第5話
私は宇宙を進みながら、同時にパソコンの前に座って小説の本文を書き進めていた。
中国横断自動車道を走る車がヒイゴ池に差し掛かった時、僕は生まれた。
母は助手席に乗っており、ヒイゴ池湿地を横目で流し見ながら父に尋ねた。
「ヨースケは何処にいるだろうか」
「そうだなあ」
父さんは運転席でじっと前を見つめながら答えた。
「金持ちの家に生まれたよ」
「金持ちの家に生まれた」
言葉が結合し、集合する。母さんは父さんの言葉を繰り返して言うと、また尋ねた。
「それってどこ?」
「どこだろう」
父さんの気の無い返事がして、車内は静まりかえってしまった。会話は結実した。後部座席のチャイルドシートの上で、二人の姉さんが眠る中、車は淀みなく進む。
母さんが小説本文を書き起こすたび僕は自ら熱を生み出し、恒星のように光り輝く。
その光を目指して、私が宇宙を泳ぐ。見つけた。私の姿が星の向こうにポツリと見え始める。僕は両腕を広げて、彼女をこちらに招いた。私が腕で空を掻き前へ前へと進む。
私と僕はもう目の前に存在している。人差し指が絡まり合い、僕と私は接触する。
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