【短編】鮮魚室チーフ作業場殺人事件

和泉歌夜(いづみかや)

本編

「今ならマグロが100gあたり100円で、あ、が、あ......」


 呼び込み君に録音された音声の最後は耳障りな不快音と共に終了した。


 私、レジの山田は呼び込み君をテーブルの上に置いた。そして、鮮魚室の床で寝そべっている死体を見た。


 鮮魚担当のチーフ、鮪山まぐろやまはうつ伏せになっていた。背中には鋭利な刃物で刺されたであろう跡があった。凶器は見当たらなかった。


「そんな......鮪山さんが殺されるなんて」


 精肉担当の豚田ぶただは顔を真っ青にしていた。


「鮪山さんはみんなに慕われていた。彼が怨みを買うようなことはないはずだ!」

「でも、殺されているんですよ。何かしら彼に殺意を抱いていたのは間違いないです。


 青果担当の蓮根はすねはゴム手袋を弄りながら冷静に指摘した。


「じゃあ、誰が殺したんだ?」


 惣菜担当の唐揚からあげは白いネット帽子で頭をかいた。その質問には誰も返さなかった。


 私は心の中で深く溜め息をついた。


 なんで殺人事件が起きるの。よりによって、出勤する日じゃない時に。


 でも、起きたからにはしょうがない。私は自分にそう言い聞かせた。


「唐揚さん、警察はいつ来ますか?」

「遅くても三十分はかかる」

「悪天候ですからね。下手したらそれ以上かかりますよ」


 蓮根はやれやれといった様子で溜め息をついた。人が死んでいるのにそんなに冷静になれるのは不思議だが、彼の言う通り、このスーパーは駅からかなり離れた場所にある。


 確か警察署は駅の近くにあった。今日は台風が近づいて強風や雨が重なり、一般道は渋滞しているらしい。


「じゃあ、俺達はこの死体と一緒にいなければならないのか?!」


 豚田は金切り声を上げた。彼の反応に蓮根は「毎日肉を捌いているくせに、人間の死体は怖いのか」と冷笑した。


「はぁ? 当たり前だろ! 俺達が届く肉は塊とかで、丸々一匹を捌いているわけじゃない! それにお前はどうしてそんなに冷静でいられるんだ!」

「僕ですか? だって、この状況、すごいじゃないですか。殺人事件ですよ! しかもスーパーのバックヤードで! ミステリー好きでしたら堪らないですよ!」


 蓮根は今日はじめて興奮した様子で声を上げた。そういえば彼は休憩室でもミステリー小説を読むくらい推理ものが好きなのだ。


「お前、不謹慎すぎるぞ。これは小説の世界じゃない。現実で起きているんだ」


 唐揚が険しい顔で蓮根を睨んだ。蓮根は「それよりも犯人が誰か探しません?」と私を含め一人一人顔を見た。


 私は深呼吸した。とりあえず、各自のアリバイを聞かないと。


「まずは鮪山さんの死体が見つかるまでの間、皆さんは何をしていたのか、教えていただけますか」

「俺は機械の点検をしていた」


 豚田はそう言って点検表を見せてきた。確かに今日の日付に丸がされてある。私はそれを頭の中に記憶した。


「僕は昨夜取り込んだ野菜を出していました。もし疑うのでしたら防犯カメラを見てもかまいません」


 蓮根は自信満々に言った。彼の証言を確かめるべく私達は防犯カメラのモニターがある事務所に向かった。


 確認した所、野菜売り場の方で台車に積まれたブロッコリーを出している蓮根が映っていた。


 防犯カメラの時刻には『6時30分』と書かれていた。ついでに鮪山の生前の行動も調べてみることにした。


 鮪山は作業場と売り場を忙しく行ったり来たりしていた。そして、『7時』を境に急に姿を見せなくなった。そして、『7時30分』に唐揚がやって鮪山の死体を見つける。


「つまり、鮪山さんが殺されたのは7時から7時半ということになるのか」


 唐揚はそう言うと、蓮根を見た。蓮根は度がきつそうなメガネをクイッと上げた。


「僕を疑っているんですか?」

「あぁ、お前が野菜を出す帰りに鮪山を殺すことは可能だ」


 唐揚がそう指摘すると、蓮根は顔をしかめた。


「じゃあ、犯行時刻の時に僕が防犯カメラに映っていましたか?」

「映ってはいないが、何かしら細工をしたのだろう」

「その細工は? どうやったら鮪山を殺せるんですか? 売り場からバックヤードへの入り口は一つしかないんですよ」


 蓮根は事務所を飛び出した。私達も後を追った。蓮根は売り場とバックヤードの境界線であるドアの前に立っていた。


「ほら、ここしかない。もし僕が犯人ならここから作業場に台車で引いているのが見えるはずだ」

「いや、他にもある」


 唐揚がポツリと呟いた。蓮根の瞳の色が変わったのを私は見逃さなかった。


「......ほう、では、他に出入口があるというんですか?」

「あるだろ。俺達が出勤する時に入る扉」


 唐揚の言葉に豚田は顔を明るくさせた。


「なるほど! 売り場にいると見せかけて従業員入り口から入って鮪山さんを刺し殺した」


 唐揚の指摘はあながち間違っていない。売り場からバックヤードまでの入り口は目の前にある一つだけだ。けど、従業員入り口から鮮魚室まで行くことも可能だ。


 ただ何だろう。なんか違和感がある。


「馬鹿か、お前らっ!」


 蓮根は珍しく声を荒げた。


「こんな天気悪い中、どうやって痕跡を残さずに鮮魚室まで行くんだ。それにどちらにせよ防犯カメラに僕が映っているだろうがっ!」


 蓮根の豹変はさておいて。彼のいう通り、バックヤードの床は綺麗だった。外は大雨で道はぬかるんでいたからもし外から入ってきたら靴に泥とかが不着していただろう。


 豚田は鼻息を荒くした。


「お前が殺したんだ。そういえば、お前は鮪山に金を借りていたな」

「お前、どうしてそのことを......」


 蓮根は声を震わせていた。唐揚は「どういうことだ?」と豚田の方を見た。


「鮪山から聞いたんだ。『蓮根に二百万借りたんだが、全然返してもらっていない』ってな。お前は返済を迫られたから殺した。違うか?」

「何を......何を馬鹿なっ!」


 蓮根の目の奥が憤怒に燃えていた。今にも包丁で刺し殺してしまそうな気迫だった。


 私はとりあえずこれ以上事が大きくならないように二人の間に立った。


「蓮根さん、豚田さん、とりあえず落ち着きましょう。まだ唐揚さんの証言を聞いていません」


 私が急に名前を指摘したからか、唐揚はビクッと驚いていた。そして、なぜか黙ってしまった。


「おい、どうした。何か言いにくいことでもあるのか」


 豚田が尋ねると、唐揚は「休憩室で休んでいた」と力なく答えた。


「証言できる人はいるの?」

「いや、いない」

「ほう、ということは......お前にも鮪山を殺せるチャンスがあるはずだ」


 豚田の声が急にイキイキとしだした。その表情は獲物を見つけた野獣だった。


 私は問題が大きくなる前に三人に言った。


「では、唐揚さんがどの席に座っていたのかを確認しましょう」


 私の提案に唐揚はポカンとしていた。


「そんなのを知って何になる?」

「どんな些細なことでも入れておかないと犯人は見つかりません」


 私はなお抗議しようとした唐揚を言う暇も与えずに休憩室に向かった。


 相変わらず狭い休憩室だった。テーブル席が三つと一人席が七つあった。テーブルの上には新聞が置かれていて、三日間の天気予報が書かれていた。天気の嘘つき。今日は晴れだって言ったじゃん。


「唐揚さんはどこで休憩していたんですか?」

「そこの一番奥だ」


 唐揚は部屋の端っこにある一人席を指差した。彼が言うにはチラシで惣菜を確認していたという。確かに新聞紙の間にチラシが挟まっていて、チキン南蛮に丸がついていた。


 でも、こういうのは後からいくらでも偽装できる。


「証言できる方はいますか?」

「いや、いない。トイレに行って賞味期限切れの惣菜を回収しようと思って休憩室を出たら急に叫び声が聞こえて......」

「叫び声が聞こえた?」


 蓮根が私よりも先に疑問を抱いた。


「つまり、唐揚さんは死体を発見した7時頃に殺されたということになりますね」

「あぁ、そうさ」

「でも、防犯カメラを見た限りでは慌てた様子は見られませんでした」

「そう見えたんだろ」

「本当にそうですか?」

「......何が言いたい」


 蓮根はここぞとばかりに不気味な笑みを浮かべた。


「あなたが殺したんじゃないですか?」

「なんだと?! なぜ俺が鮪山さんを殺さばければならない!」

「ご存知だったんじゃないですか? 鮪山さんが店の金に手を出していることを」


 休憩室が静寂になった。私は唐揚が既婚者であることを初めて知った。


「お前......なぜその事を」

「豚田さんから聞いているんですよ。ねぇ」


 蓮根に聞かれた豚田は静かに頷いた。唐揚の顔がたちまち赤くなり、豚田に近づいた。


「なぜ俺の秘密を話した?!」

「悪い。うっかり......」

「うっかりして済むはずはねぇだろ?!」


 冷静な唐揚がいつになく怒号を飛ばしていた。私はそれを静かに見守っていた。


「唐揚さん、今のは本当ですか?」

「......あぁ。間違いない」


 唐揚は頷いた。


「俺は店の金に手を出した。それを鮪山に目撃してしまった」

「ということは動機がありますね。鮪山さんを殺す動機が」


 蓮根がニヤニヤと笑った。


「鮪山さんは偶然目撃してしまったのでしょう。その真相を確かめるために鮪山さんはあなたを呼び出した。そして、バレて焦ったあなたは出刃包丁で刺し殺した......違いますか?」


 蓮根はまるで探偵にでもなったような口調で唐揚を追い詰めていた。唐揚は黙っていたが、瞳が揺れていた。


「......本当にお前が殺したのか」


 豚田はいつになく真剣に唐揚を見ていた。唐揚の息が荒くなっていた。


「......あぁ、そうだ。俺が殺した」


 この言葉により場の空気は一変した。蓮根はドン引きするほど大笑いした。普段のクールな印象とは程遠いほどの大笑いだった。


「これ事件は解決した。さぁ、後は警察が来るのを待つだけだ」


 蓮根はそう言って豚田を見た。豚田も大きく頷いた。


 私は大きく息を吐いた。


「......猿芝居はやめませんか。お三方」


 私がそう言った後、蓮根、唐揚、豚田はピクッと動いた。静寂が流れ、ようやく豚田が口を開いた。


「......芝居ってなんだ。まさか唐揚が誰かを庇っているっていうのか」

「まだしらばっくれるおつもりですか。私は三人って言ったんです。今、目の前にいる三人」


 私は豚田を指差した後、蓮根、唐揚の方を指差した。


「何を馬鹿な!」


 これに反撃したのは蓮根だった。


「何を根拠にそう言っているんだ! 僕らが鮪山を殺したというのか?!」

「うーん、正確には違いますね」


 私はそう言って新聞紙を手に持った。


「まず、鮪山さんを殺したのは蓮根さん、あなたですね」

「......は? な、なんで?」

「あなたが唐揚さんを問い詰めた演技をした時、つい『出刃包丁で刺し殺した』と申し上げました。確かに鮪山さんの背中は鋭利なもので刺された後があります。でも、具体的な刃物までは分かりません。なぜあなたは『出刃包丁』だと分かったんですか」


 私の問い詰めに蓮根が初めて狼狽していた。眼鏡をクイッと上げて深く息を吸った。


「それは......あの、刺殺といえば包丁というイメージがあるじゃないですか。おそらくそれで言ったんだと思います」

「では、『包丁』でいいじゃないですか。なぜ『出刃包丁』なんですか」

「その......」

「それだけではありませんよ」


 私は蓮根が付けているゴム手袋を指差した。


「作業場の時からずっと付けていますが、何かを隠すためなんじゃないですか」

「隠すって何を」

「傷ですよ」


 私はニヤッと笑った。


「後ろから刺すという事は相当な力を使います。その時に刃元が手に刺さって怪我をする場合があります。あなたはそれを隠すためにずっとゴム手袋を付けているのではありませんか」

「馬鹿馬鹿しい。もし僕が犯人ならゴム手袋を付けた状態で殺しますよ。もし僕が犯人ならね」

「えぇ、ですが、それでも傷はつくはずです。その証拠に......その手袋二重になっていますよね」


 蓮根の動きが止まった。手袋を弄っていた手を止めた。


「おそらく出血が思ったよりも酷かったのでしょう。ゴム手袋一枚だけでは血が漏れる可能性があった。だから、二重につけた......違いますか?」

「馬鹿な考えだ。そんなの突拍子もない推理に過ぎない」

「でしたらすぐに手を見せてください。これ以上私の馬鹿な推理を聞かされたくなかったらすぐに見せるのが一番ですよね」


 私の指摘に蓮根はウッと顔をしかめ、小さく舌打ちをした後、ゴム手袋を外した。すと親指と人差し指の間に絆創膏が貼られていた。


「それは何ですか?」

「......昨日野菜を切っていた時に傷をつけたんだ」

「証明できるものは?」

「......家に帰ればあるかもしれない」

 

 蓮根が立ち去ろうとすると、豚田は「お前、卑怯だぞ!」と肩を掴んだ。すると、蓮根はおもいっきり彼を突き放した。


「どけ! 邪魔だ!」

「お前......」


 豚田は蓮根を睨んでいた。私は大きく息を吐いた。


「豚田さん、あなたは機械の点検をしていませんね」

「なっ、俺はきちんと......」

「では、もう一度点検表を見に行きましょうか」


 私は彼らを連れて精肉室へと向かった。そして、点検表を手に取ると彼らに見せた。


「今までの丸を見てください」

「......至って普通の丸だが」


 唐揚は首を傾げていた。あんなにお喋りだった蓮根は急に沈黙し素手で爪を噛んでいた。豚田は焦ったように「何ともないじゃないかっ!」と叫んだ。


 私は首を振った。


「いいえ。よく見てください。今までの丸は時計周りから書いています。ですが、今日の日付の丸では反時計周りから書いています」


 これに豚田は「なんだと?!」と叫んだ。そして、まじまじと見ていた。これに唐揚も目を大きくさせていた。


「人間、緊急時でも染み付いた癖は治らないものです。そして、その丸が当てはまるのは......これです」


 私は手に持っていた新聞紙を広げ、唐揚が言っていたチラシを取り出した。チキン南蛮を囲っている丸が反時計周りだった。


「唐揚さん、あなたが点検表に丸をつけたんですね」


 私の問いに唐揚は沈黙していた。が、フゥと深く溜め息をついた。


「あぁ、そうだ。俺が偽装工作した」

「えぇ。でも、ここで疑問が残ります。なぜ豚田さんは機械の点検を偽る必要があったのか......次の場所に向かいましょう」


 私は事務所の方に向かった。そこは先ほど防犯カメラを確認した場所だった。


「なぜこんな所に来た? 何の意味もないだろ」


 唐揚が苛立ったように言うと、私はパソコンのキーボードを叩いた。


 防犯カメラには先程の唐揚が鮮魚室の扉を開けようとしている光景だった。私はそれをリズミカルに操作すると、別の画面に切り替えた。


 そこには裏口から入って来ようとする黒い影があった。それは全身をすっぽり覆って中を探索していた。


 そして、鮮魚室まで向かうタイミングで私が入り口からやって来た。すると、黒い影は慌てて精肉室の方へと消えていった。


 それと同じタイミングで唐揚は売り場の方に消えていった。向かった先は蓮根だった。


 唐揚は一言二言言うと、蓮根は急いで入り口へと戻っていった。バッグヤードに戻ると、精肉室から豚田が現れた。彼らは慌てて鮮魚室の中に入ってしばらくすると、三人で出てきた。


 そして、各々散っていった。唐揚は精肉室に。豚田は事務所の方に。蓮根は鮮魚室の方に向かった。


 唐揚は精肉室を出た後、休憩室で新聞を読み始めた。そして、チラシに丸をした。


 私は防犯カメラから目をそらし、彼らを見た。皆、青ざめていた。


「さて、ご覧になった通り、あなた方は三つの作業分担をしました。一つは鮪山さんを殺す係。それは蓮根さんですね。次は外部からの犯行に見せかける係と防犯カメラを操作する係、豚田さんの役目ですね。最後に精肉室に偽装する係......唐揚ですね。あなた達は鮪山さんを殺した後、外部からの犯行に見せかけようとしました。が、ある誤算が生じました。一つは天気が荒れてしまったこと。もう一つは私が来てしまったことです」


 豚田の顔が険しくなった。唐揚と蓮根の表情は変わらなかったが血の気が引いていた。


「これはあくまで私の推測に過ぎませんが、元々鮪山さんもあなた達の計画に参加していたのではないですが。ですが、あなた方は裏切った。そして、三人で店の金庫を山分けしようと目論んだ......違いますか?」

「何を馬鹿なっ!」


 今まで黙っていた蓮根の声が張り上げた。


「さっきから黙って聞いていたらお、俺達が店の金......そんなものを手に出す必要があるんだ?!」

「さっき言ったじゃないですか。借金があるって」

「はぁ? お前、いい加減......」

「もうよせ。蓮根」


 激昂する蓮根を唐揚が止めた。


「もう駄目だ。こいつはお見通しだ。山田さんの言う通り、俺以外にも蓮根、豚田には多額の負債があった。もちろん、鮪山にも」


 唐揚は大きく溜め息を吐くと帽子を脱いだ。


「最初は四人で金庫の金を山分けする予定だった。だが、鮪山は急に怖じけずいて、この計画を店長にバラすと言ってきた。だから、俺達は鮪山を殺す計画を立てた。けっこうは早番のレジがいない日。そこで俺達は金庫の金を盗む予定だった。鮪山も参加させた後、蓮根が刺し殺した。豚田は外部からの犯行に見せかけるために黒いシーツを使って姿を隠した。その後は防犯カメラで俺達の犯行だと分からないように細工させた。しかし......」


 唐揚は私を見た。


「まさか山田さんが来るとは思わなかった」

「えぇ、私もまさか自分が勤めているスーパーで殺人事件が起きるとは思いませんでした」


 私はそう言うと、遠くからサイレンの音が聞こえて来た。


「山田さん、どこから気づいたんですか」


 蓮根がか細い声で気づいた。私は彼を見て言った。


「呼び込みくんです。私が発見した時、呼び込みくんはデスクの上にキチンと立てて置かれていました。もし背後から狙ったら横に倒れるか、床に落ちて壊れるはずです。つまり、鮪山さんを殺した犯人は顔見知り......あるいは、共犯者ではないかと考えました」


 私の問いに蓮根は深く溜め息をついた。


「まさかこんな身近に探偵がいるとはね......驚いたよ」


 皮肉っぽい言い方で私を見ていたが、その瞳は虚空を見ているようにおぼつかなかった。


*


 その後、三人は逮捕された。私は刑事さんにこと細かく事情聴取を受けた。


 そして、今までの事を話した。もちろん、物的証拠である防犯カメラの映像も私が話した証拠もあったので、警察は私の話を信用してくれた。


 店長はこの事件にひどいショックを受けていたが、それを解決した私を褒め称えていた。


 この事件は話題になり、SNSでは『レジ探偵』と呼ぶ者もいた。そのせいでスーパーのレジを勤務するのが難しくなり、今は別の仕事をしている。


 あぁ、また事件が起きないといいのだけど。



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