始まりのロードガルド~世界樹と魔界樹~
角ころ
第1話
「ガーディアンゴーレムよ、我ら二人を守れ!」
襲い掛かる巨大な魔物の攻撃をガーディアンゴーレムの盾が防ぐ。その攻撃で地面がえぐれ、土煙が舞い上がる。目の前に青黒い鱗に覆われた大きな尻尾がゆらゆらと動いているのが見える。この攻撃を食らっていたらひとたまりもなかっただろう。
「毒のブレスが来るぞ、気をつけろ!」
魔物の口元が不気味に膨らみ、緑色の霧が渦を巻いて吐き出される。
急いで逃げる二人。
「ゲホッゲホッ、少し吸っちまった……」
「待ってろ、この者の毒を癒したまえ〈ポイズンキュア〉」
毒を吸って青白くなっていた顔色が回復して元に戻っていく。
「助かったよ」
そうこうしている間にも魔物の攻撃の手が緩まることはないがガーディアンゴーレムが守ってくれている。
「このままじゃ防戦一方だ」
「よし攻勢に出るぞ! 我らに速く動ける力を〈ヘイスト〉」
二人の動きが加速して、うまく魔物の背後に回り込むことができた。しかしその魔物はすぐにぐるりと体の向きを変えて、また口元が膨らみ毒をため込んでいるのが見える。
「おい、また毒のブレスを溜めているぞ!」
すぐさまゴーレムの腕を召喚し、攻撃に転じる。肘の辺りにでた魔法陣からゴーレムの腕が現れて腕と一体となる。
「させるかよー、〈ゴーレムパンチ〉だー!」
轟音とともに魔物の顔面に強烈な一打を浴びせる。鱗が砕け、魔物はよろめいてズダンと地面に崩れ落ちる。
「今だ、最大火力で撃てー!」
改良した大型の銃に込められた特大の魔石によって、とてつもない破壊の閃光が放たれる。爆音と魔物の苦悶の咆哮が洞窟を満たす。
魔物は地に伏し、洞窟に静寂が戻る。
二人は肩で息をしながら顔を見合わせる。
「……やったな」
「うん、俺たち、強くなったな」
冒険は、まだ始まったばかりだ――
ロードガルド大陸は生命が生まれて始めてからずっと平和な時間が続いていた。そのことが当たり前であるかのように。
魔王オスヴァルトが現れるまでは――。
オスヴァルトは突如現れ、近くの村々を焼き尽くしていった。
しかし、そこへ勇者パーティーが現れて激闘の末、魔王オスヴァルトを倒すことに成功する。
そしてまたロードガルドに平和が訪れた。
だが人々はまだ知る由もなかった。この地に産み落とされた宿命の子と共に、再び恐ろしい災厄が忍び寄っていることに。
ここはロードガルド大陸のレミオン王国。人口二万人ほどで都市やその他の街などは発展して栄えているが、それ以外の場所は農業を主体としている。
魔王を倒した元勇者パーティーの冒険者同士の夫婦の間に子供が生まれた。父は身体強化を得意として接近戦で戦うことが多いモンクのランス。母は治癒と支援を得意とする魔法使いのマーサだ。その子は二人の間の子供の次男として生まれた。正式な名前はデプロイと言い、ロイという愛称で呼ばれている。両親は二人とも今は半分隠居生活のようなもので主に農業と狩りを仕事していて、たまに現れる魔物の討伐などもしている。討伐した魔物は近くの冒険者ギルドで討伐報酬と魔物の買い取りもしてくれるそうだ。魔物の種類によってはかなりの高額で買い取ってくれる。とはいっても元勇者パーティーなので金銭目的というよりも地域の安全を考えての行動だ。そのせいもあってランスとマーサに対する近隣住民の信頼は厚い。よく畑で採れた野菜を家まで持ってきてくれこともある。もらい過ぎて食べれないときは飼っている馬の餌にしている。馬は近くの冒険者ギルドがあるラモーネという街までの移動手段としている。歩いていけない距離ではないが買い物をするときは馬がいた方が便利だ。
月日がたちロイは十五歳になった。いよいよジョブ適正の鑑定をする年齢になったのだ。ジョブ適正とはその人間がもっている素質を見るもので、何のジョブスキルを持つことができるのか見てもらうのだ。鑑定場所はラモーネの街にある冒険者ギルドのすぐ横に併設されている専用の施設で特殊な水晶の魔道具によって行われる。ちなみにロイには兄姉がいるのだが、今は独り立ちしてこの街にはいない兄のアムルはモンク、姉のクレアは魔法使いのジョブ持ちで、順当すぎる鑑定結果だったそうだ。そうなってくるとロイはモンクになるのではないかと町の中で噂になっていた。このように一般的には子は親の特性を一つ受け継ぐのだが、ロイの場合はそうはならなかった。
「鑑定結果はモンク」
鑑定官がそう言ったところで歓声があがった。しかし続けて、
「魔法使い、召喚士、錬金術師と出ました」
鑑定官がここまで言ったところで歓声は静まり、小声で何かぶつぶつを言い始めている。
「マルチジョブは器用貧乏だからなぁ」
とある人が言った声が聞こえてきた。つまりはハズレだったということだろうか。十五歳という年齢もあってかその言葉に少なからずショックを受けた。なんだよ、ハズレなのかよと。いろいろできていいんじゃないのかよ。そう思いながらも、ひとまず今回の鑑定を受け入れることしかできなかった。しかし他の鑑定を受けにきている人たちの声を聴いていると、どうやら特性を持っている者自体の絶対数が少ないようで、百人に一人いればいいほうなのだという。今回の鑑定でもジョブ適正持ちはロイともう一人だけだった。そのもう一人は機工士というジョブの適正らしい。
ジョブ適正持ちになったことはギルドを通して届け出をしなければならないのと、鑑定結果が出ただけではジョブを使うことはできないので開放の儀を受けなければならないが、それほど時間がかかるものでもなくすんなりと終えることができた。
「ねえ、君ロイくんでしょ?」
ふいに声をかけられて少し驚く。
「ああ、そうだけど」
「僕はリベンダー村に住んでるゲーデル。今回の鑑定で機工士の適正判定が出たんだ。同じジョブ持ち同士よろしくね」
「うん、よろしく」
ゲーデルは短めの黒髪で眼鏡をかけた少し小柄で明るそうな男の子だった。
「そうだ、よかったら今度うちの村に遊びにおいでよ、この街からそんなに遠くないからさ」
「わかった、そうさせてもらうよ」
ゲーデルはこちらに手を振りながら去っていった。
家に帰って家族に鑑定結果の報告をした。最初は少し気の毒そうな表情をしていたが、話をしていくと「まぁ、よかったじゃないか。いろいろできるんだし」と両親は言って和やかな雰囲気で結果報告は終わることになるはずだったのだが、
「器用貧乏おめでとう」
そう言ってきたのはクレア姉さんだ。クレア姉さんはロイの三つ年上で少し性格がゆがんでいるところがある。
「ま、私に恥をかかせないようにせいぜい頑張ることね」
そう言って自分の部屋へ向かっていった。あの性格で治癒魔法を担当していて凄腕の冒険者パーティーの一員というのだから不思議で仕方がない。母さんは優しい性格をしているのに誰に似たのやら。
「あ、あと父さん。このステータス画面っていうのは何のことかわかる?」
「ん、ステータスがめん? なんだそりゃ。おい何かロイがおかしくなっちまったぞ母さん」
「やめてあげてよ、ロイは一生懸命なんだから」
多分母さんもわからないようだった。見えているのは自分だけのようだし、変な奴だと思われたくないのでこのことを他の人に言うのはもう止めようと思った。
特性がわかったといってもまだまだ駆け出しなので修行をしていかなければいけない。モンクと魔法使いは両親に教えてもらえるのだが、召喚士と錬金術師に関しては教えれる人間がいない。
「そうだ、この本なんてどうかしら」
そういって本棚から召喚の書と錬金術の本を持ってきてくれた。
「この本は?」
「私がこっちに来るときに、親が持っていけって言って無理やり持たせてきたものなの――。でもこうやって自分の息子に使ってもらえる日がきたならよかったと思うわ」
「ありがとう。大事に使わせてもらうよ」
教わる人はいなかったが本があるだけでも全然違うのでこれはありがたかった。部屋に戻り早速読んでいくことにし、本のページをめくっていく。
最初に流し読みをして、それから気になったところをもう一度じっくり読みこんでいった。夢中になって読んでしまったせいか、気づけば夜になり、眠ってしまっていた。そして何やら妙なシステム音がするのが聞こえたのだった。
『スキル〈召喚術レベル一〉〈錬金術レベル一〉を習得しました』
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