第14話 思い出した理由

 負けた夜。

 宿舎の天井を、俺は見ていた。


 ――捕手依存。


 その言葉が、

頭から離れない。


 前の人生でも、

同じことを言われた。


 プロテスト。

 最終評価。


 「面白いが、

 成立条件が厳しすぎる」


 ――落とされた。


 そこで、人生は終わった。


 だが、

終わらなかった。


 なぜ、俺は

もう一度、野球をやっている?


 理由が、

ようやく繋がった。


 未完成だったからだ。


 布団を跳ね起きる。


 スマホも、

ノートもない。


 だが、

頭の中にはある。


 前世で、

最後まで辿り着けなかった理論。


 ナックルは、

“投げる球”じゃない。


 「作る球」だ。


 回転ゼロを狙うから、

不安定になる。


 だが――

回転を、一方向だけ与える。


 縫い目の片側に、

指圧を集中させる。


 完全な無回転ではなく、

超低回転・準規則回転。


 捕手がいなくても、

“落ちる方向”が一定になる。


 ――捕れる。


 早乙女がいなくても。


 翌朝。

 誰もいないグラウンド。


 ボールを握る。


 縫い目。

 位置。

 指圧。


 前世で、

失敗し続けた感覚。


 だが今は――


 握力がある。


 指が、負けない。


 一球目。


 ボールは、

ゆっくり沈んだ。


 二球目。


 同じ。


 三球目。


 ――再現した。


 胸が、震えた。


 「……やっとだ」


 捕手が、

いなくても。


 成立する。


 朝日が、

グラウンドを照らす。


 俺は、

もう一度マウンドに立つ。


 前世では、

辿り着けなかった場所へ。


 今度こそ。

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