山姥の騎士

@maru4

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 必ず、というわけではない。

ただ「それ」を見かける時、周囲の景色がセピア色に褪せて感じることが幾度もある。

もしそれがきっかけと呼べるならば、俺はその日運命を知ったのだろう。

 それは四月下旬のある敗走の放課後だった。

クラスカースト上位の一軍連中から見下され、恥ずかしい気持ちで正門を出た時、軽快なポップ音がポケットからあがる。

取り出した携帯端末に表示されていたのは、俺のバイト先たる古書店の爺ちゃん店長からの着信だった。


≪本日力仕事有り、救世主求む。出来ればネオくらい強いヤツで!≫


 だともう、ドラゴンボールのZ戦士とか、マーベルに登場する英雄たちのような実力が無いと無理だろうね。陰キャコミュ障の俺とは真逆の存在だ。

それはともかく、これは多分古本の買い取りをやったのだろう。それもそこそこの量。

買い取った古本は、状態別に分類し、悪いものは修繕作業によって再製本する必要も出てくるし、何より量が多いと運搬や陳列が相当しんどいので大変なのだ。

俺は足早に書店を目指して歩き出した。

「ん?」

背後から足音がした。走っている速さ。どんどん近づいて来て、すぐ背後に迫った時、俺は思わず振り返った。

足音の軽快さと息遣いから、正体は女性だと感じた。

振り向いた瞬間、俺の周囲の時間が止まったかのような錯覚を覚えた。

唯、流れているのは、肩甲骨近くまで伸ばした黒い髪。

白い肌、艶のある唇から覗く白い前歯。

そして、漆黒のような瞳と、自分の視線がかち合った。

動けなくなった。だからその走ってきた女の子とぶつかりそうになり、右に避けるべきか左に避けるべきか迷い、多々良を踏んだ。

「っ! あっ、すみません」

ふらつく俺の左を走り抜ける女の子に、咄嗟にかける。女の子も過ぎざまに、

「ごめんなさい」

と息を弾ませてそう返して来た。

唯、そのまま。

女の子は走り去り、俺は取り残された。風に乗って少し甘い匂いがそれを追いかけた。

うちの学校の制服。リボンの色から同学年、二年と分かった。というか、クラスは違うが見たことくらいはある。全校集会とか、学年行事とかで、チラッと、て程度だけど。

遠くからの、ぱっと見の感じだと暗めな雰囲気で、あんまり誰かと話してる様子とかも見たことなかったし、意識したこともなかったので分からなかった。初めて至近距離で見た。

直後、もう一度風が抜ける。目の前を、黒い影が筋のように走り過ぎるのが見えた。

「うわっ、え?」

影? 見間違い? それとも風で木の枝でも飛んでったのか? 過ぎ去る色々を見送るが、もう何もない。

学校の外壁の、もう曲がり角の向こうに全部消えてしまった。

……何だったんだろ。


 ――いや、何だったのか、俺は知っている──

 それを気付かないフリをしたい俺がいる。多分、きっと、俺には追いかけて振り祓えるような力が無いから。


 右のポケットがピンコン♪ ともう一度軽快なポップ音を鳴らした。端末を取り出すと店長からの着信だった。

≪なる早で来てぇん(ハート)≫

ハートてあなた。まあ……仕方ない。

(いや、本当は救われたと思っている)

俺は、バイト先に向けて歩き出した。

だけど俺は、歩きながら後悔もした。他人に嘘を吐くことは出来ても、自分に嘘は吐けない。

本当は分かっていた。

さっきの一瞬。視界はセピアに色褪せかけていた。あの女子生徒を追っていった黒い影は、見間違いなどではなく恐らく心霊の類。

でも確たる、個人の幽霊ではない。有象無象、魑魅魍魎。江戸時代に描かれた妖怪画、百鬼夜行なんかの端っこに出てくる、何だか分からない雑然とした小さな妖怪たちだ。

かつて、店長にお勧めされて陰陽師という漫画を読んでから、あの小さな有象無象を、雑鬼(ぞうき、あるいは、ざっきでも可)と呼ぶようになった。

雑鬼はもともと中国の魑魅魍魎、雑々しい亡霊を指す名称らしい。まさに、百鬼夜行の端っこそのものだ。触れれば、障る連中。

だから近づくのは恐ろしい。体調を崩したり、運悪く事故に見舞われたりする。

だから後悔した。さっきの子を放置したこと。あの子はもしかして、この後酷い目に逢うかもしれない。

頼む、何事も起こらないでくれ。今の俺にはそう願うしか出来なかった。


   プロローグ


 世界の日常に帳が落ちる。

奴らは毎夜、それを待ちわびる。遥か天より来たる闇の眷属は、この地の夜にその力を増す事を知るが故。

男は走った。闇の中に蠢く、眷属どもの懐の中へ。その懐は……ヒトの形をしていた。


 大いなる印が天に現れた。そこにはひとりの女がいて、太陽を着物として纏い、月を足場として踏みしめ、頭に十二星座の冠を被った。

 彼女は子を宿し、産みの苦しみにむせび泣いた。

 またひとつの印が出現した。そこには赤い龍がいた。七つの頭と、それぞれに十の角、そして冠を被った。

 その尾は天の星の三分の一を掃き寄せ、地上へ投げ落とした。赤き龍は、女の前に立ちはだかる。

 女が産んだ子は鉄の杖を持ち、いずれ国を治めるべき者となる。赤き龍はこれを食い殺そうとしていた。

 この赤き龍こそ、悪魔の頂点に位置する存在、サタンであり、その正体は年を経た巨大な蛇であった。

 天空では戦いが起き、ミカエルとその使いたちは、赤き龍を地上へ投げ落とした……。

 ――ヨハネ黙示録、十二章。


 口伝、伝承、そして文献。いにしえの時代、人間たちが伝えた神話の世界は、あるいは彼らが本当に見たものなのだろうかと、男は思う事があった。

何故なら目の前に立ちはだかる闇の眷属を見る時、かつて興味半分で読んだ聖書になぞらえてあるようだったから。

いや。だけではない。この前に見たのはまるで仏教の観音像だった。胴体には幾十の手を持ち、頭は四方に四つの顔を持っていた。

ただ、その手は黒い闇に染まり、触れるものをことごとく破壊し、すべての顔は負に満ちていた。そう、四苦――憎しみ、怒り、苦しみ、哀しみ。

そして今度見ているこれは、インドの神話に登場する神鳥の姿に似ていた。

ただし、漆黒の夜空に広げる翼は闇色。その姿は恐怖を煽った。闇の中に闇色が溶け込み、翼の大きさを錯覚させる。

光は無い。ただ、作りだすことは出来た。

「――――ッ!」

咆哮は獣の喉鳴りを伴い、おおよそ鳥類のそれではない。男は太刀を背後に構えた。巨鳥の翼が蠢動する。合わせるように旋回させた太刀の風が広がり、業火の竜巻を生み出した。

見えた一瞬の目測で、体調三メートル、翼を広げて約五メートルとあたりを付けた。次の一瞬は自問自答に使う。

いけるか?

答えは簡単だ。行くしかないのだから。敵は空を舞う。だがこの街のビル群が、足場になる。男は跳躍した。

 ……俺の考えた最強(笑)の活劇小説、No Load destiny、第二章より抜粋。


 幼い頃から悪夢をよく見た。特に多かったのは、追いかけられる夢。時には黒い手、ドラクエのマドハンドみたいな奴だったり、狼のような獣だったり、貞子のような幽霊や、体を欠損したテケテケや、ターミネーターかロボコップのようなサイボーグだったり。

捕まった瞬間目が覚めることもあれば、捕まって、凶悪な手段でぶち〇ろされた瞬間目が覚める場合もあった。どっちにしても恐怖をたんまりと味わわされてからの目覚めで、最悪だった。特に夏は汗だくで目覚めたりしてたし、なお最悪だった。

 けど、十三歳で厨二病を患ってから、悪夢をすり替える技術を身に付けたことで、悩みは解消された。

FFの英雄セフィロスとか、マトリックスの救世主ネオとか、ブレイドのブレイド様とか、俺の考える限りのかっこいい存在を模倣して、夢の世界で超絶バトルを展開すればワンチャン、と思った。

特に上記三作品から受けた影響はデカかった。脳内でイメージトレーニングして、俺の大好きな武器、太刀を振り回す練習をした。

 そしてその時は来た。またぞろやって来た悪夢の時。俺は練習に次ぐ練習の成果を存分に発揮した。過去一リアルな夢だったと思う。

夢なんて自分の脳内の処理で見ているものだと思っていたけど、厨二病、カルト系の都市伝説として、外部から何かの情報を脳が取得しているのか、逆に夢というブロードバンドに接続しているのかという話を信じたくなるほどリアルなものだった。

戦った敵は三メートルを超す巨大な猿のような化け物だった。太刀に種々の属性をエンチャントさせ、炎の竜巻を起こし、雷を放ち、氷の柱を降らせて戦った。

巨大猿は予想外の攻撃をいくつも仕掛けてきた。本当に夢か? これが自分の脳内の産物か? という、思いもよらない攻撃がいくつも飛んできた。

けど、それらをしのぎ切って、何とか勝った。

「もう少しだったのに」

そう言い残し、倒れた巨大猿は黒い霧のように散って消えた。

やれるんだ! そう思って目覚めた俺は、過去一清々しい朝を迎えた。

それからも、何度となく悪夢を見て、幾種族かの化け物からの襲撃を受けたが、だいたいを討伐、乃至撃退した。

勿論すべてがうまくいったわけじゃない。不意打ちを食らって大けがをした時もあったし、あまりにもトリッキーな敵に翻弄されて歯が立たないなんてこともあった。それでもめげずに挑戦を続けられたのは、そうするしか無かったし、何より成長を感じていたからだった。

しばらくして夢の世界で本当に負け知らずになった。現実世界じゃ冴えない中二病の、チー牛陰キャ野郎の俺でも、夢の中では自由自在に振舞えた。我ながら恥ずかしい話だが。だが、連中(悪夢たち)も、俺が煮ても焼いても食えないと思って、手を引いたのかもしれない。

まあ、今もたまーに悪夢は見るが、昔のような凶暴なのは来なくなったので尚更撃退は容易になった。

 そうしてほとんど悪夢を見なくなった頃、また一風変わった夢を見るようになった。


 それは、幼い頃の夢。実際にかつて体験した、五歳の頃の記憶だ。母親に連れられ、数週間滞在した祖母の家。

隣町の外れ、少し寂れた田舎の光景。近所の神社、公園、細い砂利道。

 当時、仲良くなった女の子がいた。

ハルナと名乗った、同い年の子。祖母宅に滞在していた間、ハルナとよく遊んだ。というか他に友達が出来なかった。後になってその理由に気が付いたのだが、子供の頃から俺には霊感があった。

というのも、俺の記憶では当時、ハルナとだけでなく、近所の子供たち三、四人で遊んだ思い出が残っているのだが……後で大人から言われて知ったのだが、俺含めて数人はいたはずの子供たちだが、そんな姿なんてどこにもなくて、俺はいつも、女の子(ハルナ)とふたりきりで遊んでいたそうなのだ。

つまり、そういうことだ。あの頃の周囲の取り巻き、友だちたちは、大人たちの目には映っていなかったらしいのだ。

最近、その頃の夢をよく見るのだ。

夢の中でやっぱり俺は女の子と、他に三、四人の子供たちと遊んでいる。近所の公園で砂遊びをしたり、川原でずぶ濡れになって水遊びをしたり、神社の裏から続く鬱蒼とした森──大人たちから危ないから絶対行くなと言われた場所──を冒険したり。

ハルナは可愛い女の子だった。笑顔になると、唇のすぐ近くにえくぼが出来るのだが、これが可愛かった。その笑顔を見るのが俺は好きだった。

俺はいつからか、その子のことを「ルナちゃん」と呼ぶようになり、周囲の友達もルナ、ルナと呼ぶようになった。

彼女の方からも、少し舌足らずに俺の名を、よーたくんと呼んでくれるのが嬉しかった。

 祖母宅から実家へ戻る最後の日、ハルナ……ルナちゃんは寂しそうに、だけど微笑んで別れを告げた。

「大人になったら会おうね」

俺はルナちゃんの小さな小指と指切りして別れた。

去り際、見送る少女の背後に、大きな真っ黒い影のようなものが見えた気がした。

驚いて振り向こうとして、いつもそこで目が覚める。そんな夢。

最後の黒い影は、現実の光景ではない。幼い夢の最後に、まるで悪夢が牙をむくように影が覆い、俺の意識を現実に引き戻すのだ。

あれが新手の夢魔なら、何とか引きはがして、倒して、幼いルナちゃんを守れないかな、と思うのだが、ヤツは狡猾でいつも一瞬姿を見せたところで俺は目覚めてしまう。

 そして、その日俺は最悪の目覚めを果たした。

頬杖が外れガクンとなり、ゴトンと鳴り……――教室の、上級者たちが失笑した……。


 嗚呼、青い空。白い雲。穏やかな昼下がり。

俺はひとり、今日も迫りくる「奴」と戦い、そして苦戦を強いられた。

奴は決まってその時間に襲いかかり、全てを奪い去ろうとする。

特に今日は、社会公民の、絵に描いたようないかにも優しそうな、実際優しいお爺さん先生の声が、まるで極楽へ誘う経文のような響きを伴っていた。

奴、そうすなわち、睡魔だ。

俺から意識も、成績も、地位も名誉も尊厳さえも奪っていこうとする。

悪夢には負けない自負はあるけど、現実世界でやってくる睡魔には勝てない、情けない自分である。

てか「魔」と付くのだから、これも悪魔か何かの怪異の仕業なのだろう。でなければ説明が付かないのだ。辻褄が合わないのだ。何故なら俺はこんなに頑張って授業を受けようとしているのだから。俺じゃない何らかの原因がないと説明が付かないのだ。

だと言うのに、朦朧とする意識から判断力が失われ、重たい目蓋がどん帳幕のように降りてくる。あたかも意識の終演とでも言うように。

恐らく勝負は一瞬だった。

そして、頬に杖として当てていた腕から、意識を失い幼い夢に落ちた俺の、その頭部がカクンとズレ落ちた。

ゴンと音が上がり、一瞬で意識は今に戻る。

クラスの半分が俺を見て失笑し……これにはさすがに眠気が消えた。

恥ずかしさに顔が熱くなり、俯いた。

勿論、みんなが俺を小馬鹿にした感情で笑った事は分かりきっている。俺は下の下だから。

スクールカースト最下位“ダリット”すなわち「壊されし民」の、さらに下。スラム街でも存在する小さな浮き島グループにも入れないひとりぼっち野郎だ。

別に卑下しているわけじゃない。何故ならもう卑下し尽くしたし、卑下することは良くないとある人物から言われているからだ。

今は影の中で、ひっそりと奴ら(睡魔)と戦いながら生きる、闇の眷属の、因子を感染させられたものの、成り損なった落ちこぼれのナンバリング無しなのだと認識しているのだから。

 チャイムが鳴ったのでトイレに立った。

教室を出ると数人の上位カースト者たちの笑いが上がった。

十中八九、いや、十中十俺のことだと思う。もう、プライドも何もあったものじゃない。

でもいいさ、もう諦めた。自分のスペックは自分が一番分かっているし、過大評価する気は無い。

ステータスオープンすると以下になる。

 名前:遠山洋太(とうやまようた)

 年齢:十六歳(今年で十七になる)

 所属:谷代田高校二年二組(カースト最下位)

 身長:一六七センチ (平均以下)

 体重:五十五キロ(ヒョロガリ)

 レベル:一(多分)

 属性:日陰者(通称陰キャ)

 保有スキル:無し(強いて言えば刀剣、また都市伝説・宇宙系に対する持論知識)

※強いて言わない方がいいなコレ

 その他備考:ステータス異常有り、厨二病、カテゴリ:カルト系、ステージ四、他一部スペック故障により、コミュニケーションに障害有り。

その他病歴などは無いものの、軟弱で、コミュ力もない、どうしようもない、ないない尽くしパッケージの男子高校生。

 クラスに、グループチャットが存在するらしいのだが当然除外対象。

さらに珍獣種対象にも指定された隠れオタク陰キャ野郎として認識されている、と思われる。

(直接聞いたことないし聞いても答えてくれるとも思わないしそもそも聞きたくないというか上層部ド陽キャ連盟に声をかけれるわけもない)


 ここで一度回想に入る。事の始まりは中学に遡る。

俺は隠れオタクだった。

ゲーム、好きです。アニメ、好きです。オカルト、大好きです(でも霊はだめだ。あんなもの存在しない)

みんなが大好きなFFセブンの、リメイクが発売される前から、インターナショナル版をプレイしていたレトロゲーマーだ。

そこで登場する、あの英雄が装備していた太刀、マサムネブレイドの美麗さに魅了された。

刀、カッコいい、カッコヨスギル。カッコヨ、スンギ! ってなったのだ。

以来刀剣の世界にハマり、刀剣沼へと沈んだ。

え? 乱舞? 勿論やったよ! 途中でちょっと好き路線が違うな、ってなってやめちゃったけど。

でも刀剣はやっぱり好きで、モンハンも勿論太刀装備で遊びまくったし鬼の武者が幻の魔と戦うゲームでもかなりの時間を溶かした。

もっというなら、やっぱ現実でも刀剣が見たくて近所の博物館とかで刀剣の展示がある時は欠かさず見学に行ったし、ある時は新幹線で地元を離れ、愛知県にある熱田神宮に出掛けたこともある。

熱田神宮は多くの刀が奉納される大きな神宮で、そこの宝物館に入場した時、ちょうど太郎太刀という三メートルもある大太刀が展示されているのを見て、その迫力の素晴らしさに妄想の世界に三十分ほどいざなわれ、その場で立ち尽くし時間を溶かしたのは良い思い出だ。

そんな俺はやがて、自分の知識を総動員して個人小説を作って密かに創作を楽しむようになった。そう、冒頭で紹介したのはその個人小説の一部だ。

 影に潜み、世界を裏側で守り、支えている戦闘集団の物語。

皆、一応に特徴的な武器、暗器を駆使し、未知の怪物たちと戦いを繰り広げる、そんな内容。当然、主人公は太刀使い。

戦鬼と敵に恐れられる凄腕の男。僕が考えた最強のダークナイトだ。ダークナイトという洋物のジョブなのに和物の太刀を使うという自分の好きな設定全部盛り込むからわけ分からんことになっている存在だ。でも俺はこれがいいのだから仕方ない。

まあ個人の創作なのでそこはどうでもいい。ただ厨房(中坊)の自分が面白い小説が書けるはずもないし、それ以前に行き当たりばったりで書いてたものだから、設定やストーリーが徐々に破綻し始めてしまった。

どうやって続きを書こうか悩み、とりあえず本物の作品、すなわち市販の小説を読んで参考にしようと思った。近所に書店がなく、いや厳密にはあったけど、カバーがかけられてほとんどの本が立ち読み出来ないような書店だったので、本屋を探して自転車で小旅行していたところ、祖母の住む隣町に小さな個人書店、兼古本屋があったので入ってみた。

古めかしい一件の小さな本屋さんで、経済的にも物理的にもよく潰れないなと思わせる様相だった。

この書店に奇抜な店主の爺ちゃんがいて、後に俺はこの人に救われ、このいにしえの本屋が現在の俺のバイト先となる。

が、今はとりあえず回想に戻って、この本屋であれこれ古本を立ち読みしていた時に見つけたのが、ドラクエのノベル、天空の花嫁だった。

「リュカ問題」でひと悶着あった作者の本だけど、俺はこの小説の美しい文章、リュカが冒険する世界の描写に飲み込まれた。

なんて綺麗な世界だろう。それを想起させる繊細ながらも力強い描写。そしてなんて壮絶な物語だろう。

父を失い奴隷となった幼い子供の主人公は、それでも逆境を乗り越え、迫りくる試練に立ち向かう。

そんな、本の中の世界に引きずり込まれてしまった。

そこから、俺はすっかり小説を読む側に回ってしまい、読書が楽しくて仕方なくなっていた。

好き過ぎて学校にも持っていって、こっそり読むくらいの読書好きにはなっていた。

 そして、俺の運命を決める事件が起こる。

ある時、ライトノベルの前身、ジュニア小説とかいわれていた若者向けの小説が流行っていた時代かな? の、古い作品を俺は読んでいた。

内容は、コナン君の少年探偵団みたいな子供たちが主人公の物語だ。挿し絵がふんだんに使われたもので、その挿し絵もちょっとクセツヨな感じ。

その本を読んでいるのを、当時中学でのカースト上位者に見つかってしまった。

瞬でクラス中に知れ渡り、俺はオタクオタクした痛い奴だというレッテルを張られてしまった。

そして、伝説へ。

て感じで、伝説とは名ばかりの地獄の日々が始まった。


 高校に進学しても、同じ中学出身者が何人かいたため、俺の噂は高校でも拡散されてしまったらしく、結局今もポジションは変わらない。

むしろ中学時代よりもみんなの携帯所持率が高いため、俺のようなアウトローに対する差別はなお顕著化している模様。

いや、違うな。俺は俺で、全うに生きてるつもりなんだ。カースト上位者たちが、俺をアウトロー指定しているだけだ。


 長くなりましたが、これが大まかに開示するステータスとなる。

午後のあと一限。睡魔に惨敗して恥ずかしい失態を犯してしまった俺は、とにかく最後の授業を受け、さっさとバイトに行こうと思って終業と同時に学校を出るのだが……。

先の通りで、謎の女子生徒とぶつかりそうになり、そして今なお見えてしまう心霊をまたぞろ見てしまう。

運命は回り出す。この邂逅を待っていたかのように。

 この物語は、そんな俺にまつわるお話、というよりは、あるひとりの女の子にまつわるお話となる。

そう、幼き日に遊んだ、あの、ルナちゃんだ。

今さらだけど、俺はあの、記憶の中の儚げな女の子に恋をしていた。

そしてあの頃の俺は、やっぱり否定のしようもなく霊が見えていたし、なんなら一緒にみんなで遊んでた。

きっとだから、ルナちゃんにも霊感があった、ってことになるだろう。

 そして今。回り始めた高校二年の春。

俺のこの先の人生は怪奇に回帰し、飛んでもない日々となることを、この時の陰キャな俺は知るよしもない。


 ……とか言っといたら、この物語を目にとめて下さった方が、このプロローグ以降も読んでくれるかと思って、それっぽい言葉で締めくくっておく。

前振り詐欺、申し訳ありません。

それとプロローグの最後に。

この物語はフィクションです。実際の人物や団体とは無関係です。

って明記しておかないと、御覧の通りで色んな方々の名前や宗教の話とかまで持ち出しているので、問題になりますので、ということで、はい、ええ、すみません。

後ろの方に、参考文献、その他引用など開示いたしますので、どうかご容赦ください。訴えないで下さい、本当すみません。


 あっ、それとこの話、後々けっこうエロくなるので、重ね重ね謝罪をしておきます。


 ――遠山洋太




引用、出展、参考文献等


マトリックス 監督:ラナ・ウォシャウスキー リリー・ウォシャウスキー 

ドラゴンボール 著者:鳥山明 集英社

マーベル・シネマティック・ユニバース

陰陽師 原作小説:夢枕あ獏 漫画:岡野玲子 

ヨハネ黙示録12章 新約聖書

仏教(観世音菩薩に関する記述の引用)

神鳥、他カーストに関する記述 インド神話(バラモン教、その他)

マドハンド ドラゴンクエスト 開発:スクウェア・エニックス

貞子(山村貞子) リング 著者:鈴木光司 角川書店 

映画ターミネーター 原作:ハーラン・エリスン

映画ロボコップ 映画監督:ポール・ヴァーホーヴェン

ファイナルファンタジーⅦ スクウェア・エニックス

ブレイド 原作:マーヴ・ウォルフマン ジーン・コーラン 映画監督:スティーヴン・ノリントン

刀剣乱舞 開発:CLARITY STUDIO

モンスターハンター 開発:株式会社カプコン 株式会社エイティング

鬼武者 開発:株式会社カプコン

熱田神宮 愛知県公式観光サイト https://aichinow.pref.aichi.jp/spots/detail/10/

小説ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁 著者:久美 沙織

名探偵コナン 著者:青山剛昌 小学館


この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

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