第3話 資金調達

 三上は、まず活動資金をためる必要があると思った。


 異世界で何かをするにしても、準備がいる。移動。物資。時間。どれも無料ではない。現実の生活を維持したまま動くなら、余裕が必要だった。


 そのために、能力を使えないか考えた。


 考えているとき、窓の外を猫が横切った。

 毛並みがよく、動きも軽い。


 試しに、鑑定を使った。


 視界に浮かんだ情報は、拍子抜けするほど簡単だった。


 ――調子:優良。


 とても良い、という意味らしい。


 三上は、しばらくその文字を眺めてから、パソコンを開いた。


 思いついたことがある。


 競馬だ。


 翌日の出走表を開き、過去のタイムを打ち込んでいく。

 派手な分析はしない。ただ、ばらつきを見る。


 調子の良し悪しが分かるなら、どの程度で走るかの幅も、ある程度絞れるはずだった。

 期待値がプラスになるかどうか。それだけを考える。


 翌日、競馬場に行った。


 馬を見る。

 走りを見る前に、状態を見る。


 すべてが当たるわけじゃない。

 それでも、外れる理由が分かる分、気持ちは冷めていた。


 結果、全体ではプラスになった。


 帰り道、三上はそのままパチンコ屋に入った。


 騒音と光の中で、台を一台ずつ鑑定する。

 設定と、出玉の傾向が見えた。


 一番条件のいい台に座る。

 無理はしない。欲張らない。


 ある程度出たところで、席を立った。


 同じ店に長くいれば、目立つ。

 同じことは続けない方がいい。


 家に戻るころには、まとまった額の金が手元に残っていた。

 月の給料を軽く超えている。


 それなのに、体は重かった。


 疲労だけじゃない。

 何かが、少しずつ削れている感じがした。


 努力していない。

 工夫もしていない。

 ただ、見えているものを使っただけだ。


 三上は、自分に言い聞かせた。


 これは準備だ。

 資金をためるための辛抱だ。


 そう思わなければ、続けられない気がした。


 だが、その言葉は、胸の奥まで届いていなかった。

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