【短編】ネギを持って帰るのはめんどうです

渋紙のこ

「ネギを持って帰るのはめんどうです」

きっとわかってる。もう戻れないことも。いなくなってしまったひとが、もう2度とこの世に戻ってこないことも。わかってるってやつよ。わかってるけど。てんてんてん。

楽しく生きたい、心から。っていうひとの今は、きっとつらいんだろうなと。今が楽しいひとはそんなことを考えもしない。てんてんてん。

家族だけを大事にするひとたち。その小さなサークルの中で、鈍感にならないと。楽しそうに見えても、私の繊細さではすぐはみだしてしまう。そんな少し近くのひとは、介護に、孤独。てんてんてん。

自分たちだけ良ければ、てんてんてん。

幸せの中で、うまく笑えなくてひきつる笑顔。てんてんてん。

だからね、わたしは、決めた。ネギになる。何を突然?と思ったら、続きを読んで。

わたしは、自分の家族が一番だと言うひとを信じない。

だって、家族に順位なんかないんだから。

家族のための食事を作るために、ネギを買う。ああ、なんて持って帰るのがめんどうな食べものなの、ネギよ。

こうやって「ネギはすぐ悪口を言われる」。

あぁ、なんでこんなにめんどうなの?

だけど、どう?ネギって案外腐りにくいでしょ?

ネギを腐らせるなんてよっぽどよ。だって土がついたネギなんかほっておいても、大丈夫。

泥にまみれたネギ。わたしも泥だらけ。似てるじゃない?

ネギはなぜ持って帰るのがめんどうなのか人生の中で考えてみたことある?

青い部分も捨てないで。おいしく食べられるから。

ネギ専用のエコバックがあれば、ネギ持ち帰り問題は解決する?フランスパン専用のバックがあると聞いたことがあるようなないような。

わたしの問題は、ネギ問題ととても似てる。わたしを握りつぶしたら、きっと悪臭がする。ネギが嫌いなひともいると思う。

風邪にきく。役立つこともある。でも、持って帰るときは嫌われる。

熱を冷ます。焼くと甘くなる。鍋に入れればとろけてしまう。

「うん、うん」とその場で愚痴を聞いて、あとから、他の人に「あの人は、愚痴を言いすぎる」とわたしが言うのは、悪口になるのか。

じゃ、わたしが誰かの愚痴を聞いて、中身が腐りそうになったら、こころをどうしてあげるのがいい?

悪口とは、ネギじゃないか。

そうだ、ネギはいっつも心の中で毒づかれている。あぁ、めんどくさいって。

だけど、家に帰れば、調理されれば、細かくみじん切りにして、蕎麦に入れば、とてもおいしくいただける。ネギが好きなひともいる。好みはひとそれぞれ。

悪口にはユーモアを。

誰かとの会話で嫌な気持ちになる。だけど、そのあと、自分で調理できたら、あぁ、ネギみたいだな。ああ、すっとした。ネギのさわやかな匂い。好きなものは好き。嫌いなときがあっても。

この気持ち、ネギを持って帰るときのあの気持ち。

でも、人生そこでは終わらない。

「何度も同じ話している」

本人に言い返せば、話し合い。他人に話せば、悪口に。

ネギは持って帰るときに、悪者に。料理されれば、おいしく口にできる。

あなたは、蕎麦を食べるために、ネギを買ってこなければなりません。

「ネギを買って帰るのがめんどうです」

あなたは、友達を大切にするために友達から悪口を聞かなければなりません。

あなたは、相手を無視しないために愚痴も聞かなければなりません。

だけど、そこですべては終わりません。

悪口や愚痴には、調理の方法が必要です。技術を必要とするのは、ネギを調理することと同じこと。だから私は自分の感情をそのまま家に持ち帰らない。できるだけ。

まず嫌な思いをしたら、水を飲みましょう。お風呂に入って、煮込まれてしまいましょう。

ネギのようにやわらかく溶けてしまいましょう。

気持ちはやわらぎましたか?

ネギを持って帰るときの気持ちは、消えましたか?

細く長いネギと悪口が一緒に語られることに疑問を持ちながらも読んでいただきありがとう。

まぁ、大抵の哲学は、こうしてはっきりしない問題を考え続けているわけです。

ひどい言葉、うんざりする金の計算、ネギをいくらで買うか。

愚痴をいくらで買うか。

めんどうで、くさくても、最後までわかりません。

もしネギがこの世からなくなったら、わたしはとても悲しくてやりきれない。

家になくても、世の中にネギがあってありがとう。

ときどきめんどうくさいネギよ、ありがとう。

ネギの存在自体が、わたしを幸せにするじゃない?

ストレスが溜まったら、ネギをみじん切りにして食べてやりましょう。疲労回復効果がネギにはあるそうです。

家に持ち帰るのは、おいしく食べられるものでありますように。てんてんてん。

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