【短編】クリームシチュー女はめんどうです

渋紙のこ

クリームシチュー女はめんどうです

「得意料理はなに?」

「ローストビーフです」

 でたらめに答える。誰も私の答えに本気で反応なんてしない。

 家でひとり、何を食べているなんて誰も興味ないんだから。

 実は、告白すると、私は、クリームシチューが好き。

 その中でも、ブロッコリーが好き。

 あぁ、ほら、真実を告白しても、そんなに興味ないんでしょ。

 今日は仕事が休みだから、昨日の夜は、ホットアイマスクして、少し脳をリラックスして、夜には、クリームシチューの具を書き出して、そのメモを財布に入れた。

 よくやるのは、買い物リストを書き出して、そのまんま机に置いてきて、もう一回、お店で思い出そうとしても、余計なものばかりかごに入れて、肝心なブロッコリー忘れてしまったり、ルーを買い忘れたりする。

 でたらめに得意料理は、ローストビーフって答えたのも、あながち的外れではない。

 きっと化粧もしないで、目の下のしみも気にしないひとが、ローストビーフサンドと紫玉ねぎが好きと言ったら、ちょっと違うかなと思ったりしない?

 ローストビーフも好きだし、紫玉ねぎも嫌いなわけじゃない。

 おしゃれな食べものは、映えのために食べてるひととは違う。私、普通にそのローストビーフが好き。紫玉ねぎも好きだから、食べたいと思ってる。

 でも、冬は、クリームシチューが食べたい。

 というより、今日は、クリームシチューの気分ってだけの話。

 買い物かごに、家に玉ねぎはあるから、にんじん、じゃがいも、ブロッコリー(忘れないで)、鶏肉、白菜(入れるとおいしい)、しいたけ、お気に入りのルーを入れて、メモをもう一回見る。

 あっ、牛乳も買わなくちゃ。

 大体、何かを作ろうと思ったら、ルーの後ろを見れば、必要な具材は、大抵書いてある。

 親切よね。私の他にも、クリームシチューの具材を忘れたひとが過去にいたのかしら。それとも、企業の親切心ってこと?

 しかし、クリームシチューって作る工程は、そんなに難しくない。

 誰にでもできる料理だと思うんだけど、書いてある通りに作ればいいんだから。

 好きなルーにすれば、一発で味は決まるし。こしょうぐらい足すぐらい。

 で、気づいちゃったの。

 クリームシチューって作るのがめんどうなんじゃなくて。

 具材をそろえるのがめんどうなんだと思って。

 同情しちゃったよ、クリームシチューに。

 冬は、シチューでしょ。カレーの方が簡単?

 カレーは、ドライカレーとかあって、簡単な方法は見つけられるし、おでんにだって、カレールーを入れれば、カレーになるけど、そう言えば、ドライクリームシチューもないし。

 さらに言えば、クリームシチューには、ごはんか、パンか論争もある。

 なんかクリームシチューってなにかとめんどうね。

 結構、冬と言えば、クリームシチューだけど、めんどうくさい存在かも。

 ビーフシチューは、作るのは、簡単。煮込むのに、時間がかかるぐらい。

 さて、そろそろクリームシチューを作りますか。

 にんじんは、とんとんとん。

 たまねぎは、ざくざく。

 ブロッコリーはさっさっさっさ、チン!

 じゃがいもは、しゅっしゅしゅ、とんとんとん。

 白菜は、ざ、ざ、ざ、ざ。

 鶏肉は、ぶつぶつぶつ。

 しいたけは、とんとん、とんとん。

 準備ができたら、鶏肉から少量の油で、炒める。にんじん、たまねぎ、しいたけ、じゃがいもに油をまわす。水をいれて、煮込む。上の方に白菜は入れておく。

 煮込まれたら、火を止めて、ルーを入れて、煮込む。

 あとは、牛乳、レンチンしたブロッコリーをいれて完成。

 私は、簡単だから、パンといただく。

 私は、作りながら思っていた。

 クリームシチューって家以外で、食べるところあるかな?

 外食で、クリームシチューって選ばないかもしれない。

 クリームシチューって、家庭の味ってことなんだろうか。

 でも、大抵の家庭は、全国均一のルーの味だよな。

 これをまずく作れという方が無理な話の気がする。

 でも、家でクリームシチューを作る女って結構めんどくさい女じゃないか?

 どうぞ食べてって、頑張って作ったのよっていう思いも煮込まれて、なんか得意料理は、ローストビーフって女のひとの方が、なんか外向きっていうか。

 でも、私は、ひとり、食べるよ。

 大好きなクリームシチューを、誰のためでもなく、自分のために作るよ。

 さぁ、こんだけクリームシチューの話を聞かされたら、今日は、クリームシチューですか?

 さぁ、自分で作って、召し上がれ。


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【短編】クリームシチュー女はめんどうです 渋紙のこ @honmo-noko

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