第5話 魔法と魔力

今日は、月に一度の特別な魔法の勉強の日だ。


普段から座学やイメージトレーニングはしているが、今日だけは特別な理由がある。


俺の為に、忙しい中わざわざ家を訪れてくれる人がいるのだ。


摩耶に抱きかかえられ、応接室の扉をノックして「失礼します」と声をかけ、部屋に入った。


そこには、黒い蝶をデザインした着物を艶やかに着崩し、紅茶を楽しんでいる女性がいた。


俺の姿に気づいた彼女は、ティーカップを置き「こんにちは、葵ちゃん」と微笑んで挨拶をしてくれる。




「お久しぶりです、黒羽様」と俺も挨拶を返した。


彼女こそ、今日の俺の魔法の講師であり、日本の御三家の一つ、黒羽家の当主、黒羽 揚羽様だ。


黒い長い髪、巨大な胸元を大胆に開けた着崩しのスタイル、そして圧倒的な美しさ。


初めて会ったとき、彼女のあまりの色気に、どこかの花魁かと勘違いしたほどだった。


彼女はその色っぽい外見に加え、魔法においても並外れた才能と技術を持っていることから、尊敬されるだけでなく、恐れられる存在でもある。



黒羽様が俺に対して教えてくれるのは「魔力の本質的な流れ」や「自分の感覚をどこまで魔力と一体化させるか」といった、座学では学べない部分だと以前教えてくれた。


「葵ちゃん、魔力ってね、ただのエネルギーじゃなくて、命そのものと密接につながっているのよ」と言う彼女の声は、どこか慈愛に満ちていて、聞いているだけで魔法への理解が深まる気がする。




黒羽様は紅茶を一口飲むと、俺に向かって優雅に手を伸ばし、「さあ、今日も魔力の本質について教えてあげるわ」と微笑む。


彼女がどのように魔法を感じ、操っているのかを学ぶことは、俺にとって毎回新鮮な体験だ。




黒羽様は俺に魔法についてどう考えているか尋ねたので、俺は今までの知識をもとに答えた。




「魔法は『イメージ』によって魔力を操作し、現象を引き起こす技術です。魔法を使うには効果や形状を明確にイメージする必要があり、同じ火球でも使用者のイメージや技量によって形状や威力が異なることもあります。現代では、火や水、風といった一般的な魔法も、社会に広がる共有イメージのおかげで簡単に使えるようになっています。」




さらに、俺は「オリジナル魔法」と呼ばれるものにも触れた。




「オリジナル魔法は自分の独自のイメージで作り出されるため、独自性が強く、威力や特性も使用者次第で無限に広がります。魔法は魔力を自在に操る技術なので、魔力を操作できない者には使えず、魔法を使いこなすには、魔力をイメージ通りに正確に操作する力が必要です。」




俺の説明を聞いた黒羽様は、微笑みながら「それは半分正解で半分間違いね」と言った。


彼女の表情に驚きながらも、何が違うのか考えたが、思い当たることがなく、正直に「分かりません」と答えた。




黒羽様は微笑を浮かべ、「それでいいのよ、葵ちゃん」と優しく頭に手を置いた。そして、こう続けた。




「魔法っていうのはね、葵ちゃん。単なる道具じゃないのよ。イメージで現象を操作するというのも正しいけど、それだけじゃないの。」




「魔法はね、たった一つしかないのよ」と黒羽様は言った。




「え⁈一つしかない?」思わず口に出してしまった。




正直意味がわからなかったからだ。




「私たちが『魔法』と呼んでいるのは、実は魔法によって書き換えられた一つの現象なの。魔法というのは、魔力を特定の法則に従って変換し、事象を改変する技術そのものを指すの。火や水といった様々な魔法も、この『魔力変換法則』を使っているだけで、根本ではすべて同じ原理に基づいているのよ。」




黒羽様は続けて説明してくれた。


要約するとこうだ。


魔法


一般的には魔法は、魔力を消費する事で魔法を発動する事が出来るとされている。


発動には、魔力操作と明確なイメージが重要とされており、これが出来ないと魔法を使え無いとされている。


ゆえに、一般的に魔法を教える時は、魔力操作と明確なイメージを持つことを教える。


では、「魔法とは何か?」っと考えた者達は魔法についてより詳細に調べた。


結果、魔法はある法則に基づいて魔力を変換させ、事象を書き換えて起こる現象が魔法だと言う事がわかった。


つまり魔法とは、魔力を法則に基づいて魔力を書き換え事象現象を起こす事だと判明した。


これを魔力変換法則とした。


ゆえに、魔法とは魔力変換法則の簡略で魔法とされている。


よって、一般的には魔法とは魔力を消費して起こる現象が魔法と言われているが、魔法を極めようとする者からは、魔法とは魔力変換法則と認識されている。




彼女の言葉は、今までの魔法のイメージを一変させた。


ただの技術や力ではなく、その根底には一つの法則がある。


その法則を理解し、自在に使いこなせるようになればなるほど、俺の魔法は強くなり、幅広い可能性を持つことができるということだ。




その説明を聞いた俺はっふと疑問に思った。


魔力が何なのかと?


それを黒羽さまに聞いてみるとニコニコと嬉しそうに笑い「葵ちゃんは賢いはね。」っと言いながら説明してくれた。




「葵ちゃん、魔力の正体について知りたいのね。それはとても良い質問よ。実は、魔力というのは単なるエネルギーではなく、生命そのものと深く関わっているの。」




「生命そのもの……?」




「そうよ。魔力とは、生命が生きる過程で溢れ出てくる『残滓』なの。言わば、私たちの中にある生命力があふれ出して、出て来たのが魔力なの。だから、生命体はみな、ほんの僅かでも魔力を持っているわ。」




俺は驚きと同時に、これまでの魔力の概念が一変するような感覚を覚えた。


今まで魔力は単なる道具のようなものと捉えていたが、どうやらそれ以上の意味が込められているようだ。




「魔力が生命力の『残滓』だとすると、魔法は命一部を使って発動するということですか?」




「その通りよ、葵ちゃん」と彼女はうなずき、さらに話を続けた。




「魔法というのは、ただ魔力を消費するだけのものではないの。私たちはこの『残滓』を法則に従って変換し、イメージによって違う形に書き換えているのよ。」




そう言って黒羽様はより詳細に教えてくれた。


要約するとこうだ。




魔法とは


魔法は「魔力」を消費することで発動可能。


魔法を使うには、魔力を操作し、明確なイメージを持つことが必要不可欠。


このため、魔法の学習においては「魔力操作」と「イメージ力」が重視される。




魔法の本質


魔法は「魔力変換法則」に基づき、魔力を変換することで事象を書き換え、現象を引き起こす力とされている。


一般的には「魔力を消費して起こる現象」と理解されているが、魔法の奥義を極める者にとっては「魔力変換法則の技術」として捉えられている。




魔力とは


魔力は、ダンジョンの出現後に世界中に広がったとされるエネルギー。


一般には、魔法やスキルを発動するためのエネルギーと認識されている。




生命力の残滓


魔力の正体は「生命力の残滓」であり、生物が生きる過程で溢れ出たエネルギー。


例えるなら、コップから常に溢れ出す水が生命力で、その溢れ出た部分が「生命力の残滓」としての魔力に相当する。


動植物など生命は常に生命力に満ち、そこから漏れ出たエネルギーを魔力として活用している。




魔力変換法則


魔法の本質は、魔力変換法則に従い、生命力の残滓(魔力)をイメージの力で書き換えること。


この法則は、マイナス因子(生命力の残滓)をプラス因子(イメージ力)に書き換える操作により、現象を発現させる仕組み。




具体例(火の魔法)


火の魔法の場合、生命力の残滓である魔力(マイナス因子)を、火のイメージ(プラス因子)により書き換え、火として現出させる。


このように、魔法やスキルは「生命力の残滓をイメージの力で書き換えて行使する」現象である。




まとめると


魔法は、生命が放つ魔力(生命力の残滓)を「魔力変換法則」によって書き換え、現象を生み出す技術。


魔法を極めるには、魔力操作と強いイメージ力が不可欠であり、この「変換の法則」を理解することが鍵となる。


ゆえに、魔法は単なる力ではなく、世界の根源的なエネルギーを操作する技術といえる。




黒羽様は紅茶のカップを優雅に置き、俺の目をまっすぐ見つめて言った。




「葵ちゃん、魔法を深く理解するためには、単なる現象の操作に留まらず、命の一部を感じ取る感覚が必要なの。魔法の根底にある法則を見極め、それを感じ取ることで、魔法はただの技ではなく、自分の一部として使いこなせるようになるのよ。」




彼女の言葉には、計り知れない重みと知識が詰まっていた。


俺はその意味をすぐに理解できないかもしれないが、魔法の奥深さをもっと学びたいと思った。


だが同時に、この話を聞いていくつもの疑問が浮かんだ。




俺が疑問に感じている表情を見た黒羽様は「やっぱり、葵ちゃんは頭の回転もはやいのね。」っといってニコニコとほほ笑んでいた。




黒羽様は、俺の疑問を的確に見抜いたようで、再び優雅な微笑みを浮かべた。




「そう、葵ちゃん、あなたが疑問に思うのも無理はないわね。この世界で男性の多くが魔力に適応できなかったのは、魔力が突然の災害のように人々の前に現れたためよ。」




彼女はそこで少し言葉を切り、俺の目を見つめて続けた。




「でも、魔力そのものは、実は古くからずっと存在していたの。人々はそれを知らずに、ただ自然の一部として受け入れていたのよ。そして、生命力の残滓がダンジョンとともに溢れ出た現象を、『魔力』として新たに認識されただけなの。」




さらに彼女は説明を加えた。




「葵ちゃんも聞いたことがあるでしょう? 古代の陰陽師や占術師、聖女や魔女、仙人たち。彼らは皆、自分たちの力を陰陽の法力や妖力、オーラ、闘気、神聖力などと呼んでいたわ。これらは、すべて魔力の一種、つまり生命の残滓を活かした力なのよ。」




彼女の話によれば、こうした力を扱えた者たちは一部に限られていたが、その血筋や技術が受け継がれているのが御三家や分家、さらには他国の強者たちだという。


彼女の話に聞き入りながら、俺はある疑問がますます強くなっていった。




「でも、どうして男性の多くが魔力に適応できないんでしょうか?生命力の残滓がすべての生命体に共通しているのなら、男性も同じように適応できるはずですよね。」




黒羽様はその質問に応えるべく、少しだけ真剣な表情を見せた。




「それはね、葵ちゃん。詳しい話なら聖家の分野、医学的な話になるのだけど、魔力が急速に世の中に浸透し、その変化があまりにも急激だったからよ。もともと魔力に触れることの少なかった人類は、魔力に対して脆弱なままだったの。ダンジョンの出現で魔力が濃密になり、突然その影響を受けたことで、特に精巣に甚大な影響を受けたのよ。」




「つまり、魔力は少しずつ適応していくことができれば、男性も適応出来る可能性があった、ということですか?」




黒羽様はゆっくりと頷いた。




「そうよ。急激な変化があったことで、人類の身体が対応できなかっただけなの。もし、もっと自然に魔力が広がっていたら、今のような男性の不足という問題も生まれなかったかもしれないわね。」




っと言って黒羽様は少し寂しそうな顔をした。




「ならなぜ、女性は適応出来て男性は適応出来なかったのでしょうか?」




俺は黒羽様に聞いてみた。


黒羽様はっふと笑うと「仮説でもいいなら」っと言って話してくれた。




「男性が適応できなかったのではなく、むしろ『適応した結果』だと考えているわ。ダンジョンが出現し、世界中に魔力が溢れたことで、過剰に生命力の残滓を浴びた精子が死滅し、残った精子はより強靭に進化するための選択が行われたのよ。これにより、精子の数は激減したけれど、その分、一つひとつの個体が強化され、今や少ない数で確実に妊娠を促せるほどになっているの。」




彼女の表情には一抹の寂しさが漂い、少し間を置いて続けた。




「昔の男性は、何万といる精子で生殖を試みていたけれど、その一つひとつは脆弱で、出産に結びつく確率も低かったのよ。でも今は、適応の結果、数ではなく質で勝負する形になってしまったというわけね。そのために、精力自体も減少してしまったと考えられているの。」




俺はその説明に頷きつつも、もう一つの疑問が湧いた。




「じゃあ、どうして女性は適応して、今のように女性を産む率が高くなっているんでしょうか?もし種の存続が目的なら、男性側も同様に変化するはずでは……」




黒羽様は小さく笑みを浮かべ、再び語り始めた。




「その理由は、おそらくその『種の存続』よ。女性は、種を存続させるために子供を産み育てることが重要で、『より多くの子供を産むための必要性』を選んだのだと思われるわ。子を産み育てることができるのは女性だけであり、そのため女性の出産率があがったのではと考えているは。女性の適応がしたと言われるのも、それが理由かもしれないわね。」




「って事は、男性はより強い精子を作る為、精子の減少がおこり、作る為に時間がかかるから精力の減衰がおき、女性は種を残す為に女性の出産率が上がったということですか。」




俺はこの仮説を聞いてある意味納得し、この世界の歪さも理解し納得できた。


マンガやアニメ等物語の話なら、たられば的な話ですむが、この世界は現実だ。


男性にとって魔力が毒なら、こうして魔法を学んだり使用してる時点で男性にとっては良くないはずだ。


しかし、俺が魔法を使う事を咎める事も止める事もしない。


むしろもっと使い強くなれと言わんばかりに酷使してくる。


これが人類が適応した結果と言われれば、なるほどと、現状が理解できるわけだ。




「葵ちゃん、この話はあくまでも仮説であって根拠も何も無いは。この話は推測と憶測であって医学的根拠も何も無いの。」




俺が満足そうな顔をしていたのか、黒羽様はそんな事を話、苦笑いを浮かべていた。


おそらく、この話を誰かにした時に同じことを言われたんじゃないだろうか。


話の途中で寂しそうに、申し訳なさそうに話していたのは多分、医学的根拠が無いせいで、理解されず受け入れられて貰えなかったんじゃないだろうか?




ただ俺は、これが正解で答えじゃないだろうかと思う。




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