100-1物語 :一話完結・ショートショート連作
志操友博
第001話:神様のご都合
「好きです、付き合ってください」
まただ。今月に入って、告白されたのは七人目。いったいどうしたっていうんだろう。
自分で言うのも悲しいが、俺はとてもモテるタイプとは言えない。勉強ができるわけでも、金持ちでも、トークがうまいわけでもない。というか、女子と目を見て話せない。顔も、お世辞にもかっこいいとは言えない。ベテランマダム、つまりおばあちゃんにしかイケメンと言われたことがない。
だいたい、そんなスペックを備えていれば最初からモテるはずで、ある日突然モテ始めるなんてことはない。
今、告白してきたのも、成績は学年一番、才色兼備を絵に描いたようなお嬢さまで、ファンクラブまで存在するチートスペックの山本マリアだ。いったい、なぜ?
「だって……ケン君が、いつも授業中、外をじっと見ている姿が、なんとも言えないくらい可愛くて……」
授業についていけず、遠い目をして現実逃避していただけなのだが。
いったい、なぜ俺はモテるようになったんだ?
事の起こりは、俺が所属する男ばかりのむさい第3種接近遭遇部に、鹿島リリ子が入ってきたことだ。
見た目は完璧ギャルなのに、なぜこの宇宙人と交流するための部活に入ってきたのか。そんなギャル、宇宙人より目撃証言が少ない。
入部翌日、リリ子は俺に、
「あたしと第4種、または第7種接近しない?」
と、頬を赤らめて言ってきた。
えーと、第4種は拉致監禁……第7種は異種交……いかん、いかん!
当然、俺はどうすることもできず、たじろぐだけだったのだが、ほかの部活メンバーとの溝は深まるばかりだ。
「御都合主義だ」「ラノベの主人公か」「内心ウハウハしてんだろ」
周りからの心無い声が聞こえてくる。皆、心の中だけでなく口に出すのはやめてくれ。
次の週には、幼稚園の頃、親同士が仲良しだった月野千代美が、突然「昔から好きだった」と言ってきた。
話したこと、あったっけ?
さらに、内気な図書委員の熱海栞からは、原稿用紙十六枚に及ぶラブレターをもらい、クラスのムードメーカー・大内向日葵からは皆の前で告られ、同じマンションの未亡人・土本美夜子さんには、いけない遊びに誘われ、小学校からの悪友・中村いずみからは、
「実は俺、女だったんだ。好きだ」
と言われた。
言われてしまったんだ。
そして今日の告白だ。
さすがに浮かれてもいられない。もはや恐怖すら感じる。
いったい、どうなっているんだよ……
⸻
「ああ! 神様がついに動かれた!」
「どれだけ日々、読書に耽られてきたことか」
天使たちは大騒ぎであった。読書にハマり、何ヶ月も動かなかった神が、ついに立ち上がったのだ。
背後には、キャッキャウフフなライトノベルが山と積まれていた。
「これは地上への影響は計り知れないぞ!」
「そうか、今度アフロディーテ様が遊びに来るから、一旦ラノベは片付けたんだ」
「でも、読む物がなくて困っておられるぞ」
「今度はタナトス様から借りた本を読まれるみたいだ」
⸻
あれから、俺のモテ期は急速に去った。
間違いだった。気のせいだった。他に好きな人ができた。忘れて。勘違いだった。いけない遊びは、やはりいけない。やっぱり俺は男だった。
――などと言われて、フラれた。
不幸中の幸いとして、部活の仲間との絆は復活した。
「お前が急にモテるのは不自然だったよ」
などと言われる。
だが、しかし。
皆、今の状態を変だとは思わないのか。
あれから、俺の周りで急に殺人事件が起きたのだ。それも六回も。
銀行に行っても、図書館に行っても、郵便局に行ってもだ。
さらに、今まで特に冴えることのなかった俺の脳細胞が活性化しだした。
起こる事件をたちまち解決し、いつしか俺は名探偵と呼ばれるようになった。
だが、行く先々で、あまりにも殺人事件が起こることに違和感を覚える者はいないのか。
俺は怖い。
――と思っている間に、また悲鳴が聞こえた。
俺は、また事件を解決するのだろう。
ああ、もしこの異常事態がどちらも神の御都合なら、俺は前の方が都合が良かった。
完
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