第4話:声が出ない子の交渉術

第3進路室のドアが、控えめに二回ノックされた。


「どうぞ」


桐生静が顔を上げると、廊下の光を背に細い影が立っていた。制服の袖が少し長い。視線だけが先に部屋を覗き、体が遅れて入ってくる。


相沢陸が机の端で書類を揃える手を止めた。


「……岸?」


岸ユウは頷いた。頷き方も小さい。入ってきたのに、ドアの近くから動かない。


静はペンを置き、椅子の背にもたれた。


「座る? 立ったままでもいい」


ユウは一歩だけ前に出て、椅子の背に手を置いた。けれど座らない。口元が動く気配もない。


陸が気まずそうに笑ってみせる。


「えっと、用事……」


ユウはポケットから折れた紙を出し、静の机にそっと置いた。角が湿っている。握りしめていた跡だ。


静は紙を広げた。罫線のノートの切れ端に、短い字。


『グループ むり』


陸が息を吸った。


「今日の? 英語の?」


ユウは頷く。


静は紙を指で押さえたまま、ユウの顔を見た。目が合うと、ユウは少しだけ視線を落とした。


「むり、って。何が」


ユウの喉が動いた。声は出ない。代わりに指が紙の端を探り、別の面をめくるみたいに裏返した。裏にも字がある。


『言うと 笑う』


陸の眉が寄る。


「誰が笑うんだよ」


ユウは肩をすくめた。否定でも肯定でもない。どっちでもいい、みたいな動き。


静は紙を戻し、机の引き出しからメモ帳を出した。ペンも一本、ユウの方へ滑らせる。


「書けるなら書いて。書けないなら、うなずきでいい。誰が、は特定しなくていい。今、困ってるのは何」


ユウはペンを握った。握り方が固い。書き出すまでに時間がかかる。


陸が口を挟みかけて、静に目で止められて黙った。


ユウのペン先がようやく動く。


『決めるの 速い』

『わからない まま』

『言うと 止まる』

『止まると 怒る』


静はメモ帳を手に取り、ゆっくり読んだ。


「決めるのが速い。わからないまま。言うと止まる。止まると怒る」


陸が唇を噛んだ。


「それ、ある……。『なんで今?』って空気になるやつ」


ユウは頷いた。頷き方が少しだけ大きくなった。


静は机の上の書類の山をちらりと見た。消去作業の写真が挟まったファイル、作業時間の記録、反省文の下書き。黒川教頭の声が、紙の端から滲むように蘇る。


二日以内。


遅刻集計、来週。


「岸。今のままだと、成績の評価で損する」


ユウの指がペンを強く握り直した。


静は続けた。


「グループワークの評価、発言点、態度点。全部、数字にされる。黙ってると『参加してない』にされる。担任は君の事情まで拾わない」


陸が小さく言った。


「でも、しゃべれないなら無理じゃん」


静は陸を見ないまま返す。


「無理なら、別の形に変える。現実は厳しい。だから道を増やす」


ユウが顔を上げた。目の奥が揺れたが、言葉は出ない。


静はメモ帳をユウの前に戻した。


「君が欲しいのは、グループで勝つこと? それとも、怒られないこと? それとも、置いていかれないこと?」


ユウは少し考え、三つ目に丸をつけた。小さな丸。


陸が机の端から身を乗り出す。


「置いてかれたくないなら、最初に『わかってない』って言えば……」


ユウは首を横に振った。速い。


静が陸の言葉を拾って、形を変える。


「『言う』が難しいなら、『渡す』にする。交渉術って、口だけじゃない」


ユウの眉がわずかに動いた。


静は引き出しから、付箋の束を出した。黄色とピンク。ペンも二本。


「これ、使う。ルールを作る」


陸が首を傾げる。


「ルール?」


静は付箋に短く書いた。


『確認』

『待って』

『賛成』

『反対』


そして、ユウの方へ向ける。


「しゃべらなくていい。これを見せる。机に置く。指で叩く。合図でいい」


ユウは付箋をじっと見た。手が伸びて、一枚を持ち上げる。『待って』。


静は言った。


「『待って』を出したら、止める。止めない奴が悪い。そこを交渉する」


陸が笑いかけたが、すぐ真顔に戻った。


「でもさ、止めない奴いるよ。『うるさい』とか言う」


静は即答した。


「いる。だから交渉は段取りが必要。勝手にやると潰される」


静は机の上に、もう一枚の紙を出した。学校のロゴ入りの用紙。進路室の相談記録のテンプレートだ。


「担任に正式に伝える。『岸は発言が難しいので、付箋で意思表示する。グループはそれを尊重する』って。私が文面を作る。担任に渡す」


陸が目を見開いた。


「え、先生が? 担任、嫌がらない?」


静は肩をすくめた。


「嫌がるかもしれない。『甘え』って言う人もいる。黒川教頭なんか、特にね」


その名前に、部屋の空気が少し硬くなる。陸が無意識に背筋を伸ばした。


静は淡々と続けた。


「でも、担任が嫌がっても、学校として合理性がある形にする。授業が止まらない。評価もつけやすい。クレームも減る。そういう言い方で通す」


ユウは『待って』の付箋を指で軽く叩いた。二回。叩き方が、ノックに似ていた。


静が頷く。


「それと、もう一つ。君は『止まると怒る』って書いた。怒られるのが怖いなら、先に謝るカードも作る」


陸が眉を上げる。


「謝るの? 悪くないのに」


静は陸を見た。


「悪くなくても、場を回すために先に頭を下げることはある。納得できない? それなら別の手もある」


陸は口を閉じた。ユウがペンを動かす。


『謝る いや』


静はその字を読んで、少しだけ口角を上げた。笑ったというより、選択肢が一つ潰れた確認。


「じゃあ謝らない形。『確認』を出す。『今の、これで合ってる?』ってカードにする。質問は責めじゃない。作業の確認」


静は新しい付箋に書き足した。


『今の 確認』

『どっち?』


ユウはそれを受け取った。指の力がさっきより柔らかい。


陸が小声で言う。


「それ、俺もほしい」


静は陸に一枚投げた。


「相沢はまず遅刻を減らせ。来週の集計、黒川が目を光らせてる」


陸が顔をしかめる。


「うわ、またそれ……」


静は机の端に置いた消去作業の記録ファイルを指で叩いた。


「これもそう。数字で詰めてくる相手には、数字と段取りで返す。情は通らない」


ユウがファイルに視線を落とした。スプレーの写真の端が見えている。色の残り。消し跡。


ユウはメモ帳に、ためらいながら書いた。


『天野 先輩?』


陸が反応する。


「知ってんの?」


ユウは頷いた。続けて書く。


『話す の うまい』

『先生 怒られない ように』


静はその字を読んだまま、しばらく黙った。ユウの「怒られないように」が、誰のことを指しているのか、曖昧なまま置かれている。


静が紙を戻す。


「天野は、話すのがうまい。だから助かる部分もある。けど、話すのがうまい人が、話せない人の代わりをし続けると、君はずっと置いてかれる」


ユウの指が付箋を握った。『待って』が少し折れた。


陸が言った。


「でも先輩みたいにできねえよ」


静は短く切った。


「なら、できる形にする。付箋。カード。文章。交渉は武器を選ぶだけ」


静は相談記録の紙に、日付と名前を書き入れた。岸ユウ。二年。授業参加の代替手段。


「岸。明日の英語、これを持っていけ。最初にグループの机の端に置く。置けなかったら?」


ユウがペンを走らせる。


『先生 に 渡す』


静は頷いた。


「いい。担任にも言う。授業担当にも言う。止めるのは私の仕事」


陸が少し焦った声を出す。


「先生、それやると、また教頭に……」


静は陸の言葉を途中で受け止めた。


「来る。たぶん。『特別扱いだ』って」


静は椅子から立ち、書類棚の上に置いた校内規程のファイルを引き寄せた。厚い。ページの角が擦れている。


「だから、規程と記録で押す。『合理的配慮』って言葉を出すと、相手は嫌な顔をする。でも、言葉があると守れる範囲が増える」


ユウが静の手元を見ている。規程の文字を追うように。


静はファイルを閉じた。


「ただし。万能じゃない。全員が従うとは限らない。グループの空気も変わらないかもしれない」


ユウの肩が少し落ちた。


静は続けた。


「それでも、君が『置いていかれない』ためにできることは増やせる。今日より一歩」


ユウは付箋を胸ポケットに入れた。丁寧に、折れないように。


陸が言った。


「岸、明日さ。俺、同じ班だったら、止めるから。『待って』出たら止める」


ユウは陸を見た。目線がすっと上がり、すっと戻る。頷きは一回。


静は机の上の電話に目をやった。内線表の端に「教頭室」の番号がある。紙の白さが妙に目につく。


静は相談記録をクリアファイルに挟み、ユウに渡した。


「これ、担任に渡す用。渡すのが無理なら、私が行く。どっち」


ユウはファイルを受け取り、メモ帳に書いた。


『一緒』


静は頷いた。


「放課後、ここに来い。担任呼ぶ。短く済ませる」


陸が腕時計を見る。


「放課後って、俺ら、天野先輩の消し作業も……」


静が即答する。


「その前に十分でいい。段取りは私が組む」


ユウが立ち上がった。椅子は引かない。音を立てないように、体だけ動かす。


ドアに手をかけたところで、ユウが振り返った。口が少し開く。声になりかけて、閉じる。


代わりに、胸ポケットを指で二回叩いた。付箋が入っている場所。


静はそれを見て、短く言った。


「明日、使え。使ったら、結果をここに持ってこい。良くても悪くても」


ユウは頷き、廊下へ出た。


ドアが静かに閉まると、陸が息を吐いた。


「先生さ……教頭に目つけられてんのに、また火種増やすの?」


静は机の上の写真ファイルを開き、消し跡の残る壁面の画像を一枚だけ見た。


「火種は勝手に増える。こっちが選べるのは、燃える場所だけ」


静は内線表の「教頭室」を見ないようにして、担任の番号に指を滑らせた。


「相沢。天野の反省文、今日中に清書できる?」


陸が顔をしかめながらも、ペンを取る。


「……やる。やるけどさ。岸の件、担任が『甘え』って言ったらどうすんの」


静は受話器を上げ、呼び出し音を聞きながら言った。


「そのときは、交渉する。岸に、置いていかれない手を増やすために」



放課後の廊下は、部活の声と掃除のバケツの音で満ちていた。


桐生静は職員室へ向かう途中で足を止めた。二年の教室の前。扉が半分開いている。


中から、短い怒鳴り声が飛んだ。


「だから、それだと間に合わねぇって!」

「は? こっちだって部活あるし!」

「先生に提出、今日だろ!」


静は扉の隙間から覗いた。


机を寄せた輪が一つ。真ん中にノートを開き、鉛筆を持っている岸ユウがいた。口は閉じたまま。視線だけが全員の顔を拾っていく。


黒板の隅に「総合:地域調べ 班発表 金曜」と書かれている。


班の男子が机を叩いた。


「結局、誰が何するの? ずっと揉めてんじゃん」

「揉めてねぇし。お前が勝手に決めてるだけだろ」

「勝手じゃねぇよ。仕切らないと終わんねぇだろ!」


別の女子が腕を組んだ。


「仕切るのはいいけど、こっちの意見聞いてない」

「聞いたじゃん」

「聞いてない。『じゃそれで』って言っただけ」


空気が熱くなる。誰かが椅子を引く音がした。


そのとき、ユウがノートを持ち上げた。机の上に置いたまま、全員に見える角度にする。鉛筆で、トントンと紙を叩く。


「……なに?」と男子が言いかけて、言葉を止めた。


ユウはノートのページを一枚めくった。そこに太い字で書いてある。


『今の意見 3つ』


女子が覗き込む。


「……え、書いてたの?」


ユウは頷いて、下に箇条書き……ではなく、短い行を並べて見せた。


『①発表はスライド (間に合う)』

『②発表は模造紙 (部活でもできる)』

『③役割を固定 (揉めない)』


男子が眉をひそめる。


「誰がそんなこと言った」

女子がすぐ返す。

「私。模造紙。家でできるって言った」

別の男子が言う。

「固定は俺。揉めるから」


仕切っていた男子が唇を尖らせた。


「じゃ、スライドでいいじゃん。間に合うし」

女子が首を振る。

「パソコン、誰が使えるの」

「俺」

「それ、結局あなた一人に寄る。欠席したら終わり」


ユウが鉛筆を走らせ、次のページを見せた。


『条件』

『・PC使える人 2人以上』

『・部活ある人 家作業OK』

『・役割 今日決める』


仕切っていた男子が黙った。机を叩いていた手が止まる。


「……二人以上って、誰が」言いかけて、別の男子が手を挙げた。

「俺、家にノートある。スライド触れる」

女子が少し驚いた顔をする。

「え、できるの?」

「まあ、ちょっと」


仕切っていた男子が小さく舌打ちしたが、声は荒げなかった。


「じゃあ、スライドでもいける?」

女子が言う。

「でも模造紙の方が楽」

「それはそうだろ」と男子が返す。

「楽ってだけで決めたら、先生に怒られるわ」

「先生、完成してりゃ怒んねぇよ」


そこへ、ユウがまたノートをトントンと叩いた。今度は強めに。


全員が視線を集める。


ユウは新しいページに、短く書いた。


『決め方』

『A スライド 条件満たすなら』

『B 模造紙 条件満たさないなら』

『今 確認』


女子が呟く。

「……二択にした」

別の女子が笑いそうになって、口を押さえた。

「ちょっと、分かりやすい」


仕切っていた男子が眉間に皺を寄せる。


「確認って何」

女子が返す。

「条件満たすかどうか、今確認するってことでしょ」


ユウが鉛筆で「条件」の行を指した。次に、班員の顔を順番に見ていく。質問はしない。視線が問いになる。


最初に目を逸らしたのは、仕切っていた男子だった。


「……俺、家のPCは使えない。スマホだけ」

「私もスマホ」と女子。

「俺、PCある」とさっき手を挙げた男子。

「うちもある」と別の女子が言った。


ユウは静かに頷き、ノートに何かを書き足した。ページを見せる。


『PC 2人 OK』

『部活 3人 家作業OK』

『役割 今決める』


仕切っていた男子が、ふっと肩の力を抜いた。


「……じゃあスライドでいいじゃん」

女子が念を押す。

「役割、固定ね。あなた一人で決めない」

「分かったって」


ユウがノートに四つの枠を描いた。タイトル、調べ、スライド作り、発表。そこへ鉛筆を置いて、班員の方へ差し出す。


「……え、書けってこと?」と女子。


ユウは頷く。


一人が名前を書いた。次が続く。仕切っていた男子も、渋々というより、逃げ場がなくなったみたいに名前を書いた。


空気が、少し冷えた。怒鳴り声の代わりに、鉛筆の擦れる音が並ぶ。


静は扉の隙間のまま、動かなかった。


ユウは最後に、ノートの端へ小さく『提出:金曜』と書き、丸で囲った。丸の外に、さらに小さく『途中確認:水曜』。


女子が言った。


「水曜って、早くない?」

仕切っていた男子が反射で言う。

「早いだろ」

別の男子が言った。

「でも水曜に一回見せれば、金曜に詰まらなくね?」

女子が頷く。

「先生に見せて修正できるし」


ユウは「水曜」の丸を指で叩いた。二回。決定の合図みたいに。


仕切っていた男子が息を吐いた。


「……じゃあ水曜。了解」


その瞬間、教室の外の廊下を、生活指導の教師が通り過ぎた。小声が聞こえる。


「黒川教頭、また二年の遅刻一覧見てたぞ」

「来週だっけ、集計」

「進路室、今大変らしいな」


足音が遠ざかる。


静は、その話題が教室の中に落ちてこないことに少しだけ救われた。けれど、救いは長く続かない。期限は動かない。


静は扉を軽くノックした。


教室の中の視線が一斉にこちらへ向く。ユウだけが、驚かない顔で静を見た。


静は入らずに言った。


「岸。ちょっと」


班の女子が言う。


「先生、これ、岸がまとめてくれました」

仕切っていた男子がぶっきらぼうに続ける。

「……助かった。まあ」


静は男子の言い方を咎めなかった。今は、形ができたことの方が重要だ。


「担任には、今の役割表を写真で送っとけ。揉めたら、記録が強い」


女子が頷く。


「写真撮る」

別の男子が言う。

「LINEグループ、作る?」

女子が返す。

「作る。岸も入れる?」

一瞬だけ、間が空いた。


ユウが小さく頷いた。


「じゃ、入れる」と女子が言った。声が少し柔らかい。


静はユウの方へ顎をしゃくる。


「来い。十分」


ユウはノートを閉じ、鉛筆をケースに戻した。立ち上がるとき、椅子が少しだけ鳴った。誰も気にしなかった。


廊下に出ると、ユウは静の横に並んだ。歩幅が合うまで、半歩遅れて調整する。


静は言った。


「さっきの、見てた」


ユウが視線を落とす。誉め言葉を避けるみたいに。


静は続けた。


「口がないなら、紙で場を回せる。今のは、立派な交渉」


ユウの指がノートの角を撫でた。折れかけた角が、少し丸くなっている。


静は職員室の方向を見た。担任の席はあそこだ。呼べばいい。だが、今呼ぶと、余計な耳も増える。黒川の影は、職員室に濃い。


「岸。担任に『合理的配慮』って言うと、面倒くさがる人もいる。だから言い方変える」


ユウが顔を上げる。


静は短く言う。


「『授業が止まらない方法がある』って出す。今日のノート、見せる。実績は強い」


ユウはノートを抱え直した。


静は歩きながら、進路室の鍵をポケットで探った。


「それから。今のやり方、君の武器になる。評価の話もできる。提出物のまとめ役、議事録係。数字にできる形に落とす」


ユウがメモ帳を取り出し、歩きながら一言だけ書いた。


『担任 こわい』


静はそれを見て、止まらずに言った。


「怖いなら、二人で行く。相沢も呼ぶ」


ユウが小さく頷いた。


廊下の向こうから、陸が走ってきた。息が上がっている。


「先生! 天野先輩、今日の消し作業、遅れるって! 黒川が――」


静が手を上げて止めた。


「分かった。順番を変える」


陸がユウに気づき、目を丸くする。


「岸、なんで先生と」

ユウは答えない。代わりにノートを少し開き、さっきの役割表のページを見せた。


陸が覗き込んで、口を開けた。


「……これ、岸が?」

ユウが頷く。


陸が言葉を探し、最後に短く言った。


「すげ」


静はその「すげ」を拾わない。拾うと、すぐ軽くなる。


「相沢。先に進路室。天野の反省文、清書の続きをやる。私は岸と担任に話してから戻る」


陸が焦った顔で言う。


「でも黒川が来たら――」

「来たら、記録を見せる。作業時間と復旧目途。逃げない」


静は進路室の鍵を握り直した。


ユウがメモ帳に書く。


『天野 先輩 大丈夫?』


静は一瞬だけ、ユウの文字に目を落とした。


「大丈夫にする材料を集めてる途中。君も、今から材料を出す」


静は足を止め、担任の教室へ向かう角を曲がった。


「行くぞ。十分で済ませる。済まなかったら、次の手を考える」


ユウはノートを胸に押さえ、静の半歩後ろからついていった。



担任の机は、職員室の中央寄りにあった。生徒の出入りが多い場所で、周りの教師の視線も自然に集まる。


桐生静はそこへまっすぐ歩いていき、岸ユウを半歩後ろに置いた。


「佐伯先生。今、十分いいですか」


英語科の佐伯は顔を上げ、静の後ろのユウを見るなり眉を寄せた。


「岸? どうした。遅刻か? いや、今日は……」


静は言葉を切った。


「授業参加の方法の相談です。岸が、口での発言が難しい」


佐伯が椅子にもたれ、腕を組む。


「難しいっていうか……喋らないだけだろ。授業中、ずっと黙ってる。指名しても目を逸らす」


ユウの指先がノートの端を掴んだ。白い。


静がクリアファイルを机に置いた。


「これ、今日の総合の班活動。岸が議事録を取って、意見を整理してます。衝突を止めて、役割まで決めた」


佐伯はファイルを開くより先に、ため息をついた。


「議事録ね。そういうのは、まあ、できる子はいるよ」


静の視線が、佐伯の机の端に止まった。進路資料の束。大学のパンフと、就職希望の少ない学科の一覧表。黒川の回覧が混ざっている。「進学実績集計、未提出者リスト」。紙の角が揃いすぎて、圧がある。


静は声を落とさずに言った。


「できる子、で終わらせると評価が落ちます。岸は参加してるのに、参加してない扱いになる」


佐伯が鼻で笑った。


「評価は発言点があるんだよ。社会に出たら喋れないと詰む。今のうちに矯正しないと」


「矯正」という言葉が、ユウの肩を一瞬で硬くした。視線が床に落ちる。まばたきが増えた。


静はファイルを開き、紙を一枚抜き取った。ユウのノートを写真に撮って印刷したものだ。今日の「条件」「決め方」が写っている。


「社会の話をするなら、逆に言います。会議で口が強い人が勝つ現場、あります。だからこそ議事録が必要です。記録がないと揉める。岸はそこを回せる」


佐伯が紙をちらりと見て、すぐ戻した。


「でも結局、本人が喋れないならプレゼンも面接も無理だろ。就職も。進学も。詰むよ」


静の背中越しに、ユウの息が浅くなったのが分かった。喉が動く。声にならない。唇が震え、噛みしめる。


静はユウを振り返らず、佐伯だけを見る。


「詰む、って断言はやめてください。現実は厳しいけど、道は一つじゃない」


佐伯が眉を上げる。


「道? 何がある。黙ってる子に」


静は静かに机を指で叩いた。二回。ユウがノートを叩くのと同じテンポだった。


「まず授業。付箋とカードで意思表示させます。『待って』『確認』『賛成』『反対』。発言の代替。授業が止まらない形で」


佐伯が口を尖らせる。


「甘やかしじゃないのか。特別扱いになる。教頭に突っ込まれるぞ」


静は即答した。


「突っ込まれます。だから、合理性で通します。授業が回る。評価が付けやすい。クレームが減る。佐伯先生の負担も減る」


佐伯が言い返す。


「でも本人のためにならない。喋れないまま卒業してどうする」


ユウの目が赤くなった。涙が溜まっても、落とさない。落としたら終わるみたいに、こらえる。


静はその横顔を見ない。見たら、この場が「かわいそう」で終わる。


静は言った。


「本人のために、今できる訓練もします。いきなり『喋れ』は無理です。段階を踏む」


佐伯が鼻で息を吐く。


「段階?」


静はユウのノートを、佐伯の机の上にそっと置いた。


「岸。今日の班のときみたいに、今ここでもやれる?」


ユウの指が一瞬止まった。周りの教師の視線が刺さる。職員室の空気が、急に薄くなる。


それでもユウはノートを開いた。鉛筆を出す。手が少し震えたまま、書く。


静はその動きを待った。


ユウが書いた文字を、静が佐伯に向けて見せる。


『困ってる』

『授業 置いていかれる』

『怒られるの こわい』


佐伯が言葉を失ったように黙り、次に強めの声で言った。


「だから喋れって言ってるんだよ。怒られるのが怖いなら、尚更。逃げてたら一生このままだろ」


ユウの鉛筆の芯が、紙に強く当たって折れた。カチ、と小さな音。ユウの喉が詰まり、息が止まる。目尻に溜まったものが、今にも落ちそうになる。


静が、鉛筆削りを佐伯の机から勝手に取るような真似はしなかった。代わりに、静は自分のペンケースを開け、芯の太いシャープペンを一本出してユウに渡した。


「折れていい。続けろ」


ユウは受け取り、握り直す。握りが少しだけ緩む。


佐伯が苛立ちを隠さずに言う。


「桐生先生。こういうの、結局本人が変わらないと無理だよ。社会は待ってくれない」


静は頷いた。否定しない。


「待ってくれません。だから、今ここで詰ませない」


佐伯が言う。


「詰ませないって、どうやって」


静は淡々と言った。


「評価の付け方を変えるんじゃなくて、評価できる行動を増やします。議事録を提出物にする。班の合意形成の記録を取らせる。発言点の代替として、授業後の短いリフレクションを紙で提出させる」


佐伯が眉を寄せた。


「そんなの、手間だろ」


静は即答する。


「手間です。でも、今のまま『詰む』で切ったら、もっと手間が増えます。遅刻、欠席、提出ゼロ、単位落とし。進路室に回ってくる。黒川教頭は数字で責める。先生も私も、逃げられない」


佐伯の視線が、机の端の「未提出者リスト」に一瞬落ちた。唇が薄くなる。


「……教頭がな」


静は言葉を続ける。


「岸を落としたら、実績の数字は守れるかもしれない。でも、岸の人生は守れない。私はそっちを仕事にしてます」


佐伯が声を荒げる一歩手前で止めた。


「……分かった。やってみろ。ただし、授業を止めるな。特別扱いだって生徒が騒いだら終わりだ」


静は頷く。


「止めません。だから、最初にクラスに説明します。『議事録係』として役割を与える。特別じゃなく、役割」


ユウがノートに書き足した。静がそれを佐伯に向ける。


『最初に 決める』

『合図 使う』

『水曜 見せる』


佐伯がノートを見て、短く言った。


「……水曜に途中確認、な。真面目だな」


その一言に、ユウの目の赤がさらに濃くなった。嬉しいとも悔しいともつかない。呼吸が乱れ、声が出ないまま、唇だけが動く。


静はそこで初めてユウの方へ体を向けた。


「岸。今、言えなくていい。ノートで十分通ってる」


ユウは首を振りかけて、止めた。頷くでもなく、ただ唇を噛んだ。涙が一滴、ノートの端に落ちて滲んだ。


佐伯がそれを見て、視線を逸らした。声のトーンが少し落ちる。


「……泣くくらいなら、少しずつ喋れるようになれ。社会は優しくないぞ」


静はその「優しくない」を受け止めたまま、返す。


「優しくないから、今は武器を増やす。喋る練習は、別枠でやる。今日明日で結果を求めない」


佐伯が頷く。


「分かった。授業後の紙提出、フォーマット作ってくれ。俺は回収してチェックする」


静は即答した。


「今日作ります」


佐伯が椅子を回し、周囲に聞こえないくらいの声で言った。


「……桐生先生も、無理すんな。最近、教頭が進路室の動き気にしてる。天野の件もあるし」


静は口元だけで笑った。笑いにならない。


「無理してる暇がないだけです」


静がファイルを回収し、ユウのノートを閉じると、ユウは両手で抱えた。濡れたページが開かないように押さえる。


職員室の出口へ向かう途中、陸が廊下で待っていた。落ち着かない足踏み。


「先生、どうだった」


静は短く言う。


「通った。条件付き」


陸が息を吐く。


「岸、大丈夫?」


ユウは答えず、胸ポケットから付箋を出した。『待って』。それを陸に見せて、指で二回叩く。


陸が苦笑する。


「待て、ね。はいはい」


静は歩き出した。


「相沢。進路室戻る。天野の反省文、清書。復旧目途の写真、今日の分も追加する。黒川に出す報告書、明日までに形にする」


陸の顔が引き締まる。


「……間に合う?」


静は答えを濁さない。


「間に合わせる。間に合わなければ、退学の話が現実になる」


ユウの足が一瞬止まり、次に小走りで静に追いついた。ノートを抱えたまま、転ばないように。


静は進路室の鍵を回しながら言った。


「岸。泣いていいのは、終わってからだ。今は手を動かす」


扉が開く。第3進路室の薄暗い空気が、三人を飲み込んだ。


机の上には、スプレー壁の写真と、作業時間の記録用紙が広がっている。期限まで、あと一日半。


静は椅子を引いた。


「まず、天野の反省文。岸、手が空いたら、今日の班の議事録を清書して持ってきて。明日の授業で使う」


ユウは頷き、ノートを開いた。濡れた跡のあるページの上に、鉛筆を置く。


陸が反省文の紙を引き寄せる。


「……先輩、なんて書けばいいんだろ」


静は天野の下書きを指で押さえた。


「『静かになりたかった』。それは逃げじゃない。理由だ。でも理由だけじゃ足りない。復旧の段取りと、次に何をするか。そこまで書く」


外で誰かが走る音がした。職員室の方から。黒川の声ではない。だが、急かす足音は同じ種類だった。


静は時計を見ずに言った。


「次の一手、急ぐぞ」



第3進路室の蛍光灯が、少し遅れて点いた。


机の上には、天野ソラの反省文の下書き、壁の写真、消去作業の時間記録。ペンの匂いと、薄いシンナーの残り香が混ざっている。


相沢陸は反省文の紙を前に、髪をかき上げた。


「『静かになりたかった』って……それ書いたら、余計怒られない?」

「怒られる」と静は言った。「だから、怒られてもいい形にする」


岸ユウは隅の椅子に座り、ノートを開いている。さっき落ちた涙の跡が、紙の端で乾きかけていた。


静は天野の下書きを指で押さえた。


「理由は書く。だけど、理由だけ書くな。次に何をするかを先に出す」

陸が眉を寄せる。

「先に?」

「先に」


静はペンを取って、反省文の余白に線を引いた。


「一行目。『復旧作業を本日から開始し、〇日までに完了させます』。これ」

陸が目を丸くする。

「反省文の一行目がそれ?」

「うん。黒川はそこを見る」


陸が口を尖らせる。


「教頭、反省とかどうでもよさそうだもんな……結果と期限」

静は頷いた。

「学校は企業。成果がすべて。あの人のルールだ」


ユウの鉛筆が止まった。耳だけが動いたみたいに、視線が静に寄る。


静はユウに向けて言った。


「岸。さっき職員室で、佐伯が『詰む』って言ったな」

ユウは小さく頷く。頷きながら、指先でノートの角を擦った。


静は椅子に腰を下ろし、机を挟んでユウと向き合った。


「詰むかどうかは、声量じゃない。場を動かせるかどうか」

陸が口を挟む。

「でも場って、声デカい奴が勝つじゃん」

静は陸を見た。

「勝つ場もある。だからこそ、別の勝ち筋を作る」


静は机の上の写真を一枚、ユウの前に置いた。校舎裏の壁。色が残る部分と、消えた部分。時間記録の紙も横に並べる。


「これ、誰が強い?」

陸が首を傾げる。

「え、先生?」

静は首を振る。

「強いのは記録。写真と時間。『やった』を証明する紙」


陸が息を吐く。


「……確かに。口で『やりました』って言っても、信じないもんな」

「信じない」と静は言った。「特に黒川は」


ユウが小さく鉛筆を動かし、ノートに何か書いた。静へ向ける。


『記録 勝つ?』


静は頷いた。


「勝つ。正確に言うと、負けにくくなる。声が小さくても、議事録があると黙らせられる」

陸が笑いかけて、すぐ真顔になった。

「黙らせるって言い方、怖いな」

「現実だよ」


静は引き出しから、白い紙の束を出した。学校の印が入った用紙。上に太字で「班活動 議事録」と印刷されている。


陸が目を見開く。


「え、もう作ってんの?」

「さっき職員室で頭の中で作った。印刷は今」


静はユウに一枚差し出した。


「これ、君の武器。議事録係のフォーマット」

ユウは受け取って、紙の端を丁寧に揃えた。手つきが、紙を扱う仕事の人みたいだった。


静は続ける。


「項目は四つ。『目的』『決定事項』『保留』『次回までの担当』。ここだけ押さえれば、班は回る」

陸が首を傾げる。

「それ、先生が決めたの?」

「現場で揉めるのはそこだから」


陸が反省文を指で叩いた。


「天野先輩のも、結局それじゃん。決定事項と担当と期限」

静が言う。

「そう。反省文も議事録みたいなもんだ。言い訳じゃなくて、合意形成の材料」


ユウの目が少しだけ開いた。さっきより焦点が合っている。


静はユウの紙の上に、ペン先を向けた。


「岸。明日から、総合だけじゃなく、英語もこれでいける。授業後の紙提出も、これに近い形にする。先生が見たいのは『理解してるか』と『次に何をするか』だ」

ユウは紙の余白に小さく書く。


『先生 見る?』

静は即答した。

「見る。見るようにする。見るように言う」


陸が言った。


「でもさ、議事録係って、嫌がられない? 『仕切ってる』って」

静は首を振る。


「仕切ってない。まとめてるだけ。勝手に決めない。決まったことを、決まったって残す。ここが違う」

陸が唸る。

「言い方で変わるんだな……」


静はユウに視線を戻した。


「交渉は、相手の意見を潰すことじゃない。相手の言い分を並べて、二択か三択に落として、期限を付けて、全員が『まあそれで』って言える場所を作る」

陸が小声で言う。

「それ、岸が今日やってた……」

静が頷く。

「やってた。だから武器にする」


ユウがノートを開き、今日の班のページを見せた。『条件』『決め方』。鉛筆の線が濃い。


静はそのページの端を指で押さえた。


「これ、捨てるな。溜めろ。実績になる」

ユウが書く。


『実績 進路?』

静は答えた。


「進路に使える。面接で喋れないなら、書類で勝つ。ポートフォリオ。議事録の束は『仕事』だ」

陸が眉を上げる。

「高校生の議事録で?」

「高校生だから価値がある。誰もやらないから」


陸が反省文を見ながら言う。


「でも結局、面接あるじゃん」

静は陸を見る。


「ある。だから、面接は『喋る練習』じゃなくて『伝える手段を増やす練習』にする。想定問答を紙にする。キーワードカード。最悪、配慮を求める選択肢もある」

陸が顔をしかめる。

「配慮って言うと、また教頭が……」

静は淡々と返す。

「黒川は嫌う。だから準備する。言葉があると守れる範囲が増える」


ユウが紙を指で押さえたまま、静を見た。目が揺れているのに、逃げない。


静は少し声を落とした。


「岸。今日、泣いたのは弱さじゃない。今まで一人で耐えてたって証拠だ。けど、これからは一人で耐えるな。紙に分けろ。役割に分けろ」


陸が黙って頷いた。反省文の紙を揃え直し、ペンを持つ。


静は陸に言う。


「相沢。天野の反省文、冒頭を今言った形に変えろ。復旧期限、作業内容、再発防止。遅刻ポスター案も一行入れる。黒川が『検討』で止めてるから、材料を増やす」

陸が唇を噛む。

「……先輩、納得するかな」

「納得しなくても、選択肢はこれしかない」と静は言った。「退学の話が出てる」


陸がペンを走らせ始めた。


ユウは議事録フォーマットを見つめ、ゆっくりと自分の名前を書いた。岸ユウ。字が整っている。書き終えると、紙を静へ向けた。


静は受け取り、上段に赤で書き足した。


「『議事録係:岸ユウ』。明日、担任に渡す。クラスにも言う。役割として通す」


ユウの指が、紙の赤字の上で止まった。赤は強い。けれど、逃げない。


静が言った。


「嫌なら、やめていい。けど、やるなら、武器になる」

ユウは首を横に振らなかった。代わりに、胸ポケットから付箋を出し、『賛成』を静に見せた。指で二回叩く。


陸がそれを見て、少し笑った。


「……なんか、かっこいいな、それ」


静は笑わない。代わりに言う。


「かっこよさはいらない。続けられる形にしろ」


机の端のスマホが震えた。静のもの。画面に職員室の内線番号が出ている。教頭室からの転送表示。


陸の手が止まった。


「……来た?」


静は画面を見たまま、出なかった。呼び出し音が二回、三回。切れる。


静はスマホを伏せ、机の上の報告書用紙を引き寄せた。


「明日、黒川に出す。逃げない。先に出す」

陸が喉を鳴らす。

「先に出すって、どうやって」

「議事録と同じ。目的、決定事項、保留、次回。相手が口を挟む前に、枠を作る」


ユウが小さく書く。


『黒川 も まとめる?』


静はその文字を見て、短く頷いた。


「まとめる。あの人も、枠の中でしか動けない」


外で夕方のチャイムが鳴った。部活の掛け声が遠くなる代わりに、校舎裏へ向かう足音が増える。消去作業の時間だ。


静は立ち上がり、写真ファイルを閉じた。


「相沢、反省文あと十分。岸、議事録フォーマット明日十枚印刷する。印刷室、鍵持ってるな?」

ユウが頷く。


静はドアに手をかけた。


「行くぞ。壁を消す。記録を残す。期限までに形にする」


陸が紙を握り、言った。


「……先生。これ、間に合わなかったら」

静は振り返らずに言う。


「そのときは、次の交渉をする。退学を止める交渉じゃない。天野が残れる現実的な道を増やす交渉だ」


ユウがノートを閉じ、立ち上がった。付箋を胸ポケットに戻す手が、さっきより速い。


三人は第3進路室を出た。廊下の先、校舎裏へ続く扉が、夕方の光を切って黒く見えた。



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