会議の行く末

 「そして、新たな平和を手に入れるのです」


 最後、ソフィアは堂々と言った。

 それにアネットは「なるほど」と頷くと、地図にあった視線を彼女に向けた。


 「ちなみに、その大規模魔法陣とはどのようなものなの?」

 

 ソフィアは静かにうなずいてから応える。


 「つくりは極めて単純です。奪還した砦にそれぞれ特殊な魔法石を置くだけ。ただその後、発動する魔法には高度な技術が必要となります——」


 そこで一呼吸おいてから、ソフィアは続けた。

 

 「が、私であればそれは可能かと」

 「それは、必ずできるということ?」

 

 アネットの鋭い視線がソフィアを刺す。それでもソフィアは、気丈なままに「はい」と頷いた。


 「そう。わかったわ」


 アネットは静かに言うと、柔らかく指を絡めた——。そして少し考えた後に、口を開く。


 「私の所感では、ソフィアのものが良い策に思えるのだけれど。何か意見のある者はいる?」

 

 彼女の問いに、一つ手が挙がった。


 「セドリック、どうぞ」


 促されてセドリックは、もたれた背を起こすと、ソフィアを真っすぐ見つめた。


 「砦を奪い返すと言ったが‥‥。簡単にできると思ってるのか?」

 「簡単ではないだろうな」


 セドリックの眼力が増す。


 「それどころじゃない。ほぼ不可能だ」


 ソフィアはその言葉にただ黙った。ただ視線はセドリックの瞳へと向く。


 「いいか。今の全勢力をぶつけても一個取り返せるかどうかだ。それが、五個すべてとなれば——そんなの、できるはずがない」

 「来るのかもわからない応援を待って、土に帰すよりましだろう」

 「そっちの方がまだ希望がある。この作戦には全くない」

 「その言葉、そのまま返そう」


 苛烈な睨み合い。目の当たりにするエレオノールは固唾をのむ——。


 「パチン」


 張り詰めた糸を緩めるように、手の打った音が広間に響いた。


 「お二人の考え。よくわかりました」


 そう言ったのは、アネットだった。


 「あとは父に任せましょう」

 

 その言葉に、セドリックは表情を曇らせ俯いた。一方、ソフィアは地図上の砦を一つ一つゆっくりと、目で追った。


 「良い時間ですので、これにて会議は終わりとします」


 そうして、アネットは口のみ笑って、「お疲れ様」と言い残すとヒューゴと共に部屋を後にした。

 それに続いて、セドリックも立ち上がり、踵を返す。


 「まだ仲間の死が怖いか」

 「俺が死にたくねえだけだよ」


 振り返りもせずそう言うと、セドリックはゆらゆらといつもの足取りで部屋を後にした。

 パタンと扉は乾いた音を立てて閉じた。


 「セドリックさん‥‥」

 「気にするな。ああい奴だ。あいつは」


 心配そうにその背を見るエレオノールにソフィアはそう言いつつ、目は未だ地図の砦を見ていた。


 「その、もし仮に作戦が通った場合は——成功‥‥、するんですか?」

 「させる」

 

 力強く、ソフィアは応える。


 「一人でも救うために‥‥。皆に笑っていて欲しいんだろ?」


 そして、彼女はエレオノールへと微笑みを向けた。

 「はいっ」とエレオノールも髪を大きく揺らして頷いた。

 


 

 

 

 


 


 

 

 

 

 


 

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今日も彼は誰かを救っている わたしだ @I_am_me

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