翳りと光の間

凪窪空

第1話

私は人のために何かをすることが生きがいだった。

家族には心配をかけないことを第一に考え、会社では1番ではなく中の上のポジション。誰の意見や質問にも会社の考えを踏まえつつ、自分の意見を少し入れて答えていた。後押しをすることに徹し、それが自己満足にも繋がると思っていた。


街中を歩くときも、周りの表情をよく見ていた。その解釈が合っているか考えることで、自分が相手から求められていることの正確性を上げられると思ったからだ。実際、それはうまくいっていた。昔から人の目を伺う性格だったこともあり、苦ではなかった。私はより、人が求める答えを出せる自分になっていった。


そんなある朝、喉に詰まりのような違和感を感じた。それ以外はいたって健康。病院に行き診察を受けたが、特に異常は見つからなかった。

「とりあえず様子を見ましょう。」

医師の判断に、私はいつものように笑顔で賛同した。


仕事はこれまで通りこなしていた。しかし、何かが違った。上司や同僚の意見や質問、たわいない話にも変わらず答えていたが、心の奥で怒りにも似た嫌気が少しずつ湧き上がるのを感じた。自分でも理由はわからなかった。役に立っているし、自己満足もあった。それなのに怒りは膨らみ、夜一人になる頃には困惑と悲しさに変わった。自分にも嫌気がさした。


「鬱かもしれませんね。」

医師の言葉で思考が止まった。今までやりたいことをやってきたはずなのに、なぜこうなるのか。悩みがあったか? 苦しかったか? 違和感しかなかった。

「一度仕事も休んだ方がいいかもしれませんね。」

そのときの医師の顔も覚えていない。


家に帰り考えた。私は本当に好きなことをしてきたのか。仕事は好きだったのかもしれないが、心の奥底まではわからない。なら、私の好きなことは何だろう。


ふと空を見上げた。雲一つない、飛行機も鳥も飛んでいない、何もない綺麗な空だった。

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翳りと光の間 凪窪空 @nagikubo

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