲームの世界に転生する、というものがあった。

 でも、僕は前世では、そんなにゲームで遊んだりしていない。

 普段、スマホのカジュアルなゲームをするのがせいぜいで、RPGなんて超有名なゲームを数本遊んだことがあるっていう位だ。

 少なくても、僕が遊んだゲームの中には、今の世界に関係しそうなものは無かったと言い切れる。


 皆、色々と話し出す中で、ガイが落ち着いた声で発言した。


「……まあ、あまり気にしなくていいんじゃねーか? ここがヒロの前世でいうRPGの世界であろうと無かろうと、俺達のやることは変わんねーしな」


 ガイさんは豪快だ…… でも、確かにその通りだ。


「——ええ、ガイの言う通りですね。ただ、ステータスの知識があるヒロさんに聞いておきたいことがあります…… ガイ、あなたのステータスをヒロさん、セディアさんに教えても良いですか?」

「ああ、別に構わねーぜ」

「ありがとう。それでは、ヒロさん、このステータスの感想…… 前世の知識から何かわかることがあったら、教えて下さい。ご存知だと思いますが、ガイは国内最強と言われる剣士ですよ」


 そして教えてくれたのは、

 

 戦士ガイ

 LV  94

 HP  912

 MP  226

 STR 96

 DEF 92

 AGI 64

 DEX 93

 INT 43

 RES 71


 ガイさんは国内最強の戦士、ということは、この世界でも最強クラスなんだと思う。

 それを考えると……


「——RPGのステータスには上限があって、どんなに頑張って成長させても絶対に越えられない限界があります。ガイさんは戦士として最強クラスのステータスのはずなので、この世界のHP、MPの上限は、多分999なんだと思います。LVとか、他のステータスの上限は99かな……」


 僕の答えを聞いて、エリナは大きく頷いた。


「ヒロさん、ありがとうございます。私も、光をもつ冒険者を探して『鑑定眼チェック』を使う中で、薄々感じてました。やはり、そうなのですね……」


 そして、エリナは皆に向かって発言する。


「ガイ、テディのLVは90を超えています。私も、自分のステータスは見れませんが、同じ位だと思ってます。マリアは成長の余地がありますが、回復役としての能力は冒険者でも随一でしょう。そして今のヒロさんのお話…… 私も以前から感じてましたが、99が上限だとすると、攻撃役はこれ以上の多くの成長—— ステータスのアップは期待できません」


 テディも、少し考えながら話し出す。


「ということは、七魔人は普通に強くなって勝つなんて、初めから無理ってことか。魔物なら大人数で討伐するとかやりようはあるけど、七魔人は普通の冒険者では近づけないし……」

「だから、ヒロ君が来てくれたのかしら…… やっぱり、ヒロ君は神様に導かれたのかな……」

「ええ、セディアさん、私も本当にそう思います。——そろそろお昼にしましょうか。そして、その後はいよいよ、ヒロさんのスキルを検証していきましょう」

「は〜い、アタシご飯作りま〜す」

「あ、マリア、私も手伝うわ」


 ここで一旦、話は中断となった。



 僕は、今の話で、テディの言葉が気になっていた。


「七魔人は普通に強くなって勝つなんて、初めから無理」


 僕の能力スキルがなかったら『真紅の秘水』を集めて戦う必要があるんだろうけど、世界各国が厳重に管理してるっていうし、きっと集められないんだと思う。

 そして、七魔人は基本的にダンジョンから出てこない。影響力が大きくなっているとはいえ、ダンジョンからより遠くに離れれば問題無いし、真打の勇者が顕現するまで戦闘を回避することは可能だ。


 もしゲームのように考えると、この世界は、まだ七魔人と本格的に戦うイベントが始まってない、ってことはないだろうか。

 『怠惰のリート』は辛うじて倒せたけど、そこで詰んでしまったので、勇者の顕現を待つ—— それが正規ルートだったりしないだろうか?

 それを、僕という転生者のイレギュラーな力、ゲームでいう『バグ』とか『チート』に近い行為で倒そうとしている。

 そして、ゲームでそういう行為をして無理やりイベントを進行すると、大抵はどこかでストーリーやイベント処理が破綻して進行不能に陥るんだ。

 ——この世界で、僕達がしようとしていることは、大丈夫なんだろうか……

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