第2話

 翌朝起きるとステータス画面のスキルの欄に〈召喚術レベル一〉と〈錬金術レベル一〉の文字がしっかりと載っていた。理由はわからないがともかくスキルのレベルを上げていけばいいのだろうと納得することにした。

 早速どれかスキルを試してみることにする。手始めにゴーレムの召喚をやってみようと思い、家の外に出て広い場所までやってきた。そしてロイは手を前に出して

「ゴーレム召喚!」

 しかし何も起こらなかった……。

 たしかに〈召喚術レベル一〉になっていて、ゴーレムはレベル一でも召喚できるはずなのだが、これは一体どういうことなのだろうか。

 ロイが「う~ん」と唸っていると母のマーサが家から出てきて。

「ロイ、朝から何やってるの? ものすごい大声がするからビックリしちゃったわ」

「え、あ、いやゴーレムの召喚を……」

「ああ、昨日渡した本のやつを試してみたのね。気持ちはわかるけど今のあなたじゃ魔力が足りなくて召喚できないわよ。魔石があればできるかもしれないけど……そうだ。たしか押入れのところにあったはずだわ。ちょっと待ってなさい」

 そう言って召喚用の魔石を取りに行ってくれた。

「はい、これよ。あ、でもそんなすぐにできるものじゃないと思うわよ」

「わかってるよ、ありがとう母さん」

 気を取り直してやってみることにする。魔石を手にもって。

「ゴーレム召喚!」

 すると魔石が光って、その光からゴーレムの腕が出てくる。しかしそのまま空中からドスンと地面に落ちてしまう。

「あら……」

「ま、まあ最初はこんなものでしょ。というか最初でいきなり腕だけでも召喚できたならすごいわよ」

「あーはっはっはー、あんたってほんと面白いわねえ」

 騒がしくしていたので気になって見に来ていたクレア姉さんが腹を抱えて笑っている。それに続いて父さんもやって来た。

「おお、ちょうど庭に凹んでいるところがあったから助かったよ」と言う始末。

 ちなみに召喚したゴーレムはすぐに消えちゃうよ、父さん。初召喚は苦い思い出となるのであった。

 初召喚はうまくいかなかったが、あきらめたわけではない。ひとまずは魔力量を増やすために母さんに魔法を教えてもらうことと、錬金術のための素材を山や森に取りに行きたいのだが、山や森には魔物が出ることがあるので一人で戦える力が必要になる。というわけで父さんにモンクの修行をつけてもらうことになった。こうやって考えていくとあまりにも贅沢な環境なのだなとつくづく思う。

 こうしてマルチジョブの本格的な修行が始まるのであった。

『スキル〈格闘術レベル二〉〈治癒魔法レベル一〉〈支援魔法レベル一〉を習得しました』


 修行に明け暮れていてゲーデルのところに行くのをすっかり忘れるところだった。バハムからリベンダーまではラモーネまでの距離より近いので歩いて行くことにした。父さんにモンクの修行をつけてもらっていたせいか今までよりも足取りが軽い。これも修行の成果だろうか。体力が付いてきたのは良いことだと思う。

 リベンダーまでの道のりはシンプルでバハムに広がっている農業地帯を抜けていけばいいだけだ。普段錬金素材を取りに行っている場所とは逆方向で魔物が出ることはほとんどない安全な地域だ。村の近くに綺麗な川が流れていて、そこで魚を釣ったり、木の実の採取、野生動物の狩り、牧畜などもやっていて、バハムの町ほどではないが小規模の農業もやっている。

 そろそろリベンダーの村が見えてくるころだ。

 村の入り口付近まで来たがゲーデルの姿はなかった。近くにいた村の人に聞いてみると

「ゲーデルなら村の隅にある掘っ立て小屋で作業をしているよ。まったくジョブ持ちだってのに金になる事を全くやりゃしねぇ。困ったもんだよ。あ、小屋にいなかったら遺跡の方にいるよ」

 そう言って遺跡までの道のりを教えてくれた。遺跡とは何だと思ったがひとまずゲーデルが使っている小屋へ向かうことにした。

 小屋をノックすると「はーい」と言ってゲーデルが出迎えてくれた。

「やあ、ロイじゃないか。来てくれたんだね。嬉しいよ、さぁ中へ入って」

「……お邪魔します」

 入るとガラクタなのか何なのかわからないものが部屋中に広がっていた。ゲーデル自身は何やら特殊な眼鏡のようなものを取り付けていてロイと会ったときに外して、いつもの眼鏡に取りかえていた。

「ごめん、作業中だったかな?」

「いや、大丈夫さ。それより何か用かい?」

「前に鑑定の日以来会っていなかったと思って様子を見に来ただけさ。用事は特にないよ」

「そうだ、これ見てくれよ」

 そう言って手のひらくらいの大きさのものに左右に二つの穴が開いていて網状のもので穴が覆われていた。

「これは何だい?」

「通信機だよ」

「通信機?」

「そう、僕が作ったんだ。まだ実用レベルには至ってはいないんだけどね。動力に魔石を使うんだけどすぐに魔力がなくなってしまうんだよね。あ、あともう一つ見てもらいたいものがあったんだ。この銃だよ」

「銃?」またしてもオウム返しで聞き返してしまう。

「これも同じように魔石を取り付けえて使用するものなんだけど、これは結構危険なもので、ここの筒状のところから魔法の玉が発射される仕組みになっているんだ」

「でもよくこんなものを自分で作れるね」

「……これはみんなには秘密なんだけど、この近くにある遺跡は入ってすぐに開かない扉があるだけで行き止まりになっていると言われていたんだけど、実は隠し通路があってその中に入っていったら古代文字の文書がたくさんあったんだ。これはその中の一部さ。まあでも機工士の特性があったから作れたというのももちろんあるんだけど」

「その銃はもう撃ってみたことはあるのかい?」

「ああ、でも通信機と同じでうまくはいっていない。威力が低いんだ」

「なるほど、もしかしたら魔石の質が影響しているのかもしれない。この魔石を使ってみてよ」

 渡した魔石はゲーデルが使っていた者よりも純度が高いものだ。だからある程度の威力が見込めるんじゃないだろうか。

 誰かに当たってしまわないように小屋の外に出て空に向かって打つ。

「いくぞ」

 空に放たれた銃の玉はドゴーンという大きな音と共に発射された。それは予想していたよりはるかに大きく強力なものだった。おもわず村にいた人たちが驚いてこちらに集まってくるほどだ。それほど音が大きく、すごい威力だった。ゲーデルと無表情に顔を見合わせて二人して大笑いした。村の人たちはこいつらは気が狂ってしまったと思ったんじゃないだろうか。

 その後いろいろと二人で話し合った。ゲーデルは先の魔王軍との戦いで両親を失っていた。そのため今は両親にお世話になっていたという知人に引き取られ、この村で暮らしはじめたのだそうだ。最近は発明に没頭しすぎているせいで金銭的に余裕がなくなってきているということも聞いた。それからもう一つ遺跡の設計図にあった球体のようなものをつくったのだが用途がまったくわからないそうだ。これも高純度の魔石をためしてみるといいかもしれないという話になった。だから今度魔石取り行こう、と誘うことにした。ギルドの依頼と合わせれば効率よく稼ぐこともできる。ジョブ適正の鑑定があった日に冒険者ギルドカード(冒険者カードでもギルドカードどちらでも通じるが冒険者カードの方が伝わりやすい)も一緒に作っているのでギルドの依頼はいつでも受けられる。ロイはなんだかんだと依頼を受けていたのでⅮランクに上がっているが、ゲーデルはまだEランクのままだったのだがパーティーを組んだ場合受けれる依頼はDランクまで受けることができる。ちなみに冒険者のランクはE~SまであってSが一番上のランクになる。魔石は魔物の胸の中辺りにあるものなので魔物を倒さなければ手に入らない。純度の高い魔石がほしければ強い魔物を倒さなければいけないので戦闘の強さが重要になってくる。

 二人それぞれのステータスを確認すると。

 ロイは〈格闘術レベル三〉〈召喚術レベル二〉〈治癒魔法レベル二〉〈支援魔法レベル二〉〈錬金術レベル二〉を持っていて、ゲーデルは〈機工術レベル二〉〈射撃術レベル二〉を持っていることがわかった。まだまだ未熟だが経験値を稼いでいけばどんどん強くなっていけるだろう。

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