もう一度、君とあの日の先へ
華燕雀
第一章 別れと邂逅
第1話 決着、そして始まり
突然、人類の平和は壊された。
魔王の誕生による魔物の凶暴化、魔族の侵攻が人類を襲った。立ち向かった冒険者や兵士も4分の1以上が戦死し、人類の国々も疲弊し切っていた。
ある日、魔王の喉元まで迫っている2人の冒険者がいた。
2人は道中の魔物を軽々と倒し魔王と対面していた。
既に長い間戦い続けていた両者はボロボロになっていた。
「これで終わりだッ!!」
そんな雄叫びをあげながら魔王は大剣を振り上げた。
冒険者の男は直前の攻撃で足を怪我しており素早く動けなかった。男が死を覚悟した時、横からもう1人の女性が出てきて前に立ち塞がった。
「おい、セラ!!」
彼女は防御しきれずに大剣によって胸に傷を負いながらも魔王に傷をつけた。
健闘していた女性だったが遂に限界が来たのか剣圧に耐えきれず吹き飛ばされてしまった。
しかし魔王もまた限界が近かった。
男はその隙に刀を拾い壊れかけの足で魔王の懐に踏み込んだ。
反応が遅れた魔王も大剣を振ろうとしたが、男の方が速かった。MPもなく技も使えないただの斬撃だが、不思議と吸い込まれるように魔王の首を落とした。
ーーー
この日、3年にわたる魔王との戦いが終結した。その知らせで世界中は歓喜した。人間の世界に平和が訪れたのだ。
ーーー
〜そのとき魔王城にて〜
魔物の死骸や血痕だらけの城に1人のボロボロの青年の泣き声だけが響いていた。青年の側には腹部に大きな傷を負った女性が倒れていた。
「ごめん.....俺のせいで....っ」
悲しみと無力感でそんな言葉しか出なかった。
「そんなに....自分を......せ...めないで....」
彼女は声を震わせながらも笑顔繕って話した。
「この旅....は..辛かった...けど..君と...出会ってから...楽し...かったよ...これ...は..君...が...持ってて...」
そう言って彼女は自分の耳からイヤリングを外し青年に託した。
徐々に冷たくなっていく彼女の体を抱きしめながらルナリは泣き続けた。
ーーー
〜翌日〜
ルナリは魔王を討伐した勇者として王都のパーティーに招かれていた。
その顔には活力が感じられず、何処か遠くを見ているような目をしていた。
「「勇者さま、このあとお時間をいただけますか?」」
数人の貴族の令嬢が声をかけてきた。
「すまない、いまはそんな気分じゃないんだ...」
ルナリは半ば拒絶するかのように会場からでた。
街の広場で星を眺めながら呟いた
「もし、もしもう一度やり直せたら...」
そんなことを考えながらイヤリングを握りしめた。
そのイヤリングだけが今も彼女とルナリを繋いでいてくれているように感じた。静まりかえった街の中で孤独を噛み締めた。
ーーー
〜数日後〜
ルナリは聖教会の本堂に訪れていた。
数日の間、パレードや他国とのパーティに駆り出された疲れと彼女を失った虚無感でひどくやつれていた。
もともと聖教会の信徒ではないがいまは神にでも縋りたい気分だった。
その日の夜、ルナリは夢を見た。
「君は、もし機会があるならば人生をやり直したいと思うかい?」
終わりの見えない真っ白な空間の中で、背後から声がした。
「あぁ、できることならな」
ルナリはぶっきらぼうに答えた。
「ところでお前は誰なんだ?」
「ボクかい? ボクは女神とでも言っておこうかな」
振り返ると白と黄金で彩られたドレスを身に纏う少女?が立っていた。
「君、今日祈ってたでしょ? やり直させてくださいーって」
女神はニヤリと笑って言った。
「そんなに彼女のことが好きなんだね?」
「うるせぇ」
ルナリは顔が火照るのを誤魔化すように言った。
ルナリの目には少しずつ前のような光が戻っていた。
「いい表情になったね」
ルナリは自分が微笑んでいることに気づいた。
「やり直せるのか?」
「うん、君が望むならね」
ルナリは一呼吸おいて噛み締めるように言った。
「頼む」
「わかったよ、でもまた彼女と1から関係を築く必要があるよ?」
ルナリは力強く答えた。
「それでも、俺は行くよ」
微笑みながら女神は言った。
「それじゃあ、ここでお別れだね。今度はちゃんと救ってくるんだよ?」
「あぁ、行ってくる」
ルナリは決意を固め、彼女を救うための一歩を踏み出した。
ーーー
目が覚めると見覚えのある天井が目に入った。
「ここは...?」
少しのあいだ混乱したが、冒険者を始めたばかりの時に利用していた安宿だと気づく。
埃っぽいベッドの匂いや隙間風の多さ、なにもかもが懐かしくかんじた。
「ステータス」
カバンのなかから見つけたプレートに向かって唱えると、自分の能力が表示された。
------
名前: ルナリ
▼スキル
・刀心開放
・魔刀術
・炎魔法
・雷魔法
・????
*条件を満たしていないため表示できません
▼称号
・時を超えた者
・魔王の天敵
(女神の祝福)
------
身体は14歳の頃まで若返り、魔王を討伐した時のスキルが引き継がれていた。
「あいつのおかげか……」
そう呟いたとき親指を立てる女神が見えた気がした。
ふと頭に疑問が浮かんだ
(今日は何日だ?)
ルナリは部屋から出てロビーへ向かった。
「おはようございます!!」
受付の少女が元気に挨拶をしてきた。
「おはよう、すまないが今日は何日だ?」
「えーっと、創造暦946年3月24日ですよ」
少女はにこやかに教えてくれた。
(よかった、彼女と会うまでまだ1ヶ月程ある)
外に出ると朝早くなのに祭りのように賑わっていた。
「とりあえず冒険者ギルドに向かうか」
街の中でも一際目を引く石造りの大きな建物、
冒険者ギルド/シルヴァント支部のに向かった。
中に入り空いている受付嬢のところで依頼を探す。
「ルナリさんのランクですとこの辺の依頼ですかね」
受付嬢はそう言っていくつかの依頼を見せてきた。
・薬草の納品
・ホーンラビットの討伐
・ゴブリンの巣の偵察
「じゃあこれで頼む」
そう言ってホーンラビットの討伐を選んだ。
戦闘経験とスキルは残っているからもっと高ランクのを受けてもよかったのだが、身体能力は14歳に戻っているので少しずつ慣らしていこうと思う。
依頼を受けて外に出ようと扉に向かうと赤髪の軽鎧をきた少女とすれ違った。
少女を見た瞬間、ルナリの胸は締め付けられるような感覚に襲われた。
「き、きみは...」
そう、今すれ違った少女が元の世界で犠牲になった彼のパートナー【セラフィナ・シルヴァード】だった。
ルナリは声をかけたくなるのを堪え涙を滲ませなが外に出た。
「よかった....生きてる...」
少し幼いとはいえ久しぶりに生きている彼女を見て自然に涙が溢れてきた。
「今度は必ず守り抜く」
改めて強く決意した瞬間だった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
⦅作者⦆
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もう一度、君とあの日の先へ 華燕雀 @megane_sjg
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