夜を揺らす〜鎌倉四姉妹家族異能編〜
真夜
第1話 苔むす町
北鎌倉駅を少し歩くと扇ヶ谷と山之内の間を入る道がある。何度来ても通り過ぎてしまうくらいのなんの変哲もない生活道路を入っていくとお寺の脇を抜けるような細い道になっていて少しだけ空気の濃度が変わる場所がある。迷い込んだ観光客が素敵だったと陽気に友人を連れて再び戻ってきても不思議と見当たらない。2度も3度も行き来して、首をひねって立ち止まり、そして諦める。いい頃合いにヴァーヴコーヒーロースターズが見つかってやれやれと笑いながら外の席で珈琲をいただいている。
「おかしいなあ、前回来た時とてもいい雰囲気の路地があってね」
少し神妙になった男性をみて、連れの女性は目を丸くする。
「大丈夫?鎌倉タヌキに化かされたとか?」少し茶化して場を和ませようとしたが、
「いやあ。。。古ぼけた素敵なお寺に苔むした長い石積みの塀、その先に実に神秘的な切通があってさ」頭をかきながら、表情が曇っていく。
「こんなにはっきりと憶えてるのになんで辿りつけないんだろう」
「やだ、深刻にならないでよ、そんときもあるわよ、大丈夫大丈夫、それも鎌倉散歩の楽しみよ。」女性は、たのしい鎌倉散歩がつまらない思い出にならないように珈琲を飲み干した。煎りたての爽やかでまっすぐなアイス珈琲は意外なほどするすると喉を通り越してカランと氷の音がした。
その様子を珈琲の順番待ちをしながら、横目でちらりとうかがった地元らしい雰囲気のただよう若い男性が
「幸せな人生ってことさ」
とボソリと呟いた。
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