#3

「まさじぃ、元気かなぁ」


尻尾がピンと立ち、髭も10時10分を指すように広がっている。


しなやかにジャンプし、塀の上から青い瓦屋根の家を目指す。


「おっ、あった。変わってないな。」


まさじぃの家が確認できた。


まさじぃの口癖は

『よー、シロ。ちゃんと飯、食ってるか。』


同じかな、と思いながら、庭にフワリと着地した。


「ニャオーン、ニャオーン。」

ぷりてぃさMAXで呼びかけると、ガタガタと縁側の引き戸が開いた。


背中から尻尾までの毛が一気に逆立ち、

夏毛に変わって短くなった毛も、一気に毛根から立ち上がる。


そこには、あの癌の匂いを身体中から放っているまさじぃの姿があった……。


(ま、まさじぃ…。)


「猫か……。

……白猫……。」


目の焦点が合わず、光も反射しないような目で、ぼんやりとこちらを見ている。


「……尻尾が黒いな。

お前、白か?」


「ニャー。」

まさじぃの雰囲気に呑まれ、小さな声で返事をする。


「そうか。良かった。会いに来てくれたのか……お前は……。」


まるで別の何かを待っていたかのように、まさじぃは言う。

そういえば。

家の中は誰も住んでいないかのように、光も音も匂いもない。


前は、ちよばぁとその息子夫婦、それに吾輩を追いかけ回していた坊主がいたはずだ。


暗い中に視線を向けると、仏壇に、ちよばぁの写真が額に入れて置いてある。


「シロ、お前は元気だったか?

俺は今、この家で一人、バァさんの迎えを待ってるんだ。」


(…そうか。ちよばぁはもう…。)


湿った風が、線香の匂いを運んでくる。


(でも、なぜ一人なんだ。

こんな体調のまさじぃが…。)


家全体を見回す。

今まで気づかなかったが、ユラユラと揺れる黒い気が立ち上っている。低級霊が集まっているようだ。


(何があった?

何がこんなに呼び寄せている?)


まさじぃが続けて話す。


「シロ、また毎日顔を見せてくれるか?」


「ニャー」


(毎日顔を見せるどころか、ここにいる。

このユラユラの正体、必ず解き明かす。

猫又の名にかけて!)


…不謹慎だった。


まさじぃの家の縁側はいい。

風もよく通り、紅葉の葉が適度に日陰を作っている。

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